計測機器を使って現場を一周するだけで測量完了
ICT機器を使うメリットは効率化だ。山口土木のキーマンの一人である専務は松尾氏が使用しているGNSS機よりも高度な機種を使う事によって、民間からの受注に対し現場で話を聞きながら要所要所で測量を行い、データを会社に持ち帰って図面化をするという。
これによって「依頼者から話を聞きながら現場を一周する際に要所要所でGNSS機を操作するだけで測量作業が終わり」見積もりは半日もあればできるようになった。
現場監督も図面と作業のズレをチェックするのに3D CADデータと杭ナビを使い一人でも照合できる。必要に応じて明日の作業のイメージを掴む、発注者とのやり取りにVRを使う事で発注者や現場作業員に完成形のイメージを伝えることが可能となる。これらの相乗効果によって現在工期を3割削減することができたという。
一方、現場で使う機器には頑丈さが求められる。従来はDELLでない他社製品を使っていたが、現場で3D図面のビューワーソフトがホワイトアウトする不具合が出たほか「汚れても流水で丸洗いを『推奨していない』」という問題があったという。
展示会で「DELLのRugged PCならば松尾さんの要求に応えられるかも」という紹介を受けてテストしたところ、CPUスペックが高いためホワイトアウトする問題も発生せず「現場で汚れても流水で洗っても問題ない」という。
もともとDELLのRugged PCは米軍で使っても問題のないMIL SPECを満たしているが、能書きではなく現場レベルの過酷さに耐えるのは絶対条件だろう。ディスプレイは1000nittと明るく直射日光下でも視認性がよく、タッチパネルは手袋の上からでも反応する。「タッチペンも収納場所がよく絶妙な作り(松尾氏)」という。
実際の現場の声では出ていなかったがRugged PCシリーズはホットスワップ可能なデュアルバッテリーとなっており、片方ずつ交換すれば作業を止めることなく継続利用が可能だ。
「今のRugged PCに対して不満点は?」と松尾氏に伺ってみると「(外付け)GPUがない事」と即座に返答された。現時点では現場監督者のRugged PCで3D CADのデータ閲覧はできるものの編集が行えない。Rugged PCでVR利用も出来ないのが不満点のようだ(そのため、現場用にバックパックにゲーミングPCとWindows Mixed Realityヘッドセットを用意している)。
一方、今回の取材でDELLの担当者が持ち込んだノートタイプのRugged PCに関しては「(タブレットと同様のタフさならば)現場から戻ってきた作業員が日報を入力したり、資材の在庫管理に使えそうだ」と関心を示していた。
今後に関して期待している技術は5Gで、飛躍的に通信速度が速くなるなら現場PCはシンクライアントでもよいと考えているようだ。では現行の演算もクラウド利用すればよいと思ったのだが、松尾氏はSaaSを想定しているようで「クラウドだと結果だけで、それが正しいのかわからない」と返答していた。
会社としての次のフェーズは「従業員を増やしてさらにレベルアップ」を考えているという。愛知県岡崎市と言う会社の立地ゆえに「若い子は(作業環境も給与水準もよい)トヨタに行ってしまう(松尾氏)」。生産性の高い現場を作り、高い売り上げを背景に給与水準を引き上げることによって土木工事という職業でも若い人材を引き付けられると考えているようだ。