JR西日本が2月27日に実施した新快速「Aシート」の報道公開。3月16日のダイヤ改正に合わせ、1日2往復の新快速で有料座席サービスを提供(運行区間は野洲~姫路・網干間)する。平日は朝夕の通勤利用、土休日は外出や観光利用を意識した時刻設定だという。
現在、12両編成で運行される新快速の大半は姫路方に8両固定編成、野洲方に4両固定編成を連結し、8両・4両の編成間は行き来できないようにしている。有料座席サービスの導入にあたり、12両編成の9号車となる4両固定編成の姫路方先頭車が車両改造を受けることになり、223系1000番台のうち2編成の先頭車(「クハ222-1008」「クハ222-1007」)が新快速「Aシート」の車両となった。編成間の先頭車で乗客の通り抜けが少ないと見込まれること、トイレを設置していることなどが理由だったという。
外観は帯カラーなど新快速との連続性を表現しつつ、2015年から車両リニューアルを進めてきた特急「サンダーバード」と共通するカラーリングを取り入れ、特急列車の特別感を連想させるデザインとした。乗降ドアは片側2カ所とし、中央部にあったドアは閉鎖している。乗降ドアの戸先に黄色アクセントを施し、ドア付近に新快速「Aシート」のシンボルマークを配置。車体側面の窓回りは黒、窓下は白のラインを入れた青帯とした。
車内はリクライニング機能を備えた座席のある有料エリア、乗降ドア付近の立席エリアに分かれ、木目調デザインの客室仕切り(通路部引戸なし)を設けた。着席定員は46名。有料エリア内では通路に立っての利用は不可。中吊り広告等の掲出は予定していないという。座席は横4列(2列+2列)の配置で、座席幅は450mm。シートピッチも拡大され、特急車(970mm)と同等とされる。各座席にコンセントを設置し、座席後方に大型テーブルを備え、シートカバーの後方に乗車整理券を入れるポケットも用意。Wi-Fi装置も取り付けた。
荷物置場は連結部側の客室仕切り付近に新設している。なお、新快速が野洲行で運行される際、荷物置場の後方にある2席のうち、通路側の座席にはテーブルが用意されない。中央部の乗降ドアを閉鎖するなどの車両改造を行っているため、座席と窓の配置が一致していないところも一部ある。車両改造により、他にも床敷物の張替えや照明の電球色化、客室内吊り手の取外しなどが実施されている。立席エリアは無料で利用でき、吊り手も用意。トイレは車いす対応の洋式トイレに改良され、車いすスペースも新設している。
新快速「Aシート」は予約不要の自由席とされ、乗車券や定期券・回数券、さらに「青春18きっぷ」をはじめ新快速に乗車できるお得なきっぷ等でも利用可能とのこと。着席料金500円が別途必要で、乗車後に有料エリア内の空席に座り、係員に降車駅を伝えた上で料金を支払い、乗車整理券を受け取る方式となる。満席の場合は空席が出るまで立席エリアなどで待つ必要がある。
野洲~姫路・網干間の新快速の停車駅では、ホームの足もとに新快速「Aシート」の乗降口(△9または△4)が示され、駅の電光掲示板に「△9は有料座席A-SEAT」などと表示される。報道公開では、新快速「Aシート」の運行区間に関して、「野洲~姫路間の利用がとくに多いことから、その区間を主眼に置いて決めました」との説明も。遅延発生など異常時の運用を強化する目的もあり、新快速「Aシート」を連結した編成を「(車両基地のある)野洲または網干に入区させることで、次の列車をなるべく定時に動かすこともできます。それによって安定性も高められると思います」と話していた。
新快速「Aシート」の2編成は他の列車に使用せず、限定的な運用となる見込み。通常は1編成のみ使用し、野洲~姫路・網干間で1日2往復の運用を行う。もう1編成は予備として車両基地内に残り、日々の検査やメンテナンスも行われる。2編成を交互に運用しつつ、有料座席サービスを毎日提供できるように努めるとのことだった。
■多様なニーズに応えて「線区価値の向上」めざす
報道公開で取材に応じたJR西日本運輸部の清水誠一氏は、新快速「Aシート」を自由席としたことに関して、「新快速の特性上、事前に予約して乗るより、来た列車に気軽に乗るほうがニーズが高い。そうした特性も考慮し、自由席の形を取っています」。新快速「Aシート」の導入経緯にも触れ、「社会環境の変化にともない、女性やシニア層、インバウンドのお客様等に多数ご利用いただいています。一方、新快速を利用される際、座って快適に移動したいというニーズも高まっていました」と説明する。
JR西日本グループは中期経営計画にて「線区価値の向上」をグループ共通戦略に掲げ、近畿エリアにおいて「利便性と快適性に優れた輸送サービスの提供」に取り組むとしており、「お客様に快適なサービスを提供するという観点から導入に至りました」と清水氏。速達性・利便性などに優れ、近畿エリアの基軸をなす新快速に快適性という新たな価値を付加することで、幅広い層の多様なニーズに対応した利用しやすい輸送サービスを提供。線区価値を高め、「住みたい、行きたい」沿線づくりを進めるとしている。