フィットビットは日本国内向けに、新型フィットネストラッカー(活動量計)の「Inspire」「Inspire HR」「Ace 2」、および新型スマートウォッチの「Versa Lite」を発表した。Ace 2のみ2019年夏より発売、他3製品は3月より発売する。
活動量計市場の縮小に伴い一時は業績不振に陥いったフィットビットだったが、2017年に「Fitbit Ionic」を皮切りにスマートウォッチ市場に参入し、2018年にはスマートウォッチ「Fitbit Versa」がヒットしたことで、かつての勢いを取り戻しつつある。同社の成長戦略を紐解きたい。
売れ筋の「Versa」の廉価モデルが登場
「Fitbit Versa Lite」は、ヒットモデル「Versa」の機能をよりシンプルにすることで、より低価格帯を狙った新製品だ。フィットビットのスマートウォッチの新たなエントリーモデルと言える。価格は2万5290円(税込)。
見た目はVersaとほぼ変わらず、アプリや文字盤のダウンロードが可能なほか、ディスプレイサイズ(1.34インチ)、バッテリ性能(4日間以上)、心拍センサ搭載などといった仕様もVersaと同じだ。
操作に用いるボタン数は減少した。従来、操作に用いられていた本体右側面にあった2つのボタンはなくなり、画面のタップやスワイプによって操作できるようになっている。
機能面で「Versa Lite」の「Versa」との大きな違いは、NFC方式のモバイル決済や内蔵音楽ストレージに対応していない点、階段昇降段数や水泳時の往復回数の計測ができない点、「Fitbit Coach」による画面上でのエクササイズ表示機能がない点だ。
これらの機能は、いざ使ってみると便利さを感じる部分ではあるが、「最初のスマートウォッチ」として使う分には、そこまで気になるものではないだろう。それよりも、価格を下げることによる入手のしやすさを重要視し、新規ユーザーを取り込もう、というのが同社の狙いだ。
ラインアップ、販売チャネル拡大で再成長を目指す
また、フィットネストラッカーの「Inspire」(1万1790円)「Inspire HR」(2万1470円)と、子供向けの「Ace 2」(1万1790円)の3モデルも新たに投入する。
Inspire、Inspire HRともに、歩数や消費カロリーの計測、ウォーキングやランニング、水泳といったアクティビティの自動認識に対応しているほか、スマートフォンからの通知も表示できる仕様となっている。バッテリはどちらも最大5日間駆動する。
両機の大きな違いは、心拍センサの有無だ。Insupire HRには心拍センサが搭載されており、常時脈拍を測定できる。これによって「睡眠の深さ」も計測できるのが特徴だ。また、Insupire HRのみ、スマートフォンのGPSを利用することで、ユーザーの歩行距離やペースを測定することもできる。
Ace 2は2018年に発売された「Fitbit Ace」の後継モデル。「子供向け」というコンセプトを前面に打ち出す。
基本機能は前モデル(Ace)と同等で、歩数や活動時間の記録、睡眠の計測が行えるほか、設定した目標(運動時間など)を達成するとお祝いメッセージが表示されるといった機能もある。
また、表示画面に「アバター」を設定できたり、ファミリーアカウントを作成すれば子供の運動量を随時確認できたりと、子どもは楽しみ、親は安心して使えるような製品とした。
ラインアップの拡充に合わせ、販売チャネルも拡大することで相乗効果を見込む。
従来、フィットビットはAmazonのほか、ビックカメラやヨドバシカメラといった家電量販店での販売をメインとしていたが、新たに「On time」などの時計店での販売も開始する。3月~4月中に、およそ150店舗に展開するとのことだ。
急成長するウェアラブルデバイス市場で勝機は?
IDCによれば、2018年第4四半期(10~12月)における世界ウェアラブルデバイスの出荷台数は、前年同期比31.4%増の5,930万台となり、これまでの四半期最高記録を更新したという。
中でも、スマートウォッチは前年同期比で55.2%成長し、全体の34.3%を占める、今後の更なる成長が見込まれる分野だ。さらには、リストバンド型端末も市場の30%を占めており、引き続き無視できない重要な分野である。
フィットビットはウェアラブル市場で全体の約6割を占める「スマートウォッチ」と「リストバンド型端末」のどちらにも強みを持つ。ウェアラブルブームの頃に比べれば主要プレイヤーは限られてきており、市場全体の成長率次第という要素は残るが、海外主導で予防医療の観点からウェアラブルに再度注目が戻るなど、兆しは見えている。今回の日本における新商品の投下、および販売チャネルの拡大は、フィットビット再成長の「のろし」となりそうだ。
(田中省伍)