ドラマ「家売るオンナの逆襲」(日テレ系・水曜夜10時~)、マンガ「正直不動産」など、不動産屋を扱ったドラマ・マンガが人気を集めています。ではその魅力はどこにあるのでしょうか。家を買う時・借りる時だけでなく、就職活動にも役立つその理由とは? 解説していきましょう。

「家売るオンナの逆襲」「正直不動産」も凄腕の不動産営業が主人公

現在、日テレ系で放映されている「家売るオンナの逆襲」は、2016年7月に放映された「家売るオンナ」の続編です。凄腕の不動産営業ウーマンの主人公・三軒家万智(さんげんやまち)を北川景子さんが演じているほか、イモトアヤコや仲村トオル、工藤阿須加や千葉雄大など個性豊かな俳優陣が、万智の上司・同僚として登場しています。

ドラマには毎回、家を買いたい・売りたいというゲストキャラクターが出てきて、万智が時に現実にはありえない手段を使いながら、家を売っていくのが見どころとなっています。

「正直不動産」は、小学館から刊行されているマンガ作品で、現在4巻目まで続いています。こちらも、敏腕不動産営業マン・永瀬財地が主人公。もともと嘘もいとわぬ営業スタイルの「トップ営業マン」でしたが、ひょんなことから嘘がつけなくなる体質となってしまい、客の前で不利な内容でもべらべらと話してしまう体質に。主人公は嘘をつくことなく不動産屋を続けることができるのか、不動産業界の内情・裏事情をまじえながら、ストーリーが展開しています。

どちらの作品にも共通しているのは、主人公が凄腕だけどちょっとワケありで変わっている、という点です。ゲストキャラの家を売る・買う・借りるオーダーがあり、それを主人公がどう解決していくのかを中心に話が展開しているので、途中から見ても面白く、わかりやすい展開。

また、不動産営業という仕事はその性質上、家で暮らす人、つまり家族の問題と無縁でいられません。熟年離婚、再婚、ひきこもり、シングルマザー、LGBTなど、昨今の家族と家族の問題を描いているのも、人気の理由といえるでしょう。

「地面師」「大家」「銀行」。昨今の不動産ニュースがてんこ盛り

相続したのに処分に困る「空き家」、土地高騰を背景に、土地の所有者になりすまして売却してしまう詐欺集団「地面師」、「サブリースと大家」「銀行と不動産屋の関係」「youtuberの家さがし」「欠陥マンション」...など。このところ不動産に関するニュースが、日々、世間を騒がせています。ドラマの「家売るオンナの逆襲」、マンガ「正直不動産」ではこうしたニュースになった内容がストーリー展開に盛り込まれています。

そのため、「あ、そういえばあったな、その話」「あんな家の話、ほんとにあるのかな」などと、ニュースがおもしろくなるのも見どころのひとつです。また、ニュースではなかなか理解しにくい内容でも、ドラマ・マンガ仕立てになっていると、意外とすんなり理解できるもの。架空のドラマでありながら、リアルのニュースを理解するのに役立つ、そんな「解説」の側面もある「おトク感」が、人気の理由ともいえるでしょう。

家を買う時、借りるとき、業界研究にも役立つ

家を借りるにしても、買うにしても、「部屋のどこを見たらいいのか」「どうすれば納得いく家が見つかるのか」と考える人は多いことでしょう。ただ家を買う、借りるタイミングになってイチから勉強しようとしても、不動産関連の用語は難しく聞き慣れないものが多いのが現実です。

たとえば、不動産の売買・賃貸借の取引に関して、宅地建物取引業者が取引当事者の間に立ってその成立に向けて活動する「媒介契約」の種類には、“一般媒介契約”や“専任媒介契約”という聞いたことのないような用語が登場します。

また、“瑕疵担保責任(不動産に見えない欠陥があった際に売主がその責任をもたなくてはならないこと)”や“建築条件付き土地(一定期間内に、指定の建設業者で家を建てる条件がついた土地のこと)といった用語はマイホームを建てたい・買いたいと思って専門書を読んでいる人にはおなじみのものですが、もちろん初めて耳にする人も多いことでしょう。このような専門用語を前にすると、「どこから勉強したらいいかわからない」となるもの。

不動産は、建築だけでなく、関連する法律、金利動向など、さまざまな要素で成り立っているため、とっつきにくい・わかりにくいのも事実です。また、その分だけ、情報や知識がないとソンをしてしまうこともあります。「正直不動産」のように、不動産のワケあり部分、ソンな部分を説明してくれる人は、リアルにはなかなか出会えないことでしょう。ただ、どんな物件でも「弱点」「難あり」な部分はあります。

「家売るオンナの逆襲」「正直不動産」は、話として脚色されている部分はあるものの、こうした「不動産」への理解を深めるにはうってつけのコンテンツです。引っ越したい、借りたい、買いたいと考えている人は参考になることでしょう。

また、就職活動を控えている人であれば、不動産営業がどのような仕事なのか、求められる人物像など、仕事理解・業界研究にも役立つはずです。今はネットで視聴したり、閲覧したりが簡単にできるので、気になった人は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得。