高見泰地叡王への挑戦権を争う第4期叡王戦挑戦者決定三番勝負第3局の永瀬拓矢七段―菅井竜也七段戦が2月22日、東京都渋谷区「将棋会館」で行われ、永瀬七段が勝って成績を2-1とし、自身3度目となるタイトル挑戦権を獲得しました。優位に立っても決して勝ちを急がず、持ち前の「負けない手」でジリジリと引き離す、永瀬七段の個性的な指し回しが光ったシリーズでした。
「爆発力」の高見叡王vs「負けない将棋」の永瀬七段で七番勝負!
永瀬七段が初めてタイトル戦の舞台に立ったのは2016年度、第87期棋聖戦五番勝負でのこと。羽生善治棋聖(当時)を相手に第3局まで○●○とタイトル獲得まであと1勝と迫りましたが、第4局、第5局に敗れて初戴冠を逃しました。2度目の挑戦となった2017年度、第43期棋王戦五番勝負も、渡辺明棋王を相手に第4局まで●○●○のタイとし最終局を迎えましたが第5局に敗れています。
竜王戦ランキング戦では最高クラスの1組に所属、また順位戦も今期B級2組ですでに昇級を決めていて、来期はA級のひとつ下であるB級1組への参戦が決まっている永瀬七段。わずかのところでタイトルに手が届かずにいますが、実力はすでにトップクラスと言えましょう。今年度成績も27勝9敗[0.750]と申し分ありません。これまでのタイトル戦はいずれも五番勝負でしたが、初となる七番勝負で「三度目の正直」となるでしょうか。
迎え撃つ高見叡王は今年度初めに叡王を獲得後、公式戦で1勝を挙げたあとは3連敗→4連勝→3連敗→3連勝→2連敗→3連勝と、かなり波のある星を残しています。しかしながら前半の貯金がものを言い、今年度成績は21勝11敗[0.656]と大きな勝ち越しとしています。連勝連敗の繰り返しは不安定にも見えますが、「爆発力」の裏返しとも言えます。もっとも、本戦でトップ棋士を次々と倒し、七番勝負も4-0と圧倒した前期叡王戦でその点は証明済みです。
好勝負が期待されますが、現時点での戦前予想は「保留」とさせていただきます。なぜなら、叡王戦七番勝負は[第1局・第2局][第3局・第4局][第5局・第6局][第7局]で持ち時間が変動するという勝負自体を左右しかねない大きな特徴があるのですが、第何局がどの持ち時間で指されるのかがまだ決まっていないためです。
3月14日に東京都港区「ニコファーレ」で行われる第4期叡王戦決勝七番勝負発表会で第1局の先後を決める振り駒が行われ(※第2局以降は順番に先手を持ち合い、第7局が指される場合は再び振り駒が行われます)、先手となった棋士が[第1局・第2局]の持ち時間を1時間、3時間、5時間の中から選び、後手となった棋士が残り2種類の中から[第3局・第4局]の持ち時間を選びます。[第5局・第6局]は選ばれなかった残り1種類の持ち時間となり、七番勝負が[第7局]までもつれ込んだ場合には持ち時間6時間で指されると決められています。
ちなみにこの方式が将棋界で初めて採用された前期第3期では、[第1局・第2局]が5時間、[第3局・第4局]が3時間、[第5局・第6局]が1時間と決まりましたが、七番勝負が高見叡王の4-0で終了したため、持ち時間1時間での対局は行われませんでした。
このルールを味方にするのは? そして七番勝負を制するのはどちらでしょうか。