久保王将に渡辺明棋王が挑戦する第68期王将戦第4局が2月24日から25日にかけて、沖縄県那覇市「琉球新報本社ビル」で行われ、後手の渡辺棋王が96手で勝ち、通算成績を4勝0敗として王将位を奪取しました。
本局は三間飛車から藤井システムに組んだ久保王将に対し、積極的な攻勢を取った渡辺棋王が一日目から形勢をリードすると緩みなく一気に押し切る展開で、最近の渡辺棋王の充実ぶりが如実に現れた完勝でした。
本局を含め、第1局から4局を通して渡辺棋王はピンチらしいピンチがほとんどなく、圧巻のタイトル奪取となりました。
タイトル戦の七番勝負が4-0というスコアで終わることはさほど多くありません。王将戦では2004年度に羽生二冠(当時)が達成して以来14年ぶりのことです。紙一重の差でしのぎを削るトッププロの中でもその頂点を争う戦いがタイトル戦ですので、そこまでスコアが偏ることは起こりづらいのです。4-0で決着するということは、その棋士が圧倒的に充実していることの証明でもあります。そこで本稿では、七番勝負のタイトル戦が4-0で決着した例を調べてみました。
将棋七番勝負を4-0で制した事例を検証
将棋タイトル戦のうち、七番勝負で行われるのは竜王戦、名人戦、王位戦、王将戦に加え、昨期新たにタイトル戦に名を連ねた叡王戦の5棋戦。70年を超える歴史の中で七番勝負は250回ほど行われてきました。そのうち、4-0のストレートで決着したのは40回。その内訳を見てみましょう。
- 羽生善治 11回
- 大山康晴 7回
- 中原 誠 5回
- 渡辺 明 3回(←2月25日更新)
- 谷川浩司 3回
- 高橋道雄 3回
- 森内俊之 2回
- 木村義雄 1回
- 南 芳一 1回
- 米長邦雄 1回
- 藤井 猛 1回
- 島 朗 1回
- 高見泰地 1回
やはり歴史を刻んだ第一人者である羽生、大山、中原は圧倒的な実績を上げていることがわかります。3回目の4-0ストレート決着を達成した渡辺二冠は、歴代の偉人たちにまた一歩近づいたといえそうです。