じつは部屋でカクレクマノミなどの海水魚を飼育している筆者。水族館に行くのも趣味のひとつだ。でも最近、忙しくてあまり水族館にも行けていない。そんなところに飛び込んできたのが、「すみだ水族館」で「私の愛するいきもの展」が始まるというニュース。よし、趣味と実益を兼ねて行ってみよう!

  • 写真には写らない美しさ! 「私の愛するいきもの展」でナマコに会いたくてふるえる

    「すみだ水族館」は東京スカイツリータウン・ソラマチにある

ちょっぴりマニアックな生き物に注目!

すみだ水族館は、東京スカイツリー開業と同時の2012年にオープン。東京スカイツリータウン・ソラマチの5階・6階にあり、もうすぐ7年目を迎える水族館。「私の愛するいきもの展」は、「すみだ水族館」と「京都水族館」の合同企画として2019年3月15日~4月21日の期間限定で開催されている企画だ。

  • この愛が……火を吹く……だと?

今回の企画は、一般的な水族館では普段はなかなか日が当たらない生き物にスポットライトを当て、同時にそうした生き物を愛する飼育スタッフの存在にもフォーカスしようという試み。果たしてどんな生き物への愛が展示され、語られているのか!? 早速、館内にGO!

今回の展示の主役は「クロナマコ」

ご対応してくれた広報の恵土敦さんにお話を伺いつつ、館内をめぐってみると、よくある水族館とは違い、一方通行ではなく、自由導線を採用しており、公園のような雰囲気だ。ご近所にお住まいの方々は、お得な年間パスを使って毎日のように訪れるお客さんも多いのだとか。たしかに、こういう雰囲気ならお散歩するように毎日足を運びたくなるはず。水槽の前に椅子とテーブルが置かれていたり、ゆっくり眺めることができるのも嬉しい。「都心に暮らす人々の憩いの場になればと思っています」と、恵土さん。

  • 親切丁寧にナマコの魅力と飼育スタッフたちの愛を語ってくれた広報の恵土敦さん

まず入口付近に登場するのが、今やすっかり癒し系の人気者となったクラゲの水槽。生まれたばかりのクラゲの赤ちゃんなども展示されており、子どもたちが興味深そうに見つめていた。うわ~カクレクマノミ、やっぱりいつどこで見てもカワイイ! チンアナゴ、めちゃくちゃたくさんいる! こんなにいっぱいいるの初めて見たぞ。おっと、ここにはペンギンたちが待っていた。やっぱりペンギンもカワイイよね~。さらに、オットセイが飼育員さんと一緒に、歩いている。水族館のスター勢ぞろいな感じで、楽しいなあ。すでに、結構満足、満足。

  • かわいさのあまり撮影したけど、今回の主役はカクレクマノミじゃない

  • チンアナゴの大群、すげぇ~! でも、彼らもこの記事の主役ではない

あれ? そういえば、「私の愛するいきもの展」って何が展示されているんでしたっけ?

「はい、それは「クロナマコ」です」(恵土さん)

  • 主役は、こいつ。クロナマコ。カメラを向けたらやってきたお魚の休憩場所にされてしまい結局脇役に!?

ク・ロ・ナ・マ・コ? ナマコって、あのナマコでしょうか。「そうです。3月いっぱいまでは、「私の愛するいきもの展」の第一弾としてクロナマコを大きくフィーチャーしています。なかなかマニアックですけど(笑)。どうしても水槽の脇役になってしまいがちなナマコも、色々見ていくと面白いポイントっていっぱいあるんです。どんな生き物にも魅力ってあるんですけど、まだそれに気付いていない方も多いんじゃないか、というところからこの企画が始まっています」(恵土さん)

スタッフたちのナマコ愛あふれる展示たち

なるほど、確かにあまり目立たなくて詳しく知らない生き物だからこそ、こういう展示で取り上げる意味があるのかも。館内には、通常の水槽にたくさんのナマコがいるほか、この企画のために設けられた「私の愛するいきもの展」のブースに、クロナマコを中心としたナマコの解説が。クロナマコ好きの飼育スタッフから、どんな風にナマコを見たら面白いかをヒアリングしながら、展示物を作っていったという。

  • 飼育スタッフ画伯によるクロナマコリアル図解。ウルトラマンと戦ったこと、ありませんか?

