テクノバンド・電気グルーヴのメンバーで俳優のピエール瀧容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたこと受け、映画『麻雀放浪記2020』に関する会見が20日、東映本社で行われ、白石和彌監督と同社代表取締役社長・多田憲之氏が出席した。
同作は、阿佐田哲也のベストセラー小説『麻雀放浪記』を原案に、主人公・坊や哲が1945年の「戦後」から、新たな戦争が起こった後の2020年の「戦後」にタイムスリップする物語。斎藤工が坊や哲を演じ、瀧容疑者は戦争によって中止になったオリンピックの組織委員会元会長を演じている。
会見冒頭、多田社長は4月5日の劇場公開が正式に決定したことを報告し、瀧容疑者の逮捕については、「容疑が事実であれば、決して許されることではなく、大変な憤りを感じております」と主張。中止や延期、編集した上での公開など議論を重ねたが結論に至らず、「配給担当である弊社の判断」でノーカットのまま公開することに。製作委員会では現在も議論が続いているという。
また、「あってはならない罪を犯した一人の出演者のために、作品を待ちわびているお客様に、既に完成した作品を公開しないという選択肢は取らないという結論」とし、「劇場での上映は有料であり、かつ鑑賞の意志を持ったお客様が来場し、鑑賞するというクローズドなメディアでありますので、テレビ放映またはCM等とは性質が異なります」と説明。前売りのチケットの払い戻しには対応し、劇場公開時にはポスター、上映前のテロップで、ピエール瀧容疑者が出演していることを明示する。
一方、2013年公開の『凶悪』以降もピエール瀧容疑者を多数起用してきた白石監督は、「一緒に映画を作ってきた仲間がこういう犯罪を犯してしまって僕自身、大変驚きました」「ピエール瀧容疑者に抑えられない憤りを感じました」と吐露。再撮影する覚悟もあったが、東映側から意向を聞かれ、「編集しない形、僕がベストだと思った形で公開したいのが正直な気持ち」と伝えたという。「禁止薬物には当然反対の立場。絶対に犯してはいけない犯罪」としつつ、「個人が犯した罪と作品そのものには罪はない」という考えで、「こういう形で公開できることにホッとしている」と正直な気持ちを伝えた。
さらに、「罪の重い、軽いはない。どんな罪も罪は罪。その中でどういうテーマなのか、罪がどういう質のものでどういうテーマでどういう役割だったのか、いろいろな状況はあるとは思いますが、その議論もなく一様に社会の流れが決まっているかのように蓋をしてしまうのはよくない」と訴え、「そこは作品それぞれ。上映できないというのが特例であってほしい。作り手としての願い」と切実な思いを述べた。
瀧容疑者にかける言葉を聞かれると、「(『凶悪』をきっかけに)監督として大きく引き上げてくれた一人」「彼の持っているキャラクターと男っぷりの良さ、いろいろなところに男惚れをして通算5本仕事をさせていただいた」とこれまでの関係性を振り返り、「20代の頃からやっていたというのもニュースで知って。少なくとも仕事をしている時は、そういう兆候は分からなかった。瀧さんのスタッフ、ファン、家族がどういう思いをしているのか。言葉にできない」と落胆。「本当に今はバカ野郎としか言いようがない」と突き放しつつ、「自分の罪を反省して、これからどういう人生を歩んでいくのか分からないですし、僕自身も想像できないですけど、治療をして人としてまずは歩いてほしい」と瀧容疑者にメッセージを送っていた。
なお、ピエール瀧容疑者側への損害賠償請求についても協議中。今後、製作委員会から離脱する会社が発生した場合やエンドロールの一部差し替えなどを請求の対象とし、DVDなど劇場公開以降の二次利用についてはあらためて協議するという。