外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年2月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ユーロ/円 2月の推移】
2月のユーロ/円相場は124.174~126.904円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.6%の上昇(ユーロ高・円安)となった。一方でユーロ/ドルは約0.7%下落、ユーロ/ポンドは約1.8%下落するなど、ユーロ相場はマチマチの動きであった。
ドイツを中心に景気減速に対する懸念がくすぶる中、欧州中銀(ECB)が長期資金供給オペ(TLTRO)の再開を検討するなど、ユーロ安材料も少なくなかったが、世界的に株価が堅調だったことなどから、円がユーロ以上に下落した。英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitについて、「無秩序な離脱」は避けられるとの見方が広がったこともユーロを下支えたと見られる。
【ユーロ/円 3月の見通し】
ユーロ圏の景気減速懸念が根強い中、3月7日に欧州中銀(ECB)理事会が行われる。スタッフ予測の成長見通しは下方修正が濃厚だが、前回(2019年+1.7%、20年+1.7%、21年+1.5%)からの引き下げ幅がどの程度になるか注目される。同様にインフレ見通し(2019年+1.4%、20年+1.6%、21年+1.8%)の修正にも注目したい。
また、政策金利に関するフォワードガイダンスに修正があるのかといった部分や、長期資金供給オペ(TLTRO)の再開に関するアナウンスなども注目されよう。フォワードガイダンスについては、これまで政策金利を維持する期間(≒利上げに踏み切る最短時期)を「少なくとも2019年夏まで」としてきたが、足元の景況感悪化に伴い、ガイダンスを「秋まで」などへ後ずれさせるとの見方もあるようだ。
TLTRO再開についてはまだ議論の段階と見られるが、仮に再導入に前向きな見方が示されれば、市場に量的緩和復活を印象付けることになりそうだ。3月のユーロ相場は、このECB理事会がカギになると見られ、想定以上にハト派化するようならユーロ安に振れやすくなるだろう。一方で、市場はすでにECBの年内利上げはないものと見込んでいる。このため、「思ったほどハト派化しなかった」と評価されれば、ユーロ高に繋がる可能性もある。
【3月のユーロ圏注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya