声優・アーティストとして活躍する羽多野渉のライブツアー「Wataru Hatano Live Tour 2019 -Futuristic-」東京公演が3月3日、埼玉県・大宮ソニックシティホールにて行われた。
昨年12月に発売された2ndフルアルバム『Futuristic』が冠された今回のライブで、文字通り「未来」に向かう着実な一歩を見せてくれた羽多野。今回は昼の部の模様をお届けしよう。
ライブは、アルバム『Futuristic』の1曲目を飾る「Truth For」から幕を開ける。未来的なサウンドにふさわしい、白と緑のレーザーが瞬く中、羽多野がステージ中央から登場。「『Futuristic』にようこそ! 一緒に楽しもうぜ!」と叫び、一瞬で会場を非日常の世界へ引き込む。続いてアコースティックギターの音色が特徴な「realize」をしっとりと聞かせ、「覚醒のAir」では激しさと勢いを歌声にのせた。
「みなさん、こんにちはー!」。クールな羽多野の魅力がつまった3曲が続き、興奮にざわめく会場に、一転して人なつこい羽多野の声が駆け抜ける。パフォーマンス中とのこうしたギャップも彼の魅力のひとつだろう。「みなさんの応援のおかげで、今年もライブツアーができました! ありがとう!」と、にこやかにファンへの感謝を伝えた。1stアルバム『W』はそのタイトルの通り、自己紹介的な意味合いを持たせていたが、2ndアルバムの『Futuristic』は、その先の未来をイメージして製作したという。
折しも、3月3日はアニメ『Dance with Devils』で羽多野が演じた立花リツカの誕生日。そこで『劇場版 Dance with Devils-Fortuna-』のテーマ曲であった「KING & QUEEN」を披露する。ダンサーの白い布が一瞬だけ羽多野を隠すと、次の瞬間には花束を持って登場。そのまま客席に降りていき、まさにファンと一体になって盛り上がった。続く「Mach1.67」は、ジャジーな雰囲気にのせ、スタンドマイクでセクシーなパフォーマンスを披露する。
“Futuristic”には、羽多野曰く「未来のために、過去も大事にしていく」というコンセプトが含まれている。この曲も、未来型の「Mach1.67」にすべく、ダンサーに新しい振りを付けてもらったそうで、「生まれ変わった曲を新鮮な気持ちでできました」と羽多野は笑った。
さらに遠い過去を振り返る羽多野。「ソロで音楽活動をするよりも前に、音楽の楽しさを教えてくれた現場がありました」と話したのは、倉橋トキヤというキャラクターにふんして行っていたラジオ番組のユニット、CELL DIVISIONだ。
「巷では、なになにディビジョンって流行っているんでしょ? 僕、もう10年以上前にディビジョンだったんですよ。先取りしていたんです(笑)」と冗談もまじえつつ、当時の楽曲である「SWEET DEPRESSION」をしっとりと披露した。なんと、サビには相方である佐伯カズナ(鈴木達央)のコーラスも。時を超え、2019年の羽多野によってアップデートされた名曲に、会場中が聞き入る。
歌い終わった後も、羽多野は「懐かしい!」と興奮気味だ。「歌いながら当時のことを色々思い出しました。このレコーディングは、相方のたつ……じゃなかった、カズナも一緒になって録っていて。彼はとても経験があるので、途中からカズナがディレクター席に座って僕に指示をしてね(笑)」と、当時を懐かしんでいた。続く「I Give U My…」では、スクリーンに現れた気まぐれなネコを、羽多野が追いかける。愛猫家としても知られる羽多野。その姿は愛猫「むぎ」との暮らしを思わせた。
シルバーのブルゾンから、シックなジャケットに衣装チェンジし、ライブは後半戦へ。疾走感のある「記憶の底の未来の君へ」からダンサーのパフォーマンスを挟み、曲中で羽多野がさまざまな人物を演じる「I'm a Voice Actor」で会場を盛り上げる。「この曲は、自分自身を表す楽曲のようで、大切にさせてもらっている曲の一つです。声優だけじゃなくて、どんな仕事でも当てはまると思うのですが、好きだからやり続けられるし、好きって気持ちが、一歩を踏み出す勇気になるんじゃないかなって思います」
そして、羽多野も出演した『ユーリ!!! on ICE』のテーマ曲でおなじみの「You Only Live Once」では、青と白のライトの中、クラップで会場が一つになる。本編ラストは「CAPSULE HEART」が飾った。トラップやフューチャー・ベースなど最新の音楽を取り入れた複雑な構成の楽曲に、羽多野も渾身のダンスパフォーマンスとラップを披露した。
ファンの声に後押しされ、アンコールで羽多野が再び登場。そこには、羽多野のライブでお馴染みとなった弾き語りコーナー用の、アコースティックギターが置かれていた。今回は、みんなで盛り上がる曲をあえてしっとりとアコースティックギターで聞かせるとどうなるのか、実験のつもりで「Never be too late」を披露。「毎年慣れない!」と、久々のギター演奏に不安な気持ちをのぞかせながらも、羽多野はしっかりと歌い切った。
ライブグッズの紹介コーナーでは、売り切れてしまった商品も「僕にどれだけの力があるかはわからないんですけど、僕からもスタッフさんに通販とか、お願いしてみます。楽しみに待っていてください」と、ファンへの気遣いを見せる。大きなホールにもかかわらず、どこかアットホームな空気感が漂うのは、羽多野の人柄のなせるわざかもしれない。
「ハートシグナル」でライブは再開し、次は振り付けのレクチャーが行われた「Sing and Dance!」だ。レクチャーの通り、羽多野が人差し指で客席を撃つと、ファンは声を上げながら倒れていく。また、サビではタオルを振り回し、まさに一体となって盛り上がった。
「毎週、いろいろなイベントがあるじゃないですか。そんな中、3月3日の今日、このライブを選んでくださってありがとうございます」と、最後に披露したのは「はじまりの日に」。歌詞に込められたポジティブなメッセージを、語りかけるように歌う羽多野。曲が終わると深々と客席にお辞儀をする。
「みなさんからの応援に背中を押していただいて、こんな素晴らしい、大宮ソニックシティにソロで立たせていただけることを本当にありがたく思います。みなさんからのエネルギーを、また音楽作品として返せるように頑張りますので、応援よろしくお願いします」曲が終わり、切々と感謝を伝える羽多野。ステージを去る間際まで、客席の隅から隅まで手をふり、その気持ちを届けていた。新旧の楽曲を織り交ぜ、過去の積み重ねで未来が生まれることを示してくれた今回の「Futuristic」ツアー。次はどんな未来は待っているのだろうか?