27日、メルカリ子会社のメルペイとLINE Payは、キャッシュレスの普及促進を目的とした業務提携に関する基本合意書を締結したと発表した。

両社の提供するモバイル決済サービス「メルペイ」と「LINE Pay」における加盟店の相互開放をすることによって利便性を図るほか、今後は、両社参画による加盟店アライアンス「MOBILE PAYMENT ALLIANCE(仮称)」を推進し、他事業者の参画も促し、アライアンス領域の拡大を目指す。

LINE Payとメルペイが提携した

「○○ペイ」乱立による複雑化を避ける狙いも

昨今は金融機関や大手通信、ITなど多くの企業がスマホ決済事業に参入しており、キャッシュレス化に向けた盛り上がりが加速する一方で、サービスの乱立が加盟点の負担増につながり、利用者視点でも煩雑さが生じるなど問題になっていた。今回の両社の業務提携には、この課題を改善する狙いもある。

具体的には、2019年夏ごろより加盟店はLINE Payかメルペイのいずれか一方の決済方法を導入するだけで、両方の決済サービスを利用できるようになる。なお、その場合の決済手段はQRコードのみ。

提携の発表は突然のことだったが、両社のこれまでの動向を見ていると、今回の提携は決して不自然なものではない。

メルペイは2月20日の「MERPAY CONFERENCE 2019」において、今後の事業戦略を語る際に「OPENNESS構想」を掲げていた。それは、自社のサービスを優先して拡大していくのではなく、加盟店のネットワークをつくりあげるために、まずはさまざまな事業者と協力してインフラの構築にかかる負担を抑えつつ、キャッシュレス市場の拡大を目指すというものであった。

一方のLINE Payは、昨年11月に実施した中小企業向けサービス説明会「LINE SMB Conference」において「日本では現金の信用度が高く、キャッシュレスの普及は容易ではない。現金こそライバルだ」(LINE 出澤剛社長)としている。

両社ともに、「まずはキャッシュレス業界を盛り上げる必要がある」という考えは同じであり、今回の提携はそれが形になったものと言えそうだ。

加えてメルペイはすでに、「au PAY」を開始予定のKDDIと連携して決済加盟店の獲得営業を進めることも決めている。可能性として、「MOBILE PAYMENT ALLIANCE(仮称)」にKDDIも巻き込むことができれば利便性はさらに増していくだろう。

狙ってか狙わずか、今週末の金曜日(3月29日)は、キャッシュレス決済の認知度向上を目指し経済産業省が実施する「プレミアムキャッシュレスフライデー」なのだそうだ。今回、LINE Payとメルペイの提携発表が突然に見えたのは、世間が「キャッシュレス」に注目するこのタイミングに合わせたためという事情もあるのかもしれない。

日本のキャッシュレス決済の普及を加速する可能性がある今回のアライアンスに対して、他の事業者がどのような反応を見せるかに注目したい。

(田中省伍)