例えば、タイムラプス(早回し)映像で、ナマコがどのように動いているのかを観察できるモニター画面が展示されていた。普段はジッとして動かないように見えるナマコだが、早回し映像を見ると、うわ~! 超動いてる! 砂ごと口から食べて、有機物だけを自分の栄養にしてお尻から砂を吐き出すという、海のお掃除屋さん的な、ナマコならではの生態がよくわかった。俊敏に動いているように見えるナマコ、正直、ちょっとキモい……。

  • ナマコでここまでアートな展示ができるすみだ水族館さん。ヤベえ奴らなのかな?

思わず、近くにいたお客さんに、改めてナマコを見た感想を訊いてみると、「キモかわいいですね」と言っていた。おっ結構好評みたいだね。ブースの中に入ると、壁一面にナマコ・フォトライブラリーが! さらに飼育スタッフさんが描いた詳細なイラストも飾られていたのだが、これが超リアル。ナマコ愛がほとばしりしぎている。また、ナマコの仲間にはクロナマコのほかに「ニセクロナマコ」というのもいるそうで、ブースに設置されたモニター画面の中では、「すみだ水族館」のスタッフと「京都水族館」のスタッフが「クロナマコ」と「ニセクロナマコ」をめぐり激論を交わしている映像が。どっちでもいいだろ! とか言うなかれ。彼らは、本気。飼育スタッフたちのナマコ愛は、ハンパないのだ。ナマコに会いたくて会いたくてふるえるこの気持ち、きっと伝わるはず(あなた次第)。

  • ナマコの感触を疑似体験できる罰ゲーム的な仕掛けもあり

飲食コーナー「ペンギンカフェ」では、なんと飼育スタッフが考案したという「とびだす! 3種のナマコパフェ」(税込600円)なるスイーツが。「エクレアナマコ」という種類のナマコがいることをヒントに生まれたメニューのようだが、恵土さん、もしかしてこれって? 「いや、さすがにナマコは入っていないです(笑)」。よかった、なんとなく安心。もちろん、ナマコも食べられるけれども、さすがにスイーツには入ってなかった。実際、食べてみたらとても美味しいパフェだった。ごちそうさまでした!

  • すみだ水族館で飼育されている3種類のナマコをイメージした『とびだす! 3種のナマコパフェ』。ナマコへの愛はこんなにも、あま~い!

クロナマコみたいに美しくなりたい

華やかに舞い泳ぐ煌びやかな魚たちのフンなどを掃除しながら、水質をキレイにしてくれるナマコたち。「ナマコって、人には気付かれずにずっと働いているんですよ。誰からも認められなくても、愚直に生きているんだなっていう姿に共感していただくと、よりナマコに愛着を持っていただけるのではないでしょうか」(恵土さん)

ううっなんだか、ジ~ンとしてしまった。スーツ姿のサラリーマンが、仕事帰りに訪れて水槽をじっと見つめていたりすることもあるらしい。それは、ナマコと自分を重ねているのかもしれないなあ。展示ブースでのナマコ展示は3月31日までだけど、ナマコは常に水族館にいるので、お疲れ気味なフラリーマン諸君は、是非一度フラフラっとナマコを眺めに来て欲しい。

  • ナマコ応援グッズが!? 客席から「反りかえって!」って言われたナマコのリアクションは謎

それにしても、取材中、写真を撮りまくって改めて思ったのが、SNS映えとは真逆のこのビジュアル。悪いけど、写真を撮っても撮ってもぶっちゃけフォトジェニック感、ゼロ。いや、待てよ。なるほど、そうか。これは、なんでもかんでもSNS映えばかりの世の中への、ナマコなりのアンチテーゼに違いない。筆者は勝手にメッセージを受け取った。

大切なのは、見た目なんかじゃない。クロナマコみたいに美しくなりたい。写真には写らない美しさがあるから……。ありがとう、ナマコ。がんばれ、ナマコ。水族館の主役に躍り出るその日まで!

●information
「私の愛するいきもの展」
開催期間:2019年3月15日~4月21日
開催場所:館内各所
開催時間:【すみだ水族館】午前9時~午後9時
【京都水族館】午前10時~午後6時
※すみだ水族館では「クロナマコたち」の展示が3月31日まで、以降は「二匹のナベカ」の展示を実施。