今年4月から「働き方改革関連法」が施行され、人事制度が大きく変わろうとしています。
今回は、その中から「ホワイトカラー・エグゼンプション」の考え方を改めておさらいします。
仕事を時間以外で評価
【White Collar Exemption(ホワイトカラー・エグゼンプション)】とは、ざっくりいうと、「オフィスで働く人の労働時間を規制しない」という考え方です。
white collarは、(白い色ではなく)「白い襟」を意味し、事務職や営業職・技術職・専門職などのことを指します。ワイシャツにネクタイを締めたスーツ姿で働く姿からそう呼ばれるようになりました。また、exemptionは「(義務・法の適用などを)免除」という意味です。
日本では「原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならない」と法律で定められていますが、管理職はこの適用を免除されています。
この適用免除を他のホワイトカラーにも拡大し、代わりに成果に対して報酬を支払うという制度が「ホワイトカラー・エグゼンプション」です。
従来の裁量労働制があくまで労働時間規定を伴い、その管理を労働者に委ねる制度であるのに対し、本制度は労働時間規定そのものを除外することになり、アメリカやイギリスなどで導入されています。
誕生した背景と狙い
こうした考え方が生み出された背景には、「オフィスワークは必ずしも時間で成果が評価できない」ことがあります。5時間かけて作った企画書が、30分で作った企画書よりも10倍優れているとは限りませんよね。
しかし、時間をかければそれだけ残業代をもらえるわけですから、非効率な仕事をすればするほど給与が高くなる可能性があります。そこでホワイトカラー労働者の就業実態を制度に反映させ、労働時間に対する裁量性を高めることで、結果として労働時間が短縮できると期待され誕生しました。
分かりやすくいうと、「労働時間が長くても短くても、実際の働いた時間に関係なく『契約した労働時間分を働いた』こと」にするのです。
こうして、1人の従業員が生み出す付加価値を高め、労働生産性を向上させることが、ホワイトカラー・エグゼンプションの狙いです。
一方で「サービス残業が合法化されるのでは」という懸念が根強くあります。また、たいていの仕事はチームワークで成り立っていますから、どこまでが個人の成果なのか、見極めることはなかなか難しいものです。
高度プロフェッショナル制度
日本では2006年からこの制度が議論されてきましたが、「高度プロフェッショナル制度」として、2019年4月から導入が可能になりました。
この制度を採用すれば、厚生労働省が定める業務(金融商品の開発、金融ディーラー、アナリスト、コンサルタント、研究開発)の従事者であり、年収見込み額が1,075万円以上の労働者に対しては、労働時間規制の対象から除外することができます。
ただし、対象が非常に限られていることから効果が疑問視され、現状では導入する企業は少ないようです。