モスバーガーのモスフードサービスが、AIセルフレジの実証実験をスタートさせた。人手不足を背景として新しい接客の形を模索する中で生まれたAIセルフレジを、神奈川県・関内にある実験店舗に体験しに行った。

  • モスバーガーのAIセルフレジの実力は?

    AIセルフレジの実証実験が行われているモスバーガー 関内店

今回の実証実験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「AI システム共同開発支援事業」の一環として開発されたAIセルフレジを利用。同社直営店の1つである「モスバーガー 関内店」に設置して実証実験が行われている。実験期間は2月15日から27日まで。19日までは13~15時まで、20日以降は11~15時までAIセルフレジは稼働している。

  • 店内に設置されたAIセルフレジ

AIセルフレジは関内店の入口を入ってすぐに1台設置されており、大型ディスプレイとクレジットカード/電子マネーリーダーとキャッシャーが設置。ディスプレイ上部にはカメラ、その脇にはマイクも配置されている。

  • 大型ディスプレイにタッチして注文する

  • 上部のカメラで人の顔を検出し、属性を取得する

利用するには、レジの前に立って画面に表示された店内か持ち帰りかを選び、メニューにタッチするかたち。音声での注文にも対応している。

  • まずは店内か持ち帰りかを選択。下のアイコンからは音声注文が選べる。画面の横にあるのがマイク

ポイントとなるのは、カメラで利用客の顔を捉えて性別、年代、表情などを読み取って、その属性にあわせたメニュー表示などを行うという点。若い男性なら肉が多めのメニューなどを先頭には位置したメニュー表示をするほか、画面下部の広告表示も切り替える。注文確定時には、「お勧め」メニューも表示するが、これも注文内容や属性を踏まえて切り替える。

音声注文では、ハンバーガーや飲み物などの名称を声で言って注文できる。さらに、「野菜系のメニューは? 」などといった質問に対しても、「モス野菜バーガー」「こだわり野菜サラダS」といったメニューを提示してくれる。幅広いメニューを提供するモスだけに、こうした提案によって新メニューの発見や新たな注文に繋がる可能性もありそうだ。

  • 最後に支払いをしたら番号札を渡されるので、席で待てばいい

今回は実験だけに、既存のPOSとは連携せず、これまでの売上データも利用していないという。属性ごとに切り替えるメニューは予測して設定されているが、注文が増えればデータが蓄積され、AIが自動的に判断してメニューを変化させる可能性がある。そうした結果の収集も実験の目的のひとつだ。

音声での注文は、騒音の強い店内ということで、感度やノイズ処理など、まだ課題がありそうな印象ではあった。そうした部分も含めての実験ということで、とりあえず試してみると面白い。

タッチ操作も受け付けるので、音声で失敗してもタッチ操作で手早く注文もできる。最終的な支払いは、クレジットカードや交通系電子マネーなどに加え、現金での支払いにも対応。モスバーガーのキャッシュレス決済比率は数%程度とのことで、現金払いが多いことから、現金もサポートしたらしい。

注文自体は、タッチパネルですいすい行える。注文に悩んでも、背後に並んでいなければ、注文に迷っても店員を待たせてしまうこともないので、ゆっくりと注文できるというメリットもある。支払後は、通常の注文のように、あとは番号札を受け取って席で待っていればいい。

モスバーガーでは、セミセルフレジの試験導入を開始しており、来期から本格導入の予定。完全セルフレジも導入に向けた検討を行っており、今回のAIセルフレジは、それをさらに押し進めるものだが、現時点では「AIは何者なのか、というサンプリング」(同社担当者)の段階だという。

単に注文をしてもらうだけなら、AIを導入する必要はあまりない。それに対して、利用客の購入体験を改善させることができれば、それは人手不足の対策というだけではない、新たな接客の形に繋がる可能性がある。

そうした大きな目標を持ちつつ、まずは実験を行うことで、AIセルフレジの有効性を確認したい考えだ。