MVNOサービス「mineo(マイネオ)」を展開するケイ・オプティコムは、同社の事業説明会にて、ユーザーとの共創に取り組む「アンバサダー制度」や、新端末として「iPhone SE」を発売することを明らかにした。
「格安スマホ」をキャッチフレーズに大手キャリアからユーザーを奪ってきたMVNOだが、市場環境の変化により伸び悩みつつある。その中で、生き残りをかけた差別化戦略に「ファンとの結びつきを強化する」を掲げたことが、mineoのユニークな点だ。
100万回線を突破後、伸び悩みに直面した理由
mineoの契約数は2018年4月に100万回線の大台を突破し、国内MVNO市場でのシェアは4位(2018年9月末、総務省調べ)を維持しているものの、2018年後半から伸び悩みつつある。
mineoは、その背景に顧客の「マジョリティ化」があると指摘する。
当初、MVNOのユーザーはリテラシーの高い層が大半を占めたが、最近は「設定を人に頼る層」が増えているという。そのため、大手キャリアのような手厚いサポート体制がないMVNOは、伸び悩み始めたというわけだ。
だが、MVNOの多くはサポートや店舗展開にコストをかけないことで「格安」を実現してきた。大手キャリア並みのサービスを求めるユーザーが増えていけば、安さだけで売り続けることは難しくなる。
さらに2019年は、総務省で進められる「端末と回線の分離」議論、「第4のキャリア」楽天のMNO(移動体通信事業者)参入による競争激化、ドコモが予定する料金値下げといった動きがあり、MVNOはますます厳しい状況に追い込まれることが必至だ。mineoは「先の見えない体力勝負の競争環境に突入する」と身構える。
ここでmineoが差別化戦略として打ち出したのが、ユーザーとの結びつきをさらに強め、事業運営にまで門戸を開く「アンバサダー制度」だ。
アンバサダー制度でユーザーが事業に参加
数あるMVNOの中でも、mineoはコミュニティサイトを中心としたファンが多いことでも知られている。それをさらに強化した「アンバサダー制度」では、ユーザーが実際の事業運営に関わることができるという。
たとえば「共創アンバサダー」は、一般には公開されない重要情報にアクセスしながら、サービス開発の議論に参加できるという。特別な報酬はないが、mineoが好きなユーザーにとっては、自分で操縦桿を握れるかのような魅力がありそうだ。
「サポートアンバサダー」は、初心者ユーザーとビデオチャットで対話しながらスマホ設定などをサポートできる。トラブル防止のためモザイク処理や録画などの対策を施しつつ、サポート実績に基づいたインセンティブを提供する。
ほかにも、友達紹介のアンバサダーにも電子マネーのインセンティブを提供。音声通話とデータ通信を1000円で試せる「お試しコース」を新設し、気に入ればそのまま月額プランに移行できるようにするなど、新規ユーザーを取り込む施策を次々と打ち出した。
根強い人気の「iPhone SE」を投下
mineoの半分を占めるというiPhoneユーザーへのアピールも欠かさない。2018年12月に「iPhone 8」を発売して以降、mineoの端末販売でiPhoneの割合が増えているという。そこで、mineoは新端末として「iPhone SE」の取り扱いを開始する。やや古いモデルだが、アップルによる販売終了を惜しむ声も多い人気モデルだ。
実は、mineoのような独立系MVNOにとってiPhoneの取り扱いは容易ではない。販売台数などの面で、アップルとの直接取引はできないとされているからだ。だが大手キャリア系列のMVNOは事情が異なり、キャリアと共同調達したiPhoneを販売できる。
このまま放っておけば、買い換えのタイミングでiPhoneユーザーが流れてしまうのは必至だ。そこでmineoはさまざまなルートを模索し、メーカー認定の整備品や国内流通在庫とみられる新品を取り扱ってきた。今回のiPhone SEはカナダ版の新品を調達できたのだという。
大手キャリアのサブブランドや系列MVNOが勢いを増している中で、独立系MVNOとしてmineoはあの手この手でユーザーをつなぎとめる構えだ。市場環境の大きな変化が予想される2019年だが、再び勢いを取り戻せるか注目したい。
(山口健太)