Windows Virtual Desktopがパブリックプレビューに達した。日本マイクロソフトが2018年11月に開催した「Tech Summit 2018」の基調講演で、本邦初公開となったWindows Virtual Desktopは、Microsoft Azureで動作するVDI(仮想デスクトップ基盤)である。シンクライアントの一種であるVDIは従来のオンプレミスからDaaS(Desktop as a Service)に注目が集まっていた。
働き方改革やコスト、情報漏えいといった多様な文脈から企業利用が増えるDaaSは、VMware Horizon CloudやCitrix Virtual Apps&Desktopsなど選択肢が限られていた。
これまでのMicrosoftはオンプレミス型のMicrosoft VDIにとどまり、パートナー企業によるライセンスビジネスに注力していたが、満を持してDaaS市場に突入する。
Windows Virtual Desktopsはマルチセッションに対応したWindows 10 Enterpriseに仮想環境に最適化したOffice 365 ProPlus、Microsoft 365のセキュリティおよび管理機能との統合をMicrosoft Azureで提供するDaaSだ。
なお、企業で使われるレガシーアプリケーション(以下、アプリ)を踏まえて2023年1月までWindows 7のセキュリティ更新プログラムを提供するESU(Extended Security Updates)も追加費用なしで利用できる。
Microsoftは通常のWindows 7に対しても有償ESUを提供するが、Enterpriseエディションは1年目は1デバイスあたり25ドル、2年目は50ドル、3年目は100ドル(Proエディションは50/100/200ドル)なのと比べると対照的だ。
一般的にVDIは仮想デスクトップが独自のストレージを使用する永続型と、ユーザーがサインアウトすると標準イメージに戻る非永続型に分類されるが、セキュリティなどの観点から非永続型が用いられることが多い。
だが、それではクライアント側で多くのストレージ容量を必要とするOutlookおよびOneDrive for Businessの利便性は低下してしまう。そこでMicrosoftは2018年11月にこれらの課題を解決するソフトウェアをリリースしてきたFSLogixを買収し、仮想デスクトップの利用環境を向上させている。
詳しい記述はないものの、FSLogixのOffice 365 Containerを使用し、ExchangeサーバーのデータキャッシュやOneDrive for Businessの有効化を用いているのだろう。
構成からも分かるとおりWindows Virtual Desktopは、あくまでも法人ユーザー向けである。すでにDaaSを使用中の企業や、もしくは運用コストの観点からDaaSへの移行を検討中の中堅中小企業にとってWindows Virtual Desktopは興味深い選択肢だ。他方で個人のPC利用スタイルに変革をもたらす機会になると筆者は考える。
クラウド利用は個人にも浸透し、プライベートなデータをクラウドとローカル両方に格納し、NASに代表されるローカルストレージをデータの主要格納場所とする方も減少傾向にある。例えばクリエイターであれば、Adobe Creative CloudのCreative Cloudライブラリーの利便性は改めて述べるまでもない。
このように個人のPC周りもクラウド化する流れを見回せば、将来的には過度なスペックを持つデスクトップPCではなく、適度なスペックを備えるPCでゲームやアプリをネットワーク越しに利用する世界が訪れるだろう。
阿久津良和(Cactus)