昨今、副業OKな企業が増えたことにより、「確定申告」やそれにともなう「税金の計算」を初めて行うという方も増えてきているのではないでしょうか。

本稿では、そういった方へ向けて「所得税」と「贈与税」それぞれのやや特殊な事例をもとに、知っておくべき制度などを解説します。

  • 仕送りにも贈与税がかかる? (写真:マイナビニュース)

    仕送りにも贈与税がかかる?

Q. フリマアプリで得た収入は確定申告の対象になるの?

メルカリなどのフリマアプリが一般化したことで、手元にあるものを売って簡単にお小遣い稼ぎができるようになりました。しかし、「収入」が存在するときには必ず「税金」の話がついて回りますので、「フリマアプリで稼いだお金も確定申告しないといけませんか? 」という質問をよく受けます。

結論から言えば、ほとんどの方は確定申告をする必要はありません。

法律上「自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゅう器、衣服その他の資産の譲渡による所得」は非課税とされており、洋服などの生活用品を売って利益が出ても所得税がかからないこととなっているためです。

しかし、その取扱いがあるのは生活用品などを売ったときだけ。もともと売る目的で仕入れたものを売って利益が出た場合には、それはもはや商売みたいなものですから所得税の対象となります。

私の知人でも、高値がつきそうなDVDなどをブックオフなどのリサイクルショップで仕入れてフリマアプリやオークションで売っている方がいます(いわゆる「せどり」ってやつですね)が、その方には迷わず確定申告を勧めました。

ちなみにその方は、売上(フリマアプリの売上)から経費(ブックオフ等での仕入、交通費、売れ筋商品の情報代、フリマアプリの手数料など)を差し引いた金額を事業所得として確定申告をしたようです。

そういう商売の方はともかく、普通は所得税上の利益にはなりませんので、それによって扶養親族から外れるようなことはありません。ご安心下さい。

Q. 「仕送り」には贈与税がかかるの?

個人から個人へ現金や物の贈与があった場合には、贈与税の課税対象となります。贈与税というとちょっとなじみが薄いのですが、個人から何かをもらった場合には所得税と同様、毎年3月15日まで(所得税と違って2月1日からですが)に申告をしなければならない税金です。

ただ、ちょっとしたプレゼントのやりとりにまで税金がかかるのも世知辛い話ですよね。そこで法律では、「年間110万円までの贈与に関しては税金を課さない」ことにしています。

ここで気を付けないといけない点があります。例えば父親から100万円、母親から50万円をもらっているような場合。それぞれの額は110万円以下ですので税金がかからないかと思ってしまいがちですが、この110万円という基準はすべての人からもらった総額で判断します。

ですからこの場合には贈与額が150万円となり「(150万円-110万円)×10%=4万円」の贈与税がかかります。

「仕送り」も金銭の贈与に該当しますので、年間110万円を超えたら税金がかかっても良さそうなものですが、そんな話はあまり聞かないですよね。それには理由があります。

法律上、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は贈与税が非課税とされます。一般に仕送りもこの範疇に入ると考えられますので税金が課されないわけです。ただ、「通常必要と認められるもの」という縛りがありますので、あまり高額ですと税務署から指摘されてしまう可能性はあります。

Q. 親からもらった「結婚資金」には贈与税がかかるの?

仕送りに関しては法律上非課税のルールがあるとご紹介しましたが、そのほかにも親から子にまとまった金額の贈与がある場合として、「結婚式の資金」があります。これらの金額は生活費として通常必要と認められるものではありませんので、原則としては贈与税の課税対象となります。しかし、親心の表れに対してそれもまたちょっと厳しいお話ですので、現在はそこに関して特例が設けられています。

その特例は、20歳以上50歳未満の方が結婚資金に充てるために父母などから一定の贈与を受けた場合で、取り扱う金融機関を経由して税務署に「結婚・子育て資金非課税申告書」という書類を提出すれば、その贈与額のうち1,000万円(結婚式費用としては300万円)までは贈与税が非課税になるといったものです。

実際には「結婚・子育て資金非課税申告書」を贈与の日までに提出するなど細かい要件が多く設けられているのですが、これだけの金額が非課税となるのはありがたいですから検討してみる余地はありそうです。

同様の制度として「子育て資金」や「教育資金」の特例も用意されていますので、気になった方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール: 高橋 創(たかはし はじめ)

専門学校講師、会計事務所勤務を経て2009年に新宿二丁目で高橋創税理士事務所を開設。新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」、YouTube「二丁目税理士チャンネル」の運営なども行う。著書に『税務ビギナーのための税法・判例リサーチナビ』(中央経済社)、『図解いちばん親切な税金の本18-19年版』(ナツメ社)、『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』(中央経済社)など。