毎年、年末に政府は翌年度の税制改正事項を発表します。その後審議を経て、翌年の6月ごろに施行されます。今まではほぼそのまま施行されてきましたが、翌年の予算成立を前提としていて、必ず実現されるものではありませんので、気になる制度改正はその後の動きをチェックしていましょう。
平成30年の暮れに発表された「平成31年度税制大綱」には「次世代住宅ポイント制度」が盛り込まれています。詳細は今後明らかにされる部分もありますが、どのような制度なのか大枠を確認してみましょう。
「次世代住宅ポイント制度」の概要
「次世代住宅ポイント制度」の目的は、「2019年10月の消費税引き上げに備え、良質な住宅ストックの形成に資する住宅投資の喚起を通じて、税率引き上げ前後の需要変動の平準化を図るため」(国土交通省)とされています。税率10%の際に、一定の性能を有する住宅を取得する方に対して、様々な商品と交換できるポイントが発行されます。
対象となる新築住宅・リフォーム
「環境」「安全・安心」「健康長寿・高齢者対応」「子育て支援、働き方改革」に資する住宅の新築・リフォームが対象となります。それぞれの日程的要件は次の通りですが、別途建物の性能に対する細かな条件設定もありますので、詳細は国土交通省のHPを確認ください。
注文住宅の新築
2019年4月1日より2020年3月31日までに締結された工事請負契約が対象です。2018年12月21日以降に工事請負契約が締結されていても、建築の着工が2019年10月1日以降のものは対象となります。建築の着工は2020年3月31日まで、引き渡しは2019年10月1日以降が条件です。
新築分譲住宅の購入
2018年12月21日より2020年3月31日までに締結された工事請負契約が対象です。建築の着工は2020年3月31日まで、引き渡しは2019年10月1日以降が条件です。なお売買契約は、2018年12月21日より2020年3月31日までに締結されたものが対象となります。
完成済み購入タイプの新築住宅の場合は、2018年12月20日までに建築基準法に基づく完了検査の検査済み証が発行されたもので、2018年12月21日から2019年12月20日までに締結された売買契約が対象となります。引き渡しは2019年10月1日以降が対象です。
リフォーム
2019年4月1日より2020年3月31日までに締結された工事請負契約が対象です。2018年12月21日以降に工事請負契約が締結されていても、着工が2019年10月1日以降のものは対象となります。2020年3月31日までに着工され、2019年10月1日以降の引き渡しが条件です。
発行ポイント数
発行ポイントは、新築住宅、住宅のリフォームで下記の表のとおりです。住宅リフォームについては、若者・子育て世代や既存住宅購入と同時にリフォームを行う時など、別途優遇措置があります(注釈参照)。
ポイント交換の方法
ポイントの商品交換申請は2019年10月から開始の見込みです。申請は複数回に分けて行うことも可能です。交換商品は次のような商品が選定される予定です。
・省エネ・環境配慮に優れた商品
・防災関連商品
・健康関連商品
・家事負担軽減に資する商品
・子育て関連商品
・地域振興に資する商品
申請方法と期限
ポイント発行申請は、原則工事完了後となりますが、工事完了前であっても必要な書類が整えば申請可能です。ただし工事完了後に完了報告書が必要となります。2019年6月ごろから申請可能となる見込みです。
必要書類は新築・リフォーム、工事完了後・工事完了前、申請する設備や機能などによって異なります。建物所有者の申請が原則ですが、分譲業者や建築請負業者が代理申請することも可能です。参考に注文住宅の工事完了後の申請で、バリアフリー住宅、一定の性能を有する住宅、家事負担軽減に資する設備を有する住宅の場合の必要書類は以下の通りです。
・工事請負契約書
・建築基準法に基づく「検査済み証」の写し
・工事施工者が発行する工事証明書(指定の様式)
・住民票の写し(申請者のみ)
・代理申請の場合→代理申請者の確認事項(運転免許証の写し等)
・一定の性能を有する住宅の場合→本制度の対象であることを証明する住宅証明書の写し
・家事負担軽減に資する設備を有する住宅の場合→対象工事内容等に応じた性能を証明する書類
以前の日本の住まいは耐用年数が短く、地球環境保全の意味合いからも問題が多くありました。長年政府は耐用年数の向上のために、一般的な住まいに対する優遇措置の他に、性能の良い住まいに対してはさらなる優遇制度を設けてきました。
耐用年数が20数年であれば、自ら取得した住まいを自分たちの代で建て替えることも多かったのですが、もはや住まいは生涯使い続けるものであり、さらには次世代に引き継ぎ、次世代の負担軽減を図る時代です。
家事負担を軽減し、夫婦で働き続けることも期待されている制度のようです。働き方は個人の自由ですが、住まいを長く使い続けることは、非常に重要だと思います。
いつも述べていることですが、生涯設計からすると、長く使い続けられなければその分経済的リスクは高くなります。また、グローバル化が進む中、日本の若者だけが住まいの取得に多大な費用を費やすリスクは、計り知れなく大きいものがあると考えています。できれば次世代にも使い続けられる住まいの取得と維持管理やリフォームを考えたいものです。
■著者プロフィール: 佐藤章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。