外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年3月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ユーロ/円 3月の推移】
3月のユーロ/円相場は123.653~127.499円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.8%下落(ユーロ安・円高)した。ユーロは他の主要通貨に対しても弱含んでおり、「1. 欧州中銀(ECB)が年内の利上げを事実上断念し、長期資金供給オペという『量的緩和』の再開を決めたこと」「2. ユーロ圏最大の経済規模を誇るドイツを筆頭に域内の景気減速懸念が強いこと」「3. 英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡る不透明感が消えないこと」などがユーロ安の背景と見られる。
22日には、上記1.と2.に絡んで独10年債利回りが2016年10月以来のマイナス圏に転落。こうした中、ユーロ/円は28日に1月4日以来の安値となる123.65円前後まで下落した。
【ユーロ/円 4月の見通し】
ユーロ圏で最大の経済規模を誇るドイツの景気悪化に歯止めがかかるか否かが、4月のユーロ相場を左右しそうだ。独3月製造業PMIは速報値ベースで約6年半ぶりの低水準に沈んだほか、独1月鉱工業生産は前月比、前年比ともに大幅減を記録した。ただし、これは2018年9月の新排ガス規制による一時的な自動車産業低迷の影響との見方もある。
また、独3月IFO景況指数が7カ月ぶりに上昇に転じるなど、一部の指標からは景気底入れの兆しも窺える。5日の独2月鉱工業生産や23日の独4月製造業PMI・速報値、および24日の独4月IFO景況指数などに注目が集まりそうだ。
欧州中銀(ECB)は10日に金融政策理事会を開催するが、3月にフォワードガイダンスの延伸と長期資金供給オペ(TLTRO3)の再開を決めたばかりとあって、今回は現状維持の見通しだ。このため、ユーロ相場への影響も大きくないだろう。
また、3月同様にイギリスの欧州連合(EU)離脱=Brexit問題も4月のユーロ相場に影響を及ぼす公算が大きい。なお、イギリスは4月12日までに「合意なき離脱」か、さらなる「離脱期限延長」かの結論を出す必要がある。仮に「合意なき離脱」が実現すればポンド安に連れてユーロも下落することになるだろう。
【4月のユーロ圏注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya