CP+2019のニコンブースでは、フルサイズミラーレス用の大口径レンズ「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」の試写コーナーがもっとも人気を集めていました。F値1.0を切るとても明るいレンズで、ファインダーをのぞけば人間の目とは異なる世界が広がります。
ニコン自身が「ニコン史上最高」と自負する高性能レンズを投入する背景について、映像事業部 マーケティング統括部 UX企画部長の北岡直樹氏に話を聞きました。
Noctを作るためにZマウントを設計した
北岡氏によれば、そもそも新しいZマウントシステムは「F0.95を実現するためのもの」だといいます。大口径マウントとショートフランジバックは、この開放F値F0.95から逆算して設計されました。それもあって、NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctは技術の粋をつぎ込みつつ、光学設計には無理なく素直に設計できたそうです。
ニコンにとって、「我々の夢が全部詰まっているレンズ」と北岡氏は強調します。Noctといえば、1977年に発売された「Ai Noct Nikkor 58mm F1.2」があり、これを再現しようと試みたのがNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctだといいます。
Noctというレンズは、「ニコンの中でも伝説の1本」と北岡氏。Noctは、そうしたレンズを開発した先達に対して「恩返しという意味もあってもう一回挑戦しようと開発した」(北岡氏)そうです。フルサイズミラーレスの新しいマウントシステムを開発するにあたって、「前回のNoctと同じ58mmという焦点距離で作ってみたかった」という開発陣のモチベーションがその背景にあったようです。
Zマウントシステムでは、第1世代として「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」などのレンズを先行して発売しています。こちらは「ミラーレスは小さくないといけないので、小型化を優先した」(同)というラインアップだそう。普段の使いやすさというターゲットで開発されているため、「スペックとしては振り切っていない」(同)と北岡氏。
ただ、やはりF2.8通しの大口径ズームレンズが要望されているので、次はそれに応えつつ、さらに明るい単焦点レンズも投入する計画です。それに並行して、もっと小さくて高倍率のレンズも用意するといいます。
そうしたレンズロードマップのなかでは、やはり異色といえるNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct。北岡氏は「Zマウントシステムの大口径とショートフランジバックという特徴の大きな目的の一つは明るいレンズを作ることであり、F0.95という明るさを性能を確保しながら開発することが目標だった」といいます。
北岡氏は、このNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctを世に送り出すことによって、これまでもアピールしてきた「新次元の光学性能」と「ニコンの信頼性の高さ」を証明することができる、と胸を張ります。
NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctの光学設計はほぼ完成しているとのことで、CP+会場で試用できた同レンズは、少なくともファインダーをのぞいて見える世界は製品版とほとんど変わらないそう。現時点では、発売は年内の予定となっています。ニコンZのユーザーはもちろん、多くの写真ファンにとって気になる1本となりそうです。