東京ビッグサイトで4月3日~4月5日に開催中の「コンテンツ東京 2019」。ライセンシングジャパンやクリエイターEXPO、コンテンツ マーケティング EXPO、映像・CG制作展、先端デジタルテクノロジー展など、さまざまなジャンルのサービス展示、商談が行われている。
なかでも注目したいのが、バーチャルYouTuber(VTuber)のサービスが展示されている「VTuberゾーン」だ。今回から映像・CG制作展に新設されたエリアである。
ロート製薬がVTuber社員を雇ったり、サントリーが公式のVTuberを採用したり、日清食品がVTuber・輝夜月のCMを制作したりと、企業でのVTuber活用が目立ち始めた昨今。「自社でもプロモーションにVTuberを活用したい」と考えている人も多いのではないだろうか。
だが、VTuber関連のマーケットは2018年に急成長したばかり。運用のノウハウがある企業はまだ少ないだろう。そもそも「何をすべきかわからない」と頭を抱える担当者もいるはずだ。
そこで、本稿では、「VTuberゾーン」で展示されていたサービスをいくつか紹介する。VTuberビジネスを進めるうえでの参考にしてほしい。
指の動きから表情まで、すべてをとらえるキャプチャシステム
スパイスのブースでは、なんとVTuberのライブ配信の裏側を実演。モーションキャプチャを装着した2名の女性の動きと声がリアルタイムにVTuberとリンクし、ライブ映像としてディスプレイに表示されていた。いわば、“中の人”が普段どんなことをやっているのか公開していたわけだ。
同社オリジナルのVTuberシステムでは、一般的なモーションセンサーに加えて、専用のグローブを装着することで細かい指の動きまでバーチャル上で表現できるだけでなく、オリジナルのヘッドマウントカメラで表情を認識し、そのままキャラクターに反映させることができる。キャラの表情を別の担当が操作することが一般的ななかで、すべての動作をまとめて収録できるのは珍しいのではないだろうか。
また、オリジナルのVTuber制作サポートも行っており、キャラクターデザインから3DCG化、セットアップ、収録、編集まで、企画以外のVTuber制作に関する業務をすべて社内で完結できるそうだ。さらに、機材販売や技術サポートもできるので、これらのシステムを導入して自社スタジオで収録環境を整えたいと考えている企業や、キャラクターは持っているが3DCG化できていないという企業まで、幅広く対応する。
バーチャルメイドアイドルが企業のお仕事をお手伝い
3DCGモデリングなどを手がけるクリープのブースで紹介されていたのは、VTuber制作サービスの「iVTM」だ。
同サービスは、キャラクターのデザインから3DCG化、撮影、音声収録、配信、運用と、VTuber映像制作のすべての工程を手がけるというもの。制作はどの段階からでも依頼できるので、すでに自社で保有しているキャラクターがいる場合は、3DCG化から依頼することも可能だ。
ブースでは実績として、パチンコパチスロ情報メディア『ぱちガブッ!』のバーチャルライター・上乗恋の動画を放送。また、同社が独自にプロデュースしたVTuber羽原ゆとり(ゆとりん)のパネルが置かれていた。クリープの所在地が秋葉原ということもあり、「バーチャルメイドアイドル」というテイストにしたらしい。
同社では「iVTM」を使ったVTuber動画制作だけでなく、ゆとりんを起用した企業コラボレーションやイベントリポーターなどの仕事も請け負う。
ゲーム部プロジェクトではさまざまなタイアップが可能
Unlimitedは、自社で手がけるVTuberユニット「ゲーム部プロジェクト」や「道明寺ここあ」、「あおぎり高校ゲーム部」といった、同社IPとのタイアップ企画を提案。それ以外にも、VTuberのプロデュースや2D/3Dアニメーション制作も請け負うという。
ゲーム部プロジェクトは、夢咲楓、風見涼、桜樹みりあ、道明寺晴翔という4人のVTuberによるユニット。チャンネル登録者数は35万人で、ゲーム実況動画や日常を描いた動画を中心に配信している。
道明寺ここあは「ここあMusic」というチャンネルで、「歌ってみた動画」を中心に活動をしているVTuberだ。この道明寺ここあ。筆者個人的にはバーチャル界イチ歌がうまいと思うVTuberである。ヒメヒナも捨てがたいし、富士葵も歌がうまい。YuNiの歌声もステキだと思う。もちろん燦鳥ノムも大好きだ。それでも、NHKで放送された『バーチャルのど自慢』での歌を聴いたときの衝撃は忘れられない。
VTuberのモーションはプロにお任せ
ソリッド・キューブのブースでは、モーションアクターの事業を紹介していた。VTuberで大事な要素のなかには「動き」があり、モーションキャプチャーを装着して動きをつけるのが一般的だが、「誰がやっても同じ」というわけではないらしい。キャラクターの個性を最大限引き出すための表現をする必要があるのだ。
同社は、訓練を積んだ“動きのプロ”が在籍しており、モーションアクターの派遣、育成、振り付けなどを行っている。音響制作やCG制作といった関連業務のコーディネートも行っているそうだ。
実績には『初音ミク VR』や『ウマ娘プリティダービー』、『アイドルマスター』シリーズ、『アイドリッシュセブン』などがある。VTuberだけでなく、3DCG化が進むアニメやゲームのニーズもあるのだろう。また、声優事業も行っており、VTuberであれば、声も動きもどちらも担当できる。
複数のVTuberを組み合わせてシナジー効果を生む
キズナアイで有名なバーチャルタレント支援プロジェクト「upd8(アップデート)」は、企業向けのインフルエンサーマーケティングを提案。タイアップ動画の企画やイベント出演など、親和性の高いターゲットにリーチできるプロモーションを手がける。
