3月17日、第68回NHK杯将棋トーナメント決勝の羽生善治九段―郷田真隆九段戦が放映され、羽生九段が勝って本棋戦11回目の優勝を果たしました。今回ベスト4に残った棋士は両者のほか森内俊之九段と丸山忠久九段で、4者とも同学年、「羽生世代」と呼ばれる棋士が頂点に集結したことが話題となりましたが、結果は世代の代表として名前が使われている羽生九段が最後に勝ち残る形となりました。
若手にも勝ち、同学年にも勝った価値ある優勝
羽生九段は加藤一二三九段との対局で現れた▲5二銀があまりにも有名な1988年度の第38回、1、2回戦を勝つと、3回戦、4回戦、準決勝、決勝でそれぞれ大山康晴十五世名人、加藤九段、谷川浩司名人(当時)、中原誠棋聖(当時)と、当時の現役名人、名人経験者4人を撃破して本棋戦初優勝。以降は第41回、第45回、第47回、第48回、第50回を制しています。
2008年度の第58回から2011年度の第61回までは4回連続優勝(※最多記録)。第61回の優勝で通算優勝回数が10回となって棋界で唯一「名誉NHK杯選手権者」の永世称号保持者となりました。第62回でも決勝まで進み、渡辺明竜王(当時)に敗れ5回連続優勝はなりませんでしたが、第58回から第61回の5勝×4回=20勝と第62回の4勝、合わせて24連勝も、もちろん本棋戦最多の記録です。
また、今回の優勝により一般棋戦(※タイトル戦ではない棋戦)の優勝回数も、大山康晴十五世名人の持つ記録44回をひとつ上回る45回とし、歴代1位となりました。
今回、一般的に若いほうが有利と言われる早指し棋戦ながら、3回戦で菅井竜也七段、4回戦で豊島将之二冠と、それぞれ王位、棋聖のタイトルを奪われた若手棋士を破っていて、記録の面から見ても、これからの勝負を見据えて、という点でも大変価値の高い優勝となりました。
最高齢タイトル保持者が34歳の渡辺明二冠、タイトル保持者全体を見ても30台前半3人、20台3人と世代交代が進んだ現在の棋界地図の中で、ファンの期待するタイトル通算100期獲りまであと1期と迫る48歳、羽生九段はどう戦っていくでしょうか。