日本語にはまぎらわしい言葉がたくさんあります。スマホやPCで変換することが当たり前になった今、とくに厄介なのが同音異義語。今回は、「改訂」と「改定」のそれぞれの意味について解説していきます。
改訂の意味の覚え方
改訂とは、文章をなおすことです。
改定とは、きまりごとを新しくすることです。
これでおしまい、としたら多分すぐに忘れてしまうでしょう。英単語でも同じですが、言葉をきちんと覚えるには、その成り立ちをおさえることがとても大切です。
二つの単語の違いは「訂」と「定」という漢字ですね。どちらも古代中国で生まれた言葉です。まずは「訂」の誕生物語をお話ししましょう。
まだ紙が発明されていなかったころ、中国では公式文書に竹が使われていました。短冊形に切った竹に文字を書いて、紐でくくって束ねたものが、一冊の本だったのです。これを「竹簡」と言います。一本の竹の長さは25センチくらい、幅は3センチくらいでした。
人間のやることですから、当然、書いていて間違えることがあります。でも、竹なら紙と違って厚みがありますから、表面を削って文字を消すことができました。修正すると、丸みを帯びた竹は少し平らになります。
改訂とは「改めて正すこと」
「訂」という漢字は、言と丁というパーツからできています。言は言葉に関わることを意味しています。丁はクギを上から見たかたちで、「平たい」という意味を持ちます。「訂」は、竹簡の一部を平らにすることをあらわしているのです。それはつまり、「言葉や文字の誤りを正す」ことでした。
よって「改訂」とは、書物や資料などの内容に手を加えて、改めなおすことを意味するのです。今では国語辞典や報告書や接客マニュアルのWordファイルなどに「改訂」という言葉を用います。
改定の意味の覚え方
続いて、「定」の成り立ちを見ていきましょう。こちらは漢字のかたちに注目です。
「定」の上には「宀」がありますね。「宀」は屋根ですから、なにかが家の中に収まっている状態です。
下のパーツはというと、これは「人間の足」のかたちが記号化したものです。足は歩くもの、進むもの。進路に悩んでうろうろし、あるいは敵国を攻め落とすために動くものです。その足が、今はもう家の中に落ち着いている。
なぜかと言えば、就職でなく進学を決めたり、戦いに勝利したりするなどして「ものごとが決まった」からです。もう事態は落ち着いたのです。「定」という漢字が意味するのはこの状態でした。
改定とは「改めて新しく定めること」
「ものごとが決まった」ことが「定」なら、「改定」とは、もう一度ものごとを決めることです。法律や制度や契約ごと、たとえば給与制度や時刻表やカップラーメンの値段などに「改定」という言葉が用いられています。
改訂と改定の使い方を紹介
改訂と改定の文字の成り立ちから違いを解説しました。それでも難しい! と思う方のために、具体的な例文を用意しました。
【例文】
「こちらが改訂版のプレゼン資料になります」
元々ある資料の、文字や内容を正しくしたという意味で改訂を利用しています。
【例文】
「働き方改革に合わせて、会社の就業規則も改定しないとなぁ」
就業規則の内容に、新しい項目を定めたという意味で改定を利用しています。
これを機会に、さらにいろいろな用例を見て理解を深めてください。