声優、そしてアーティストとして活躍する水樹奈々が、2019年3月23日(土)、地元・愛媛県にある、ひめぎんホールにてスペシャルライブ「NANA MUSIC LABORATORY 2019 ~ナナラボ~」を昼夜2公演で開催。昼公演では、全国48館にてライブ・ビューイングも行われ、約12,000人を動員した。
今回のライブは、タイトル通り「音楽の実験室」がテーマ。バックバンド・Cherry Boys一人一人とのタイマン勝負をメインに据えたセットリストになっており、各々が考えたこの公演限りの楽曲アレンジと、まさにその場で生まれる音の化学反応を堪能出来る貴重なライブとなった。ここでは、サプライズゲストやニューシングルリリースの発表にも湧いた一日より、昼公演の模様を紹介しよう。
白衣を着た水樹が音の鳴る実験室で何かを研究しているといったオープニング映像が流れはじめ、これから何が始まるのかという興奮と緊張に包まれる中、まずはベースの坂本竜太が登場し、会場を盛り上げる。そして、「ナナラボ、思いっきり盛り上がっていくぞ!」という声とともに白衣をイメージした衣装でステージに現れた水樹。観客と一緒にタオルを振り回しながら「Rock Ride Riot」で開幕。坂本は、軽快な音を奏でていたかと思うと、機材を駆使し、その場で録音したものをループで流したり、ギターのような音色を出したりと、ワクワクするような展開を繰り広げる。そしてそれに歌声という唯一無二の武器で変幻自在に応えていく水樹の姿に、この後の楽曲への期待値もあがっていく。
2曲目はギター・北島健二と「Trickster」。力強いギターの音色と繰り広げられる超絶プレイの数々に思わず食い入るようにその手元を見てしまうが、水樹も負けじと食らいつく。そして、「迷宮バタフライ -diverse-」で低音から高音まで美しく繊細な音色を響かせたのはヴァイオリンの門脇大輔。水樹の歌声、表情と相まって、あっという間に会場は妖艶な雰囲気に。続く4曲目はギターの渡辺格。丸みのあるサウンド感で印象的なフレーズとともにスタートしたのは「STAND UP!」。ブレイクでは観客を煽ってみたりと、二人の作り出す暖かい空間に包み込まれ、会場に笑顔が広がっていった。
「ただいまー。愛媛にやってまいりましたよー!ライブ・ビューイング会場の皆さんも盛り上がっていますかー!」とあらためて元気に挨拶すると、「5階建のホールという空間を生かしたライブにしたいと考えて、タイマンしかないと!」と、今回のライブへの意気込みを語った。
5曲目はここまで登場した弦楽器4人とともに「ミラクル☆フライト」。カントリー調のアレンジで陽気な掛け声を全員で行うなど、まるでテーマパークのようだ。4人からそれぞれアレンジのポイントや、演奏してみての感想などを聞いた後は、「まだまだ実験は続きます」とここからまた雰囲気を一転。藤陵雅裕が奏でるアルトサックスのセクシーな音色とともに「MARIA&JOKER」。情熱的で震えるような音色とビブラードを効かせた艶やかな歌声、そして二人の息づかいも聞こえてくる程に、大人の色気たっぷりの空間に浸っていく。
7曲目はドラム・松永俊弥と「Mr. Bunny!」。特別アレンジのBGMにあわせて、安定感のある軽快なリズムを刻んでいたが、やはり松永といえば最近の水樹ライブで定着しているラップ。もちろんここでもタイマン!ということで、楽曲の後半では水樹も巻き込みオリジナル歌詞でラップを披露すると、二人の絶妙な掛け合いに大きな歓声が贈られた。
そして、「Lovely Fruit」で最も多くの楽器を使い、楽しませてくれたのは、パーカッションの福長雅夫。コンガやグロッケン、カウベルなど16種類の楽器で様々な音を奏でると、途中から水樹もみかん型のシェイカーを振りながら踊り出し、自然と観客の身体も横に揺れていた。
続く9曲目は「奇跡のメロディア」。大平勉の煌めくようなピアノの音色と水樹の声が重なり、ふわりと身体が軽くなったような感覚が生まれる。「何度だって奇跡を起こす」という歌詞が強く耳に残るのは、この公演が奇跡の塊で作り上げられているからだということを感じさせられる。そして、藤陵~大平までの4人をステージに呼び込み、ここでも感想を。藤陵は、水樹が今回、ライブの主をタイマン勝負にしたことに際し、「こんなのできる人なんて他にいないですよ!」と熱く語っていた。
