NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)のチーフ演出を務める井上剛氏が、自身が演出を手掛けた24日放送の第8回「敵は幾万」を前にインタビューに応じ、今回の見どころや撮影裏話を語った。
このドラマは、日本が初参加した1912年のストックホルム五輪から1964年の東京五輪までの知られざる歴史を、ユーモアを交えて描く意欲作。前半で主演を務める中村勘九郎が、日本でオリンピックに初参加したマラソン選手・金栗四三役を、中盤から主演をバトンタッチする阿部サダヲが、1964年の東京オリンピック招致に活躍した田畑政治役を演じる。
24日放送の第8回「敵は幾万」は、オリンピックに向けて金栗四三(中村勘九郎)と三島弥彦(生田斗真)がストックホルムに旅立つ回。井上氏は「お金がない四三と、家族に相手にされない弥彦が、その問題を解決して旅立つのですが、一つのピークだと思います。感動する回になっていると思います」と自信をのぞかせ、「壮行会のように送り出されますが、こういう風景がこのドラマで何回も出てきます。戦争のときは別の風景に見えたり、伏線にもなっていて、そういうところも歴史ドラマとして楽しんでいただけたら」と語った。
そして、新橋駅での三島弥彦と家族とのシーンについて「生田斗真が圧巻です。白石加代子さんも非常にいいと思います」と、弥彦役の生田と弥彦の母・和歌子役の白石を絶賛。このシーンが三島家のメンバーが集まった初日に撮影されたことも明かし、「“お母さん”と呼ぶのも最初で、“息子”と思うのも最初。それでも感動的です。本当の母のように。役者ってすごいなって思いましたね。やれちゃうんだと」と、井上氏自身も2人の演技に驚かされたようだ。
この新橋駅のシーンは、昨年7月に炎天下で撮影されたもの。「(衣装の)フロックコートは本当に重くて暑い。エキストラも200人くらいいて、夏だったのでみんな水分の補給をしながら、少しでも時間があったら日陰に入ったりしていました」と振り返り、「現場の熱気に役者さんも背中を押されたようなシーンだったと思います。熱気はこのドラマで大きな要素なので」と語った。
四三と、上京してきた兄・実次(中村獅童)とのシーンも今回の見どころ。熊本では基本的に和服を着ている実次が、上京の際は洋装していることに、井上氏は「衣装合わせのときにたまたま思いついて、洋装してもらったら非常に可愛いなと思いまして。田舎の人がめいっぱい見栄を張って出てくる感じが可愛いなと思ってこの扮装にしました」と説明した。
そして、「この2人がそろうとすごいですね。僕らは“歌舞伎ブラザーズ”って呼んでいるんですけど、なかなかです。独特の間や楽しさ、悲しさが生まれます」と、四三役の勘九郎と兄・実次役の獅童を称賛し、「2人で語らうシーンがあるんですけど、兄弟ならではのいい感じだと思います」とアピールした。
井上剛(いのうえつよし)
熊本県出身のテレビディレクター、演出家。2013年に連続テレビ小説『あまちゃん』でチーフ演出を務め、東京ドラマアウォード2013 演出賞を受賞。2017年、『トットてれび』で第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。大河ドラマの演出は『利家とまつ~加賀百万石物語~』に続いて2本目だが、チーフ演出は初となった。
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