既にニュースでお知らせしている通り、ファーウェイがMWC19 Barcelonaで5G対応の折りたたみスマホ「Mate X」や、ノートPC「MateBook X Pro」など新製品を発表しました。

これからファーウェイはスマホとPCの市場をどのような戦略で切り開いていくのでしょうか。日本市場での考え方について、華為技術日本株式会社の呉波氏が日本人記者によるグループインタビューに答えました。

  • 華為技術日本株式会社 ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏

インタビューの会場に呉氏が持参した「Mate X」の実機に触れる機会が得られたので、簡単にインプレッションをお伝えしたいと思います。前日の発表会ではガラスケースに入れられており、実機に触れることができませんでした。

  • ファーウェイがMWC19 Barcelonaで発表した「Mate X」

  • 背面にカメラを搭載。ディスプレイを開くと背面側はシェルケースになっています

ファーウェイのブースでは、自由にタッチ&トライができる展示もなかったため、今回実機に触れることができたのは、大変貴重な機会となりました。

本体を手に持ってみるととても軽く、開いた状態だと8インチのパネルがかなりスリムであることがよくわかります。一度ヒンジを展開するとガタつく様子は一切なく、堅牢性はしっかりと確保されているようです。パネルは閉じた後、勝手に開いてしまわないようにロックをかけられる機構になっています。

  • とてもスリムな筐体に仕上がっています

  • 右手親指の位置あたりにあるボタンをクリックしてロックを解除します

ヒンジ部分は特許技術を含む100を超えるコンポーネントで構成されています。動かしてみるとカタカタっとした手応えが返ってきます。可動部分は硬すぎず緩すぎず。展開するとスクリーン側もフラットになります。

  • 閉じた状態

  • 本体を開くときにカチカチとした手応えが跳ね返ってきます

ヒンジの部分にわずかに凹凸があるようにも見えましたが、今回触れられた実機はプロトタイプなので、商品化の際にはきれいに仕上げてくるものと思います。パネルの反応はきびきびとしていて、当たり前ですが普通のスマホと同じ感覚でした。

折りたたむと、本体の前後をディスプレイがぐるっとラッピングしたようなデザインになります。加速度センサーが内蔵されていて、本体の傾き方向を検知して「上」に向いているディスプレイ側だけがアクティブになる仕様です。

  • インタビューに答える呉波氏

ーー MWC19で発表した各新製品は日本でも販売されますか。

呉波氏(以下敬称略):今日の時点で明確なことは言えませんが、ただいま世界的に販売計画を練っているところです。日本では近々、PC製品の発表会を行なう予定なのでぜひご注目ください。

ーー ファーウェイのブランドイメージも良いものにしながら、日本でどのように販売を強化していきますか。

呉:PCはこれまでの主な販路経路はBtoCです。2019年も同様に推移するとみていますが、その後はBtoBのパートナー獲得にも注力していきます。日本市場のスマホの展開も最初はSIMロックフリーの端末から始めて、現在は大手通信キャリアに取り扱っていただいています。

同じような成功モデルをPCでも築きたいと考えています。お客様の声に耳を傾けつつ、クチコミの評価を高めていくことに重きを置いています。

また低価格戦略をやみくもに取らないことも大切です。なぜならその結果は良い方向に向かわないと思うからです。日本市場のルールに従いながら着実に顧客を増やしていきたいと思います。

ファーウェイは先進技術を柔軟に、いち早く取り込んできたブランドとして認知を獲得しつつあると思います。これからも地道に築き上げてきたブランドイメージを大切にしていくつもりです。

ーー PCは現在のラインナップで十分だと思いますか。

呉:PCは新製品のサイクルが年に1回だけではないということは私たちも理解しています。今後ご期待くださいとは申し上げておきたい。

ーー 現在ファーウェイのPCの主力は2in1からクラムシェルへ移行しています。これはなぜでしょうか。

呉:日本のノートPC市場はいま年間約1,000万台ですが、内訳はクラムシェルがメインです。比率はグローバルの動向もかわりません。いま必然的にリソースをクラムシェルに集中させていますが、2in1をやめたわけではないので、今後も定期的に出していきたいと考えています。ただ、正直なところ、2in1は今後ハードとソフトの両方で革新的な進化が求められると思っています。

技術の進展を見ると、年内にはさまざまなメーカーから新しい2in1のデバイスが出てくると思っています。2019年は2in1のPCが盛り上がる1年になるでしょう。

そこではモバイルの技術が2in1に応用されると見ています。広義には新しいMate Xも一種の2in1ですよね。クラウドPCの技術をはじめ、5G高速・大容量通信、3Dゲーミングなどを取り込んでエキサイティングなものになるでしょう。

