今回のテーマは「売り掛け」と「買い掛け」です。経理に携わっている人であれば知っていて当然の用語ですが、何のことやら分からない人も多いのではないでしょうか。
そこで本稿では、売り掛け、買い掛けとは何なのか、事例を挙げてわかりやすく解説します。
「売り掛け」「買い掛け」とは
売り掛け(うりかけ)、買い掛け(かいかけ)ともに、掛け取り引きで使われる言葉です。掛け取り引きとは、商品の引き渡し時には代金を支払わず、後日支払いを行う商取引のことで、「信用取り引き」や「ツケ」とも呼ばれるものです。
掛けで売った代金の未回収分が売り掛けであり、掛けで買った代金の未払い分が買い掛けになります。
売り掛けや買い掛けが発生する具体例
売り掛け、買い掛けについて、具体的な例を挙げてお話ししましょう。例えば、ラーメン店は毎月何度も製麺所から麺を仕入れます。
その時、都度代金を支払えばいいのですが、そうなると、お互いに毎回「領収証の授受」などの経理上の手間が発生し、仕入れ時点ではお金が用意できない場合もあり、双方にとってスマートなやり方とはいえません。
そこで一般的に、「1カ月分をまとめて請求し、後日まとめて支払う」という掛け取り引きが行われます。
具体的には、製麺所は、毎月1日~末日までに売った麺代を月末で締めて、1カ月分の請求書を発行します。ラーメン店は、1カ月分の麺代の請求書を受け取り、その代金を約束の支払期日(翌月末など)までにまとめて支払います。
この時、その請求額は、麺を売った製麺所にとっては「売掛金」、麺を買ったラーメン店にとっては「買掛金」と表現されます。
もう一つ例を挙げてみましょう。ラーメン店の換気設備が故障したのでメーカーに修理を依頼したところ、修理可能なレベルではなかったため、結局新しい換気設備と交換することに。
出張費や技術料、製品代などで6万円を請求されましたが、現金の手持ちがなかったため、後日振り込むことにしたとします。この場合、ラーメン店が実際に支払いを済ませるまでの間、ラーメン店には6万円の買掛金が、メーカーには6万円の売掛金が発生することになります。
このように、売り掛けか買い掛けかは、自分が売る側か買う側かで違ってきます。
もしも、製麺所のご主人がここのラーメンを定期的にツケで食べに来ていたとするならば、そのラーメン代に関しては、ラーメン店にとっては売掛金、製麺所のご主人にとっては買掛金になりますね。
会話での「売掛金」「買掛金」の取り違いに注意
ビジネスシーンでは、「先月の売掛金についてお伺いしたいのですが」という電話がかかってくることがよくあります。しかし、この表現だけでは、「A社が先月売ったもの」とも取れますし、「先月御社がA社に売ったもの」という意味にも取れます。
前者の意味であれば当社の買掛金になりますが、後者であれば当社の売掛金についてのお話ということになります。
このような電話を受けた場合には、どちらにとっての売掛金か、どちらが請求した分についてなのか、きちんと確認した方が良いでしょう。
今回は「売り掛け」と「買い掛け」の違いについてお話ししましたが、お分かりいただけたでしょうか。会計用語であるために、少々難しい表現に聞こえるかもしれませんが、意味としては至って単純であり、両者の違いも明確です。
会計用語とはいえ、どんな部署でも知っておくべき基本的なビジネス用語になりますので、しっかり覚えておきましょう。