S01領域の高分解能画像が初公開
はやぶさ2は、4月5日11:36にSCIを作動させ、リュウグウ表面にクレーターを生成する計画。イジェクタが落ち着いてから、次のタッチダウンを行うことになるが、どこに着陸するかは、SCI運用後に表面を観測してから決定する。表面の状況が探査機にとって危険であると判断すれば、タッチダウンを実施しない可能性もある。
今のところ、着陸候補地点として考えられているのは、「S01」と呼ばれる20m四方の領域だ。3月6日~8日に実施した降下観測運用(DO-S01)では、高度22mまで接近、この領域を上空から観測した。安全に着陸できる場所があるかどうかは現在解析中で、1回目タッチダウンの検討時と同様に、地図を作成しているところだという。
SCIが狙うのはS01のすぐそばだが、SCIの精度はそれほど高くは無く、予測領域は3σ(約99.7%)で半径200mにもなるという。衝突体がもしS01の近くに命中すれば、S01に小惑星の内部物質が堆積するので理想的だが、離れすぎた場合には、よりクレーターの近くに変更することも検討する。
予測領域がこれほど広がってしまうのは、DCAM3と同じく、SCIにも姿勢制御機能が搭載されていないからだ。探査機の下方にバネで押し出される際、同時にスピンも加えられて姿勢を安定にするが、探査機が少しでも水平方向の速度成分を持っていれば、作動まで40分もあるので、移動した分、命中場所もズレてしまう。
垂直方向の速度については、分離時に探査機を上昇させることで、小さくしておく。ただ40分の間に重力で落下するので、SCIの作動時の高度は200~300m程度になるのではということだ。
SCIの衝突実験で何が分かるのか
SCIのサイエンスを担当する和田浩二氏(千葉工業大学惑星探査研究センター 主席研究員)は、「天体は何度も衝突を繰り返して現在の姿になった。衝突現象を理解するのは、惑星科学にとって非常に重要」と指摘。「本物の小惑星で衝突実験ができるのは、科学者からすると垂涎の的。ワクワクしている」と期待を述べた。
衝突体はいわば人工の隕石。質量と速度が分かっている物体が衝突するので、どのくらいのクレーターができるのかを調べれば、現在あるクレーターに対して、どのくらいの隕石が衝突したのか推測できるようになる。彗星に対しては米国の探査機「Deep Impact」の例があるが、小惑星に対して衝突実験を行うのは世界で初めてだ。
気になるのはリュウグウ表面の岩塊の多さだ。和田氏は「岩塊に当たる可能性も高いと考えている」とのことで、もしそうなれば、岩塊が砕けるだけで、クレーターができない可能性もある。ただ、「小惑星物質の強度が分かるので、それはそれで価値がある科学観測になる」ということだ。
どのくらいの大きさのクレーターができるのか、そしてどのくらいのイジェクタが堆積するのかは、命中した場所の状況によって大きく異なる。最も理想的なのは砂場だったときで、直径10m以上の大きなクレーターができる可能性がある。一方、粒径15cm~1.5mのガレ場だと、1m以下になると予測されている。
SCI運用の前後に予測領域の撮影を行い、ビフォーアフターの差から、生成されたクレーターを探索する。着弾位置の推定には、SCI分離時の画像や、DCAM3からの画像なども活用する予定だ。どのようなクレーターが見つかるのか、結果に注目したい。