佐藤天彦名人への挑戦権を争う第77期A級順位戦最終局全5局が3月1日、静岡市「浮月楼」で行われ、7勝1敗で単独トップに立っていた豊島将之二冠が久保利明九段を下してリーグ成績を8勝1敗とし、挑戦権を獲得しました。

4期目獲得目指す佐藤名人 今期も難敵迎える

豊島将之二冠

豊島二冠は現在28歳。2007年に16歳でプロデビュー、20歳となった2010年には第60期王将戦で早くもタイトル戦の舞台に立ちましたが惜しくも敗退。その後三度タイトル戦に登場するも戴冠に至りませんでした。

しかし2018年7月、第89期棋聖戦五番勝負で羽生善治棋聖(当時)を3-2で破り念願の初タイトルを獲得すると、並行して行われていた第59期王位戦七番勝負でも菅井竜也王位(当時)を4-3で破り(最終第7局は9月26、27日対局)一気に二冠となりました。今年度もっとも輝いた棋士の一人です。

嫌な相手を迎えたのは佐藤名人。両者は2011年度、いずれも六段だった時に第42回新人王戦決勝三番勝負で顔を合わせていて、その勝負は佐藤名人が2-1で制し新人王に輝きましたが、公式戦における全対戦成績を見ますと佐藤名人6勝、豊島二冠11勝と意外な差がつき、特に直近は豊島二冠の4連勝中となっています。

最高の舞台で再戦決定 第42期新人王戦決勝第3局を報じた『週刊将棋』2011年11月2日号

佐藤名人にとっての好材料は、名人戦での安定感。そして公式戦で一番長い持ち時間である9時間で行われる名人戦に対する適性でしょうか。豊島二冠は名人戦初参戦、当然9時間の持ち時間は未経験なのに対し、名人連続3期獲得の佐藤名人はこれまで17局指していて、シリーズのスコアも4-1、4-2、4-1と危なげのないものとしています。

新人王戦以来8年越し、2度目の番勝負となる両者の戦い。一昨年第75期は佐藤名人が挑戦者の稲葉陽八段を迎え撃つシリーズで、「21年ぶりの20代同士による名人戦」と話題になりました。防衛を重ねた佐藤名人は現在31歳となりましたが、「羽生世代」のいない名人戦という点においては、今期も負けず劣らずフレッシュな名人戦と言えるでしょう。

七番勝負は4月に開幕の予定です。