デジタル一眼を持ってロケ撮影や旅行に出かける際、撮影データのバックアップや確認用にノートパソコンを持っていく人は多いと思います。しかし、「旅行に持って行くには大きく重いのでじゃまになる」「パソコンがあると仕事っぽくなっちゃう」と感じている人も多いのではないでしょうか?

そこで注目したいのが、旅のお供に新しいiPad Proを持っていくこと。USB Type-C接続に対応したことで、高画素カメラで撮影した写真も待たされることなく取り込めるほか、カメラの充電もできます。アプリ側の対応も進んでおり、パソコンと同等の高性能な現像やレタッチができるようになりました。

そこで、日本中を撮影している三井公一カメラマンにiPad Proを携行してもらい、泊まりがけのロケ撮影での実用性や利便性を試してもらいました。

  • ロケ撮影や旅行に出かける際は、ノートPCではなくiPad Proのほうが便利だ

    iPad Pro 12.9インチモデルと、今回使用した「ニコン Z 6」、「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」、「マウントアダプター FTZ」、「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM」。ノートPCがなくなると、これほどコンパクトな機材で本格的なロケに臨める

電車内では撮影の準備や諸連絡に活躍

静岡県内の各地に赴いてさまざまな被写体を撮ることになったので、12.9インチの新型iPad Proをロケに持ち出してみました。大事な撮影データの確認やバックアップがしっかりできるかはもちろん、さまざまな情報のチェックに役立つかどうかが気になるポイントといえます。

まずは、最寄り駅から小田急ロマンスカーに乗って小田原駅に向かいます。早朝だったので、朝日が時折鋭く車内に差し込んできました。それでも、iPad ProのLiquid Retinaディスプレイは十分に明るく、撮影の香盤表や資料を見やすく写し出してくれました。12.9インチパネルは大きく精細なので一覧性にも長け、数日にわたる撮影のイメージを現場に到着するまでに頭にたたき込めました。

ただ、この12.9インチのiPad Pro、座席のアームレストから出るテーブルには大きすぎてうまく安定して設置できませんでした。最前列の座席だったので、正面にあったスペースに置いてメールなどを書くことに。Smart Keyboard Folioの装着時は、iPad Proの大きさと同等の底面積が必要になるため、テーブルが小さいと苦労しそうです。

  • 小田急ロマンスカー「EXE」でのカット。アームレスト内蔵のテーブルは、iPad Pro 12.9インチモデルにはいささか小さすぎました。最前列だったので、正面にあったスペースに置いて使用

Smart Keyboard Folioは背面も保護できるようになり、キーをタイプした際の感触も前モデルよりわずかながら向上している印象を受けました。ただ、一般的なクラムシェル形状のノートPCと比べると、膝の上でのタイピングはやはり得意ではないようです。

小田原駅からは東海道新幹線に乗り換えです。グリーン車だったのでテーブルにもしっかりと収まり、快適なタイピングができました。車内にはWi-Fiもありますが、LTEの電波のつかみも良好で、高速移動中の車内でもクライアントとしっかりとコミュニケーションができるのが好印象でした。

  • 東海道新幹線のグリーン車ではテーブルにちゃんと置くことができました。安定性に欠ける膝の上とは違って、タイピングも問題なしです

写真の確認やバックアップに活躍

静岡に到着したあとは、さまざまなロケ地で1日中撮影をしました。使用したカメラは、2018年のベストカメラに選んだ「ニコン Z 6」です。このカメラのいいところは、「SnapBridge」というアプリをインストールしたiPad Proと接続すれば、ワイヤレス接続でさまざまな付加機能が使えることです。

今回、撮影したデータをワイヤレスで自動的にiPad Proへ転送するように設定したので、撮影中でもiPad Proの大画面でクライアントに撮影カットのチェックをしてもらえました。自動転送時はデータサイズが2Mに縮小されるものの、内容や構図、ピントのチェックまでしっかりとでき、問題はありませんでした。

宿に着いてからは、その日に撮影したRAWデータを含む実サイズのJPEGデータをバックアップします。iPad Proは、最大1TBの大容量モデルも用意しているので、数日のロケでも容量不足を気にせず取り込めるのが頼もしいと感じました。

ニコン Z 6は、記録メディアにXQDカードを使用しているので、USB type-C接続のカードリーダーを接続してiPad Proにデータを取り込みました。多くのカットを撮影したのですが、あっという間に読み込みが終了したのには驚きました。iPad ProがUSB type-Cに対応したメリットを感じさせた一幕でした。

  • 「SnapBridge」でのニコン Z 6との常時接続は快適そのものでした。RAWを含む実サイズのJPEGデータは、宿に帰ってからカードリーダーで取り込みます。高速な読み込みスピードには思わずビックリ

レタッチの作業はPCよりも快適

定番の現像ソフトのiPad版「Adobe Lightroom CC」に撮影データを読み込めば、さまざまな処理がパソコンなしで行えますが、パソコンにはない魅力がApple Pencilの存在。写り込んでしまった不要なものを消したり、マスキングなどをする際も、追従性が高く細かいコントロールが可能なApple Pencilのおかげで、意図した通りに作業できるのが痛快でした。ササッとレタッチを施してクラウドストレージにアップロードして、急ぎの納品は終了しました。

  • 「Adobe Lightroom CC」でApple Pencilを使ったところ、マスクも意図した通りにかけられ、作業が捗りました

  • すこぶるデキのよいApple Pencilの存在が、iPad Proの魅力を高めていると感じます。従来よりも充電方法がスマートになったのも好ましいと感じます

このように、iPad Proはロケ撮影や旅行で頼りになるデバイスだということを実感できました。キビキビとした高速な動作、広大で見やすく精細なディスプレイ、容量不足を感じずに済む大容量メモリー、デジタルカメラとの常時接続、使いやすいApple Pencil、安定した高速通信と、ストレスや不足を感じる要素はほぼありませんでした。長文の文字入力をする必要がなければSmart Keyboard Folioを持ち歩く必要はなく、荷物の重さをさらに抑えられる点も好印象です。

唯一、電車内などではやや大きくハンドリングが悪いと感じたことがありましたので、携帯性を重視するならば11インチモデルをチョイスするのもよいでしょう。個人的には、iPad Proの性能を8インチサイズに凝縮したiPad mini Proが出てほしいのですが(笑)。