10曲目はこの4人と一緒に「GUILTY」。普段はセクシーなダンスナンバーとしても人気の楽曲だが、大胆にもファンクジャズ風のアレンジに。ここでも「実験」として新たな角度から楽しませてくれる。
衣装替えをしてからの後半戦はサプライズな出来事が。まずは水樹のライブにおけるサウンドプロデューサーの矢吹俊郎が登場し、矢吹の作詞・作曲である「少年」。ギターを持ってライブステージ上で水樹と共演するのは約6年半ぶりとなったが、水樹の歌を支えるようなコード弾きだけでなく、間奏のソロプレイでも客席を湧かせた。
そして次に呼び込まれたスペシャルゲストは、声優の早見沙織。楽器だけでなく、声と声の実験もしたいということで、水樹から早見に連絡を入れたとのこと。「初愛媛がまさか奈々さんの舞台なんて一生忘れられないです」と早見から喜びの言葉があった後、二人のアカペラで披露されたのは「Heart-shaped chant」。水樹の真っ直ぐに伸びる声と早見の包み込むような美声の重なり合いは、ホールという空間だからこそより響き合い、引き込まれるものに。思わず泣き出す観客もいた程だった。
これにてタイマン勝負は終了ということで、Cherry Boysがステージに集合。「いつもライブでやっている定番曲をアレンジしたくて」と話した後、「POWER GATE」では、明るい雰囲気はそのままに、何声にもなるコーラスを。「ETERNAL BLAZE」では、楽器が代わる代わるいろんな組み合わせで登場したかと思うと、最後には全員が一つになるというアレンジに。1曲の中だけでなく、この本編を通してのストーリーにもなっているのではと思わせるアレンジもまた、一つの実験的な試みなのかと感じられた。
しかし、これで終わらないのが水樹奈々。アンコールはいつもの水樹奈々ライブの様相となり、初披露となった「REBELLION」では大きくペンライトが揺れ、一気に熱量があがっていく。TVアニメ『戦姫絶唱シンフォギアXV』オープニングテーマを収録したニューシングルを、7月17日にリリースするといった嬉しいお知らせの後は、故郷を思って水樹が作詞した曲「JEWEL」を披露。歌詞にもあるように、「かけがえのないふるさと」でこの歌を歌えることへの喜びが溢れているようだった。
「これもやっぱり愛媛で歌いたかったのよ!」と水樹が話し、最後に披露されたのは「サーチライト」。愛媛県新居浜市でオールロケを行った映画「ふたつの昨日と僕の未来」の主題歌になっている曲で、歌詞にもあるように、携帯のライトが客席を埋め尽くし、美しい光景に。この光を頼りにまた故郷に帰ってくる、そんな想いを感じ、公演は幕を閉じた。
「MUSIC LABORATORY」というタイトルそのままに、今ある楽曲の形に捉われず、様々な楽器で様々なアレンジを行い、観客を楽しませる様は、まさに「音を楽しむ実験室」そのもの。観客の反応を見る限り、実験は「大成功」だったのではないだろうか。
●「NANA MUSIC LABORATORY 2019 ~ナナラボ~」DAY STAGE - セットリスト
M-01. Rock Ride Riot (VS 坂本竜太)
M-02. Trickster (VS 北島健二)
M-03. 迷宮バタフライ -diverse- (VS 門脇大輔)
M-04. STAND UP! (VS 渡辺格)
M-05. ミラクル☆フライト
M-06. MARIA&JOKER (VS 藤陵雅裕)
M-07. Mr. Bunny! (VS 松永俊弥)
M-08. Lovely Fruit (VS 福長雅夫)
M-09. 奇跡のメロディア (VS 大平勉)
M-10. GUILTY
M-11. 少年 (VS 矢吹俊郎)
M-12. Heart-shaped chant (VS 早見沙織)
M-13. POWER GATE
M-14. ETERNAL BLAZE
【ENCORE】
EN-01. REBELLION
EN-02. JEWEL
EN-03. サーチライト
(写真:ウチダアキヤ)