日産自動車と三菱自動車工業は、共同で開発・製造しているハイトワゴンタイプの軽自動車をフルモデルチェンジして発売した。車名は日産が「デイズ」、三菱自動車が「eK ワゴン」および「eK クロス」で、今回の新型は日産が企画、開発を担当した。製造は三菱自動車の水島製作所(岡山県)だ。軽自動車市場はホンダ「Nシリーズ」などライバルの多い激戦区だが、日産と三菱自動車はどう戦うのか。
開発は日産、製造は三菱自動車
日産と三菱自動車は、合弁会社「NMKV」を通じて共同で軽自動車事業を手掛けている。今回の新型車では、NMKVのマネジメントのもと、日産が企画、開発、三菱自動車が製造をそれぞれ担当する。
フルモデルチェンジでデイズが2世代目、eKが4世代目となったことからも分かるとおり、軽自動車事業における両社の関係性はもともと、三菱自動車の軽に日産が相乗りする形で始まった。初代デイズの開発は三菱自動車が担っていたが、今回の新型車では「日産の先進技術を取り入れるため」(日産の星野朝子専務、新車発表会での発言)、日産が開発を主導した。つまり、新型デイズは日産にとって初めて「1から開発した」(星野専務)軽自動車だ。製造には三菱自動車が培ってきた知見を活用する。
軽自動車で初めて「プロパイロット」を搭載
軽自動車市場の状況を見てみると、2018年(暦年)の販売台数はホンダ「N-BOX」が24万台強で最も売れており、その後にはスズキ「スペーシア」が15万台強、日産「デイズ」が14万台強で続く。三菱自動車の「eK」(ワゴンとカスタム)は約4万5,000台で11位だ。デイズはかなり売れていたようだが、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ工業「タント」など、人気の車種がそろう軽ハイトワゴン市場において、日産・三菱自動車は何を商品価値として提示するのだろうか。
先進技術を盛り込むため、開発・生産体制を変更しただけあって、新しい「デイズ」と「eK ワゴン/クロス」は、機能の充実ぶりでライバルたちと勝負していきたい様子。その象徴といえるのが、軽自動車で初搭載となる日産の運転支援システム「プロパイロット」だ。
プロパイロットとは、高速道路を走っているとき、クルマがドライバーのアクセル、ブレーキ、ステアリング操作を支援するシステムのこと。この機能をオンにすると、基本的にクルマは設定した速度で同一車線を走行し、前にクルマが走っていれば速度を合わせて追従する。渋滞などで前を走るクルマが止まれば、こちらも合わせて止まり、停止状態を維持する。ドライバーとしてはアクセル操作をしなくて済むし、ハンドルには基本的に手を添えているだけでよいので、運転の負担が減る。
軽自動車は近所の買い物などに使って、遠出をするときには乗用車に乗るというのが一般的なクルマの使い方であるならば、プロパイロットは軽自動車にとって全く必要のない機能だ。しかし、日産は「軽自動車がファーストカーになってきている」(星野専務)と読む。軽自動車だけしか持たない人(あるいは世帯)にとってみれば、そのクルマは買い物にも遠出にも使う乗り物になるので、プロパイロットが役に立つというわけだ。
ホンダ「N-BOX」にも似たような運転支援システムは付いているが、時速25キロ未満で機能が解除になる。クルマが停止するまで支援するプロパイロットの方が、機能としての対応範囲は広い。
販売目標は日産「デイズ」が月間8,000台、三菱自動車「eK ワゴン/クロス」が同4,000台。軽自動車にしては価格が高いような気もするが、三菱自動車の益子会長は、先進の技術を取り入れたeK ワゴン/クロスが「過去とは全く違うクルマ」になったことを顧客に理解してもらうべく、努力していきたいとした。ちなみに、ライバルとなるN-BOXの価格は138万5,640円~227万4,480円なので、日産と三菱の新型車がとりわけ高いということもない。
(藤田真吾)