• クアルコムのブースでは約40社のパートナーが集まり5Gのローンチパーティーも盛大に開催されました

2019年のMWCに出展する企業の中で最も気を吐いていたのはアメリカの半導体メーカーであるクアルコムかもしれません。同社の5G関連のチップセットやその他のソリューションがMWCに出展する各社に採用されたため、至るところでSoCのブランドネームである「Snapdragon(スナップドラゴン)」の名前を見かけたからです。

いまからちょうど2年前に、バルセロナでMWC2017が開催された頃は、まだ5Gの実用化時期が到来する頃合いが2020年になるだろうと言われていました。しかし結果としては、北米や欧州の一部地域、オーストラリアに韓国、中国などの国々で徐々に商用を前提としたサービスが2019年から前倒しして始まることになりました。日本でも、プレ商用サービスが2019年秋に開始される予定です。

  • 5G一色で大いに賑わうクアルコムのブース

5G対応スマホ、実機が多数展示

今回のMWCでファーウェイソニーLGエレクトロニクスOPPOなど、多数のメーカーが「5G対応スマホ」を発表しました。

5G対応スマホの発表ができた背景には、クアルコムが開発したモバイル向けの5G対応プラットフォーム「Snapdragon 855 Mobile Platform」SoCと、5G対応のモデムIC「X50 5G」、そして5Gのミリ波方式による高速・大容量・低遅延のデータ通信を実現するアンテナモジュール、「QTM052」が出そろったことが、大きな要因の一つとして挙げられます。

  • マルチモードに対応した5Gモデムチップ「X55 5G」

それぞれを組み込んだ5G対応スマホは、従来の4G LTEの技術と高い互換性を持つ6GHz以下の低周波帯域を使うSub-6帯による5Gのマルチギガビット通信のほか、4G以下のマルチモードをカバーできる実用性の高い端末になります。

5G対応をうたうデバイスには、高速・大容量・低遅延のデータ通信による本当のメリットをコンシューマーが享受できるよう、ミリ波をサポートすることが不可欠であると唱えてきたクアルコム。モバイル端末向けのソリューションを有言実行できたことで、2019年のMWCでは「5G is Here(5Gがやってきた)」と胸を張って声高にアピールしているというわけです。

  • 最新のSnapdragon 855 Mobile Platformを搭載した各社の5Gスマホが展示されました

  • ソニーも5G対応の試作機を出展

クアルコムは今年もMWCのメインホールに大きなブースを構えています。展示の最前列には「Snapdragon 855 Mobile Platform」をはじめとする、同社の5Gソリューションをいち早く採用したスマホメーカー7社(シャオミ/ZTE/ソニー/LGエレクトロニクス/OPPO/OnePlus ※展示の並び順)が、エリクソン、ノキアが会場に基地局施設を仮設した5G通信環境を使って、来たるべき5G時代に実用化されるであろうクラウドコンピューティングを活かしたスマホゲーミング、高精細な動画ストリーミング視聴など各ユースケースのデモンストレーションを披露していました。

5G統合チップを新発表、「5Gパソコン」も来る!?

クアルコムはMWC19の開催に合わせて複数のプレスリリースを発表しました。その中で特に注目したい話題をいくつかピックアップしたいと思います。

  • クアルコムの記者会見では現在は別々のSoCとモデム、アンテナを統合した5G対応のSnapdragonの開発が発表されました

ひとつはモバイル向けの5GソリューションICチップを統合した新しいSnapdragonの発表です。先ほど触れたとおり、現在はそれぞれが別のチップセットになっているSoCとモデム、ミリ波対応のアンテナが一つになったICチップが出てくるということです。

スマホなどの端末にとっては製造コスト、およびICチップを実装する面積の効率化が図れるため大きなメリットがもたらされると言ってよいでしょう。

クアルコムはSnapdragonの名称(“855”のような)はまだ明らかにしていないものの、その統合ICチップは「2020年前半に発売が開始される商用端末のために、2019年の6月までにサンプル出荷を開始する」と発表しています。

5Gパソコンは2019年中にレノボから

もうひとつは「5G対応パソコン」の実現に向けたクアルコムの提案です。同社は昨年の12月にモバイル通信ネットワークに常時接続ができるPC向けの新しいプラットフォームとして「Snapdragon 8cx Compute Platform」を発表しています。

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  • コネクテッドPC向けの5Gソリューションも積極展開

これに5G対応の最新モデムである「X55 5G」を加えた「Snapdragon 8cx 5G」プラットフォームを載せたモバイルPCが、2019年に発売されるだろいうという見通しを示しています。クアルコムがMWCの会場で実施したプレスカンファレンスではレノボが「5G対応PC」を現在開発していることも明らかにされました。

  • レノボが製品の開発を進めているそうです

そしてもうひとつが、モバイルネットワークに常時接続できるコネクテッドカー向けの「Snapdragon Automotie 4G/5G Platform」です。

自動車を“コネクテッド”にして、車と交通インフラや人、車どうしによる通信をつなぐセルラーV2X(Vehicle to Everything)を実現するためのSoCやマルチモードモデムなどが、これに含まれます。

自動車の開発はモバイル端末に比べて長い期間を必要とするため、2021年に生産される自動車に向けて、今年から4G/5Gのプラットフォームがクアルコムからサンプル出荷されるそうです。

  • オートモーティブについても4G/5G通信によるコネクテッドソリューションをクアルコムが支えます

MWCの開催初日にブースで実施されたイベントには、世界の主要な端末メーカー、インフラ・通信事業社が40社近く集まり、華やかに5Gのローンチを祝福していました。まさに5G一色と言える今年のMWCの会場でも、クアルコムは特にその出展の内容も含めて強い存在感を放っていたと筆者も感じた次第です。

  • ホーム用固定ルーターにも5Gが展開するようクアルコムがリファレンスデザインを発表しました