Appleは日本時間3月19日夜、iMacを刷新した。iMacは2018年に刷新されなかっただけに、待望のアップデートとなる。iPad miniやiPad Airに続く2夜連続の製品発表は、こちらもウェブ上での刷新となった。
新型iMacのラインアップは、これまでと大きな変更はない。サイズは21.5インチと27インチの2モデル。21.5インチモデルは、4096×2304ピクセルの4K解像度と、1920×1080ピクセルのフルHD解像度の2種類を用意。27インチは5120×2880ピクセルの5Kモデルを用意する。
従来モデルと同様に、4Kと5Kモデルは高色域(P3)に対応する美しいディスプレイを実現搭載している。特に、選択肢がまだまだ少ない5Kディスプレイ搭載PCの中で、27インチモデルの税別198,800円という価格は魅力的だ。
プロセッサとグラフィックスを強化
新しいiMacの強化のポイントは、インテル製CPUが第8世代もしくは第9世代のIntel Coreプロセッサに置き換えられて高速化を図ったことだ。ミドルクラスのモデルからクアッドコアが選択できるだけでなく、6コア、さらには8コアのIntel Core i9も選択できるようになった。3.0GHzの6コアIntel Core i5を搭載した21.5インチモデルのiMacは、税別164,800円からとなっている。
21.5インチモデルは、Radeon Pro Vega 20グラフィックスが選択できるようになったのもトピックだ。これは、2018年11月からMacBook Pro 15インチモデルのオプションにも加えられている。27インチモデルにはRadeon Pro Vega 48、iMac Proにはさらに上位のRadeon Pro Vega 64Xまで選択できる点を考えると、グラフィックス性能を高めたい場合はより大型のモデルを選ぶべきだろう。
なお、今回iMacシリーズも8コアのCPUを選択できるようになったが、iMac ProはIntel Xeon Wの8コアが標準モデルで、最大18コアまで選択できる。その点を考えると、確かに通常のiMacも高性能なデスクトップではあるが、iMac Proは格段の性能差があることがわかる。
T2チップは採用されず、どこか中途半端な刷新に
今回の刷新で一つ気になったのは、iMacに「T2」チップが搭載されなかった点だ。
T2チップは、Appleがデザインしたコプロセッサで、実に多くの重要な機能を提供してくれる。システムの起動セキュリティや指紋認証のセキュリティの実現、ビデオやオーディオのコントロールと信号の処理、ディスクコントローラとオンザフライの暗号化、そして高圧縮ビデオ「HEVC」のエンコードなどの役割だ。特に、セキュリティに関連する部分は、同じIntel製CPUを使うWindows PCとの大きな差別化要因にもなる。
T2チップは2017年登場のiMac Proを皮切りに、MacBook Pro、MacBook Air、Mac miniに採用されてきた。ところが、2019年にアップデートしたiMacにはT2チップが採用されなかった。
iMacは、最新のMacのラインアップで唯一ハードディスク、あるいはハードディスクとフラッシュストレージを組み合わせたFusionドライブを採用している。一方、既存のT2搭載モデルはすべてフラッシュストレージに統一されており、T2は設計上フラッシュストレージを前提とするシステム向けとなっていることが考えられる。
iMacも最大2TBまでのSSDを選択できるが、SSDを選んだからといってT2が入ってくるわけではなさそうだ。プロセッサ、グラフィックス、メモリとともに、T2チップがiMacとiMac Proの差別化要因となっている。
Mac生誕35周年の今年、変化が訪れるか
ただし、セキュリティの高さをブランド価値に組み込んでいる昨今のAppleの戦略を見ると、iMacだけをあえて除外する理由も見つけにくい。近い将来、例えば6月や9月、10月といったタイミングで、T2もしくはその次世代チップを搭載する新しい姿のiMacを用意しているのかもしれない。
そう考えたくなる理由の一つは、今年(2019年)は1984年に初代Macintoshが発売されて35周年となるからだ。初代Macと同じディスプレイ一体型のコンパクトなデスクトップという思想を維持しているiMacが、なんらかの進化を遂げることに期待したい。