NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)の第8回「敵は幾万」が24日に放送された。1912年開催のストックホルム五輪大会に日本人として初参加することになった金栗四三(中村勘九郎)たち一行は、いよいよストックホルムへ向かう。このたび、四三と共に、オリンピックに初挑戦する三島弥彦役を演じた生田斗真を直撃。中村勘九郎との絆が大いに深まったというストックホルムロケの感想や、役作りについて聞いた。
オリンピックの渡航費がまさかの実費と聞いて頭を抱えていた四三だったが、頼みの綱だった兄・実次(中村獅童)が、故郷から大金を持ってやってきた。どうやら春野スヤ(綾瀬はるか)の働きかけで資金を得られたようだが、四三の壮行会が開かれる頃、スヤは熊本で嫁入りをするらしい。四三が「敵は幾万」の歌に包まれ、いよいよストックホルムへ向かうべくシベリア鉄道に乗り込むと、弥彦の名を呼ぶ女中・シマ(杉咲花)の声がした。
イケメン、金持ち、俊足という天から二物も三物も与えられた三島弥彦役は、生田にぴったりの役どころ。宮藤官九郎作品では「土竜の唄」シリーズで主演を務めていた生田だが、「宮藤さんと一緒に仕事をすると、必ず服を脱がされるんです。まさか大河でも脱がされるなんて」と笑った。
■長期のトレーニングで走りに変化
――弥彦は短距離選手ということで、どんな役作りをされましたか?
まずは説得力のある身体作りと、短距離では日本で一番速かった方なので、走り方のトレーニングをかなり長い期間をかけてやりました。三島さんが走っている映像はなく、写真が数枚残っている程度だったので、それを基に、筑波大学のみなさんが三島さんの走りを研究してくださったんです。その走り方の勉強とトレーニングをやりました。体感的には風を感じるようになったから、かなり速くなったのではないかと。
――どのくらい前からトレーニングをされていたのですか?
昨年の4~5月から撮影が始まって、トレーニングはもっと前からしていたので、ストックホルムの地に立ってトラックを踏みしめた時は、「この時のために一生懸命頑張ってきたんだな」という思いになりました。
でも、僕が走り方を教えてもらった方は、オリンピックにも出場するような選手の方で、その方が「オリンピックって4年に1回と言われるけど、短距離選手の場合は、4年にたった10秒しかない。その10秒のために、ずっとトレーニングを続けているんです」とおっしゃっていたのが印象的で。そこには、僕たちでは計り知れないプレッシャーやそこに懸ける想いがあるんだろうなと改めて思いました。
■実際のスタジアムでの撮影で本当に出場した気持ちに
――ストックホルムでのロケはいかがでしたか?
ストックホルム・オリンピックは、『いだてん』の1つの目玉とも言えるので、実際にストックホルムで撮影できて本当に良かったです。100年前、本当に使われていたスタジアムで、当時、三島さんや金栗さんが走ったトラックを走れたことは、何ものにも代えがたいくらいに貴重な経験でした。
本当に2人で出場したかのような気持ちにさせてくれる壮大な撮影だったので、僕らも物語の世界に紛れ込んだような気持ちになれました。日本に帰ってきてからも「夢のような時間だった」と、よく勘九郎さんと2人で話しています。
■ストックホルムロケで芽生えた勘九郎との絆
――ロケの合間に観光などはできましたか?
ストックホルムではスケジュール的にも余裕があり、撮影は朝9時、10時くらいに始まり、夕方6時には必ず終わりました。毎日勘九郎くんと夜ご飯を共にし、空き時間も一緒に美術館を回ったり、買い物に出かけたりできたので、ストックホルムでたくさんの絆が芽生えた気がします。
――中村勘九郎さんと今回がっつり共演してみた感想も聞かせてください。
やっぱりいい俳優さんだなと思います。普段は歌舞伎俳優として第一線で活躍されているけど、映像作品でもいいんだと。細かな心の揺らぎとかが本当に上手だと思って見ていますし、横にいて頼りになる相棒だなとも思っています。
金栗さんと三島さんは、たった2人で世界に戦いを挑んだわけで、彼らの第一歩が日本にとって大きい一歩となったから、本当に太い絆で結ばれていたんだろうなと。でも、僕と勘九郎さんも、今回の撮影を経て、お二人のように強い絆で結ばれたなと思っています。
生田斗真(いくたとうま)
1984年10月7日生まれ、北海道出身。1996年からジャニーズJr.として活動し、NHK連続テレビ小説『あぐり』で俳優デビュー。ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07)、『魔女裁判』(09)、TBS『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(15)など多数のドラマに出演。映画は『人間失格』(10)、『ハナミズキ』(10)、『源氏物語 千年の謎』(11)、『土竜の唄』シリーズ(14、16)、『彼らが本気で編むときは、』(17)、『友罪』(18)などで主演を務めた。3月から主演舞台の劇団☆新感線『偽義経冥界歌』がスタート。
山崎伸子
フリーライター、時々編集者、毎日呑兵衛。エリア情報誌、映画雑誌、映画サイトの編集者を経てフリーに。映画やドラマのインタビューやコラムを中心に執筆。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』、好きな俳優はブラッド・ピット。好きな監督は、クリストファー・ノーラン、ウディ・アレン、岩井俊二、宮崎駿、黒沢清、中村義洋。ドラマは朝ドラと大河をマスト視聴。
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