取引先への謝罪のメールに「厚くお詫び申し上げます」と書いたら、それを見た上司に怒られた……なぜ? というわけで、今回は「お詫び申し上げます」の正しい使い方について解説します。

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■「お詫び申し上げます」の誤用

時折、謝罪の場面で「厚くお詫び申し上げます」という表現を目にすることがありますが、それは誤りです。正しくは、「深くお詫び申し上げます」になります。なぜ、間違ってしまうのでしょうか。

感謝の気持ちを強調するフレーズに「厚く御礼申し上げます」という表現がありますが、おそらく、「深くお詫び申し上げます」と「厚く御礼申し上げます」を混同して、誤った表現になってしまうのでしょう。

■お詫びは深く、お礼は厚く

「お詫びは深く、お礼は厚く」が正しい組み合わせになるわけですが、そうは分かっていても、いざという時に「あれ、どっちだったっけ?」と、ふと迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな時のために、謝罪の動作と結びつけて覚えておくと良いかもしれません。

みなさんは、謝罪をする時にどんな動作をするでしょうか。頭を下げますよね。不祥事による謝罪会見では、企業や行政の代表が「申し訳ありませんでした」と言いながら、しばらくの間頭を下げるのが通例となっています。

また、「お詫び」や「謝罪」の類似語の一つにも、「頭を下げる」とあります。「頭を下げる」という動作に相応しいのは、「厚く」ではなく「深く」ですね。

もちろん、感謝の気持ちを表す場合にも頭を下げることはあるのですが、ビジネスで頭を深く下げるシーンと言えば、やはり「謝罪」ではないでしょうか。ちなみに、最大限に頭を深く下げた謝り方が「土下座」になるわけです。

このように、動作と結びつけて覚えておくと、使い方をうっかり間違えるようなこともないでしょう。

■例文

・ご心配おかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
・弊社の不手際でご迷惑おかけしたことを深くお詫び申し上げます。
・今回の不祥事につきまして、深くお詫び申し上げます。

■「心から」「心より」に言い換える

「深く」という言葉を別の言い方に変えるとすれば、「心から」「心より」になりますが、実はこれは「厚く」の言い換えにもなるのです。

例文
・ご不便をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
・みなさまのご支援ご高配に、心よりお礼申し上げます。

「心から」はおもに口語で、「心より」は文語で用いられるのが一般的です。お詫びにもお礼にも使うことができる便利な言葉として、ぜひ覚えておきましょう。


どんな人でも、絶対にミスは犯さない、失敗はしないという保証はありません。大事なことは、起きてしまったことについてどう対処するかです。その初動となる謝罪からつまずくことのないよう、正しい言葉で誠意ある謝罪を心がけましょう。