元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤氏が18日、都内で行われた映画『バイス』(4月5日公開)スペシャルトークイベントに出席した。
同作は、ジョージ・W・ブッシュ政権で、アメリカ史上最も権力を握ったといわれる副大統領ディック・チェイニーの裏側を、実話を基に描く社会派エンターテイメント。クリスチャン・ベールが約20キロの体重増量と特殊メイクでチェイニーに扮し、プランB率いるブラッド・ピットがプロデューサーとして加わった。本年度の第91回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞部門を受賞した。
クリスチャン・ベール扮するチェイニーのお面を手に登壇した堀氏は、「さすがアカデミー賞をとったメイクアップ技術。そっくりでした。ライスさんとか、あまりにも似すぎて悶絶しました」と驚きを伝え、「最近見た政治系の映画の中では一番起伏に富んでいて面白かったです」と称賛。「映画の投げかけるメッセージとしてはものすごく大切」「ジャーナリズムが窒息しそうな状況の中で、われわれは何を失ってはいけないのかという問題提起がすごくよかった」と要点を挙げ、「感情を揺さぶられるシーンが多かったので、監督含め構成はさすがだなと思いました」と感想を述べた。
司会を務めた映画評論家の松崎健夫氏は、作品見どころを振り返りつつ、「この映画の中でフェイクは重要なポイント」とし、「われわれの生活のレベルで見破れる方法。何を心得ていたらできるものなんですか?」とフェイクニュースの見極め方に話題を振る。堀氏は、「僕は極めてシンプルで」と前置きし、「自分が見た世界でさえ物語だと思っています」「物語だから、いつも『本当はどうなのかな』というのを頭の片隅に置いています。僕の話にも“僕”というフィルターがかかっている。人の話も、『なるほどね』と言いながら、『あなたも気づいていない何かがあるのでは?』と思いながら向き合っています」と明かす。
原発事故後、周囲からは「どのメディアを信じていいのか分からない。どの情報を信じればいいのか」と問われたこともあったそうで、「信じるという行為はある意味、目をつぶって手を合わせる行為。そんなのおっかなくてできないです。自分の身を無防備に委ねる。苦しいから信じたいというのは分かりますが、本当に自分の身を守るためだったら、もっと興味を持って関わってほしい」と呼びかけつつ、「だから、われわれメディアが頑張らないといけない」と自らにも言い聞かせていた。