自分のことは「私」、自分の家は「自宅」。では、自分の会社のことは何と言うのでしょうか? そこで今回は、自社を表す言葉の中から「我が社」と「当社」にフォーカスして、両者の使い分けについて解説します。
■「当社」「我が社」とは
「当社」も「我が社」も、自分の会社のことを指す言葉で、基本的に社内で使うものになります。
自社を表す言葉はほかにもありますが、「弊社」「小社」は自社をへりくだって表す謙譲語になります。また、似たような表現である「貴社」「御社」は、相手側の会社を指す尊敬語であり、いずれも、社外に向けて使う言葉になります。
社内において自社を表現するのに、尊敬語や謙譲語を用いる必要はありませんので、身内では「当社」「我が社」が妥当です。
■「当社」の使い方と例文
社内における会話であれば、「うちは」「うちの会社は」などと表現する人も多いのではないでしょうか。ちょっとした課内会議や打ち合わせ、直属の上司や同僚との会話であれば、それでも構わないでしょう。
しかしながら、「うちの会社は」という表現は、ざっくばらんと言うか少々砕けた表現に感じられます。同じ社内とはいえ、社長や役員を前にして使うのは避けた方が良いでしょう。
そんな場面では、より丁寧な表現である「当社」がおすすめです。
「当社」は、とくに何かを他社と比較して述べる場合に適しています。
例文
・A社に比べて、当社は少々後れをとっています。
・当社の売り上げが、B社を上回りました。
また、文語の場合には「我が社」よりも「当社」の方が適しています。
例文
・当社本店にハラスメントの相談窓口を設置します。
・当社就業規則第○条の規定により、減給処分とする。
・働き方改革の取り組みとして、当社では毎週水曜日をノー残業デーとします。
■「我が社」の使い方と例文
「我が」という言葉には、「親しみや誇りを感じているさまを表す」という意味があります。つまり「我が社」という言葉は、「話し手の自社に対する誇り」が含まれた表現と言えるのです。
そのため、社長や役員などの地位にある人が使うのに相応しく、若手社員が用いるのは不自然ですので注意しましょう。
例文
・今年入社した、我が社のホープを紹介しよう。
・この技術が完成すれば、我が社の強みになるだろう。
・我が社の商品が、最優秀賞を受賞した。
■社外に向けて使うケース
「当社」も「我が社」も基本的には社内で使う言葉ですが、場合によっては社外に向けて用いることもあります。
たとえば、ホームページやパンフレット、あるいはメディア対応など、不特定多数の人に向けて自社をアピールするような場合には、へりくだる必要がないことから「当社」が用いられます。
例文
・当社製品をご愛用いただき、ありがとうございます。
・○○放送にて、当社の製品が紹介されました。
・当社へのご意見・ご要望がございましたら、お寄せください。
また、相手に抗議するような場面では、相手と同等の立場にあることから尊敬語や謙譲語を用いる必要はなく、「当社」や「我が社」が適しています。
とくに、自社のプライドを傷つけられた時や何かしらの損害を受けるような場合には、「我が社」を使用することでより強い気持ちを表現することもあります。
例文
・当社としましては、この条件は到底受け入れられません。
・この件につきましては、当社顧問弁護士を通して回答致します。
・我が社のブランドイメージを著しく汚されたことに、強く抗議します。
・我が社の誇りにかけて、そのような事実は一切ありません。
今回は、自分の会社を指す表現から「我が社」「当社」についてお話ししました。ちなみに、銀行は「当行」、病院は「当院」、行政機関は「当局」など、組織を指す言葉は多数存在します。正しい使い方を覚えて、適切に使い分けましょう。