東京2020組織委員会は3月25日、持続可能な消費・生産の形態が確保された社会の実現を目指す「街づくり・持続可能性委員会」を開催した。当日は小宮山宏委員長らが出席し、東京2020大会の運営計画について進捗状況の報告が行われ、識者らの意見が交わされた。

  • 街づくり・持続可能性委員会の委員らが一堂に会し、東京2020大会の運営計画について進捗を報告した

東京2020大会の持続可能性進捗状況

世界のスポーツ界・ビジネス界で環境や人権を大切にする考えが広がるなか、国際連合が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)に沿った大会運営を目指す東京 2020 組織委員会は、経済合理性のみならず持続可能性にも配慮し、大会の準備・運営で調達する物品やサービスに共通して適用する基準や運用方法を定めた「調達コード」を策定。歴代のオリンピック、パラリンピック組織委員会として昨年初めて、国際連合とSDGsについて基本合意書を締結した。

  • 冒頭挨拶を述べる小宮山宏 委員長

東京2020大会におけるSDGsの象徴的な取り組みのひとつが、「都市鉱山から作る! みんなのメダルプロジェクト」。同プロジェクトは、使用済み携帯電話など小型家電から抽出したリサイクル金属で東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の約5,000個の金・銀・銅メダルを製作する国民参画型の取り組みとなっている。

東日本大震災の被災地で使用された仮設住宅の廃材を利用したという聖火トーチもこのほど公表されたが、全国の小学校などで環境学習のテーマにも多く取り上げられたこのプロジェクトには、1,618の自治体・パートナー企業等が参加した(2019年2月時点)。

必要な金属量を確保できたため、今月31日をもってプロジェクト内での回収は終了するが、今後も参加自治体などによる小型家電等の回収システムなどは継続。社会に根付かせる活動を一層推進させていく方針が示された。

「調達コード」においては木材、農産物、畜産物、水産物など個別基準が策定されており、こうしたメダルプロジェクトはじめ、脱炭素の取り組みの先進性などについては委員たちから比較的高い評価が目立った。

その一方、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)自然保護室・室次長を務める小西雅子氏からは「いま一番大きな懸念が調達コード自体にバラつきがあるというところ。特に水産物が最も持続可能性というものが確保されない調達コードになってしまっており、今のままでは日本の水産物のほとんどが当てはまるような調達コードになっている。例えて言えば、勉強の計画さえ持っていれば大学入学させちゃうみたいなもので、他のコードは曲がりなりにも“入学基準”があるんですけど、水産物だけは日本の場合、持続可能性に配慮しないと言っているようなもの」という指摘も。

  • 1人でも多くの方が参画し、大会をきっかけにした成果を未来につなげるため、今後もさまざまな取り組みを実施していく

今後も、関係するNGO団体などと対話を深めながら常にPDCAを回し、調達コードのさらなる改善と深化を目指していくことの重要性が確認された。

また、調達物品の再利用率99%など、同委員会の掲げるチャレンジのハードルは決して低くないが、「“レガシー”といった時に局所的、一過的な感じがある。東京都だけでなく日本全国に広げるということを考えた場合、我々が今まで集めた知見をまずは全国のキャンプ地やホストタウンにも伝えて、可能な限り努力をしてもらう。大会後に日本全体で発展していくような情報提供などをして、ムーブメントにつなげていくことも大切。末長く日本全国で広がりを持てるような準備を」(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授・間野義之氏)といった声も印象的であった。

東京2020大会でのSDGsの活動を、真のレガシーとして定着させることができるのか。大会へ向けて、また大会後のSDGsの実現を目指す同委員会の取り組みに注目したい。