ーー そう考えるとファーウェイのノートPCにLTE通信機能が入っていないことが不思議に思います。

呉:その件は今後のイノベーティブな進化に含まれています。業界もニーズを見ながら変化を起こしているところだと思います。

ーー たとえばファーウェイのSoC「Kirin」を使ったWindows PCもありえるのでしょうか。

呉:現時点ではコメントできませんが、先ほどから申し上げているように各メーカーから新しい製品が今後出てくると思っています。ベースの技術は共通しているので、これをベースに新しい市場が生まれるかもしれません。

ーー ファーウェイのパソコンはもっと軽くなってほしいという声はありますか。

呉:それは日本を含めて世界各国からあります。他社と遜色ないレベルにまでなっていますが、それでも1kgはある。より軽く、薄くするというニーズは絶えずあるものです。

ーー 薄く軽くすることはパフォーマンスとのトレードオフでもあるのでしょうか。

呉:弊社が言うところのユーザーエクスペリエンスはUI、ハードウェア、UXを総合的に良くすることだと思っています。ラップトップの中で1番強力で速いのはゲーミング用PCですが、とても大きくて重いものです。消費者が実際にどうやって使うか、用途と目的によって最良の製品のあり方は変わります。

ーー PCとスマホを連携させる「Huawei Share」は他社製品でも利用できるようになりそうですか。

呉:技術的には端末のWi-Fi/Bluetooth/NFCを全て使って高速伝送を実現しています。なので、もし他社製品がHuawei Shareを支えているのであれば、使える可能性は十分にあるかもしれません。

ーー 日本市場におけるファーウェイ製PCのポジションをどう見ていますか。

呉:もちろん現状に満足してしまい、前に進まないということはありません。販売数は前年比で伸びていますが、お客様からの声、メディアの評価を良いものにするために力を入れていきたいと思います。販路はこれまでも一気に広げてきたわけではないので、今後も着実に拡大していくつもりです。店頭展示には引き続き力を入れていきます。

ーー 日本では秋には楽天も携帯通信事業に参入を控えています。ファーウェイはどのように対応していきますか。

呉:2019年は日本のスマホ市場のターニングポイントになる年とみています。5Gのインパクトは、かつて人々がフィーチャーフォンからスマホに乗り換えた時と同等だと考えるからです。

弊社にとっても新しいチャンスが訪れる時だと思いますし、弊社に限らず皆がこの変化に注目していると思います。この機会にコンシューマからの信頼を勝ち取って、ブランドのポジションを盤石なものにしたいと考えています。

そこでは、グローバル市場で成果を納めてきたファーウェイのブランド戦略が活きてくると思います。「NPS/Net Promoter Score」(顧客の継続的な利用意向を指標化したもの)を重視ながら高めていくという戦略もあります。

ーー 今回のスマホは高価な端末ですが興味を持つ人々が触れる機会をどう確保しますか。

呉:Mate Xについては現時点で明確な販売戦略を申し上げられません。5Gネットワークに対応するスマホなので、日本の5Gの商品化とタイミングが合わないかもしれません。ぜひ日本の通信事業者には5Gサービスの導入を早めてほしいですね。

ひとつ細かい話題を申し上げますが、5Gの標準化についてはNSA(Non-Stand Alone)方式とSA(Stand Alone)方式があり、いまのところアメリカと日本だけがNSA方式、ほかの大部分の5Gを進める地域がSA方式を進めています。

NSAからSAへのアップグレードに対応している5G対応のスマホは、ファーウェイのMate Xだけであることを強調しておきたいと思います。もし5GネットワークがNSAからSAにアップグレードした時に、端末がアップグレードできない仕様では通信ができないということになりかねません。

  • ファーウェイが開催した新製品発表会にて。Mate Xが搭載するモデムBalong 5000が5GのNSA/SAネットワーク方式の両方と互換性を確保していることをアピールしていました

ーー いまファーウェイの商品開発に日本市場からのフィードバックは活かされていますか。

呉:はい。お客様の声を取り入れるための仕組みはもう確立しています。日本法人が築いた仕組みを手本に、ほかの地域の現地法人にも採用して、ファーウェイ全体として良い形になっています。現在では日本だけでなく、ほかの国々のフィードバックが商品開発にも柔軟に活かされています。