最近では、チーズおかきやソフトバンクのiPhone発売イベントなど、さまざまなジャンルで活躍しているキズナアイだが、やはり出演料にはそこそこの金額が必要らしい。
そこで、upd8では、プロジェクトに参加しているバーチャルタレントを複数人コラボレーションさせる「PUGCモデル」を推奨。各VTuberのファンを巻き込み、比較的コストを抑えつつも多くの潜在顧客にリーチできるという。
eスポーツとインバウンドをカバーする2人のVTuber
XRエンターテインメントは、中京テレビアナウンス部所属の大蔦エルと、あいち観光バーチャルサポーターのキミノミヤ、ココンという2タイプのVTuberを紹介。大蔦エルはゲーム実況やeスポーツを中心に活動しているVTuberで、中京テレビの番組「ササシマ BASE Lab.」のゲームコーナーにレギュラー出演している。キミノミヤはバイリンガルVTuberとして、アニメを中心とした日本文化を発信。ココンはキミノミヤのパートナーの狐のようなキャラクターだ。
eスポーツとインバウンドという2領域をVTuberでカバーしている同社。訪日外国人向けの動画を制作できたり、eスポーツイベントの司会ができたりと、今後ますます盛り上がるだろうジャンルなだけに、引き合いは多そうだ。
位置を推測して、少ないセンサーでモーショントラッキング
Moguraのブースで紹介されていたのは、「IKinema Orion」というモーションキャプチャシステム。「HTC Vive」と呼ばれるVR用のヘッドマウントディスプレイを用いて、動きのセンシングを行うというものだ。
VTuberの動きを作るには、モーションセンサー付きの全身スーツのようなものを着用するのが一般的だが、同システムでは、頭と足のセンサーと、両手に持つ専用のコントローラーから、体勢をリアルタイムに推測する。そのため、比較的低コストで、全身のトラッキングを行えるようになるという。
2DVTuberをスピーディかつ低コストで運営
VtuberプロダクションのZIGは、自社のVTuber運営のノウハウを生かした、企業のVTuberマーケティングをサポート。同社では2Dモデルの制作を行うため、3Dと比較してコスト1/10程度に抑えられるという。
また、半年で50体のVTuber開発を行った実績があることからも、スピーディに制作を進めることが可能。クライアント企業の環境分析やターゲット分析を行ったうえでVTuberコンテンツを届けていく。
なお、ブースでは紹介されていなかったが、同社は4月3日にVTuberに会えるファンコミュニティサービス「MeChu」をローンチした。
これは、特定のVTuberを応援したいというファンと、活動資金を手に入れたいVTuberをつなげるというサービスで、支援金が5万1円以上になると、ファンとVTuberが1対1でコミュニケーションを行える「密会」の抽選が行われるなどの特典があるという。
ローンチ時点では、ZIGに所属しているVTuberのみが登録されているが、徐々にメンバーを増やしていく予定。個人でVTuberを始めたいと考えている人の収益源としても使えるそうだ。
低コストで動画制作できる「VTuberリース」
VTuber歌劇ユニット「麻布台歌劇団」をプロデュースするSHOWBEEZでは、VTuberのリースサービスを紹介。キャラクターデザインやモデリングにかかる初期費用などが必要なく、同サービスの利用に必要なのはランニングコストのみ。キャスティング料などがないので、低コストで動画制作を依頼できる点がメリットだろう。
VTuber×コスプレで、バーチャルとリアルの体験をプロデュース
キャラクターデザインや映像の制作を手がけるPXRと、コスプレを応援するアプリ「COSPO」を提供するKAWAII JAPANの合同ブースでは、数人のコスプレイヤーが呼び込みを行っており、両社が進めているプロジェクトを紹介していた。
同プロジェクトでは、「コスプレしやすい」というコンセプトでKAWAII JAPANの新規キャラクターIPをPXRが制作。基本的に“中の人”が出てこないVTuberだが、コスプレを通じてリアルなイベントにも出ていけるような取り組みをしていくという。
3Dモデルからデフォルメ2Dモデルまで動かせる
バーチャルキャラクターの企画・設定から、デザイン、2D/3Dのモデリング、動画の作成、ライブ配信、運用サポートまでワンストップで提供するビークエストのブースでは、AIを活用した競輪予想サイト「AIcast(アイキャスト)」の広報担当である蒼月アイリーンとコミュニケーションを図れるデモが実施されていた。
また、ブースにはアイキャストのもう1人の広報担当である如月サライを使った表情キャプチャ体験も行われていた。内容はカメラに映った来場者の顔から表情を認識し、瞬きや口の動きをトレースするというもの。デフォルメされたパターンのキャラクターでもしっかりVTuberとして動かすことができるようだ。
手軽な機材でスタジオ外でもVTuberイベントができる
ライブカートゥーンでは、キャラクターデザインの制作からVTuber事業をサポート。特に、「KiLA」と呼ばれる持ち運びを前提にした機材を使用しているので、スタジオ内での収録だけでなく、イベントなどでもVTuberのシステム設置が容易だという。
ちなみに、同社の事例として紹介されていたVTuberの虹河ラキは、山佐スロワールド/スロプラス+サポーターでもある。リアルのパチスロ実践動画も投稿しているので、興味のある人はチェックしてみてほしい。ただ、山佐の機種であれば、個人的には神台と名高い「鉄拳2nd」の最強上乗せゾーン「デビルラッシュ」の破壊力を虹河ラキに体験してもらいたいところだ。
(安川幸利)