ファーウェイがフラグシップスマホの新製品「HUAWEI P30」シリーズを発表した。最大の特徴はカメラの劇的な強化で、ライバルを圧倒する「最大50倍デジタルズーム」などの最新技術を披露した。
2018年のP20シリーズと同じく、発表イベントはフランス・パリで開かれた。日本での発売も期待されるP30シリーズだが、果たしてどのような進化を遂げたのか。
驚異の50倍ズームで月を撮影
ファーウェイは2月のMWC19で折りたたみスマホの「Mate X」を発表したばかりだが、これはやや実験的な性格の端末だった。今回発表したP30とP30 Proは、同社のフラグシップモデルにあたるHUAWEI Pシリーズの新世代製品で、特にカメラを中心に機能を強化したモデルだ。
上位モデルの「HUAWEI P30 Pro」は、本体背面に3個のカメラと1個の深度測定カメラの合計4眼カメラを搭載。3個のカメラは超広角、広角、望遠のレンズを備えており、幅広い焦点距離の撮影に対応できる。
特筆すべきは暗所や望遠の撮影性能だ。暗所で重要なISO感度は、前モデルの102400から4倍相当となる409600に引き上げた。望遠は35mm換算で125mmのレンズにデジタル処理を組み合わせることで、10倍までのハイブリッドズームと50倍までのデジタルズームに対応した。
アップルやサムスンの最新スマホと比べて、星空や月の撮影で特に大きな違いがでるとして、実機で撮影したという写真も公開された。他機種では真っ暗にしか撮れない夜空でも、P30 Proなら星空を鮮やかに撮れるという作例や、模様まではっきりと分かる大きな月の写真は圧巻だ。
こうした作例は、事前にプロの写真家によって念入りに作り込まれたものも多い。だがファーウェイは製品発表の場で、会場の照明を落とし、実際にiPhoneやGalaxyと撮り比べ、P30 Proの撮影性能をライブで証明していたことが印象的だった。相当な自信があるのだ。
カメラとCPUを半年ごとに強化
ファーウェイのカメラが進化を続ける背景には、世界初をうたう「RYYB」方式のイメージセンサや、5倍ズームをスマホに収めるペリスコープ構造など、多岐に渡る最新技術を開発・保有していることがある。その技術開発の中で重要な要素となっているのが、各種の処理装置や通信モデムを統合するチップセット(SoC)の進化だ。
たとえば普通のデジカメなら、50倍のデジタルズームは確実に手ぶれしてしまう。ISO感度を40万に高めてもノイズだらけになるだろう。そこで最近のスマホは、連写した複数枚の写真を合成することで手ぶれやノイズを除去し、画質を高めている。
このとき、重要になるのが画像処理のスピードだ。シャッターを押した後のわずかな時間にどれだけ多くの画像処理ができるかで、画質は大きく変わってくる。チップセットの処理性能が高速になればなるほど、画質を向上できる余地が出てくるというわけだ。
P30 Proのチップセットは、2018年秋に登場した「Mate 20 Pro」と同じ「Kirin 980」に据え置かれたため、5Gへの対応にも一切言及されなかった。それでもファーウェイはKirin 980を最適化し、さらにカメラ性能を引き出してきた。
P30 Proのカメラを開発する上で足りなかった要素は、2019年秋に登場する次のMateシリーズが搭載するであろう次のKirinチップセットに活かされる。このカメラとチップセットを交互に短期間で強化していくサイクルが、今のファーウェイの強みだ。
当面の間、スマホの開発競争はカメラ機能を中心に進行し、その鍵を握るチップセットの性能の重要度は高まる一方だ。開発力でライバルを圧倒し始めたファーウェイの勢いは、まだまだ衰えることはなさそうに見える。
(山口健太)