1月末から2月頭にかけて、通信会社各社の決算会見が開催された。

電機メーカーなどが中国経済の失速に足を引っ張られる中、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクとも堅調な数字を叩き出した。

KDDIは通信ARPA収入が325億円下落したが、これは2017年にスタートした料金プラン「auピタットプラン・auフラットプラン」の影響が出た模様だ。割引キャンペーンなどがひと段落すれば、通信ARPAは第4四半期には持ち直す見込みだ。

値下げ率先したドコモと、一転して追従姿勢のKDDI

ただ、KDDIとソフトバンクの両社が懸念しているのが、2019年第1四半期に実施されるというNTTドコモの料金値下げだ。

昨年8月に菅官房長官が「日本の携帯電話料金は国際的に見ても高い。4割程度、値下げできるのではないか」と発言。NTTドコモは官邸からの圧力により、2019年第1四半期に2〜4割の値下げを実行すると発表した。すべてのユーザーが対象にはならないようだが、NTTドコモでは4000億円規模の顧客還元になると試算する。

KDDIの高橋誠社長は当初、「官邸からの宿題は終えている」として、値下げは実施済みで、すでに3800億円程度の還元をしているとアピールしていた。しかし、NTTドコモの発表を受けて「NTTドコモが踏み込んだ値下げをしてくるのであれば、競争上、しっかりと対抗していく」との意向を示した

KDDIの高橋誠社長

KDDIではすでに端末と通信料金を分離し、端末の割引を適用しない「auピタットプラン・auフラットプラン」を導入している。NTTドコモが同様のプランを導入する程度であれば、対抗策は打たないが、さらに安くなるような料金プランを出してくるのであれば、しっかりと対抗値下げで競争していくと宣言したのだ。

ソフトバンクは「値下げはワイモバイルで対応済み」の姿勢

一方、ソフトバンクは、現在、ソフトバンクとワイモバイル、LINEモバイルという3つのブランドを展開している。

ソフトバンクは、月間50GBで動画やSNSが見放題となる「ウルトラギガモンスター+」がメイン。ワイモバイルはS、M、Lというデータ容量で低価格、LINEモバイルは家電量販店やウェブを中心に安価なプランを売っていくという棲み分けになっている。

そのため、ソフトバンクでは、大容量を安心して使いたい人向けにウルトラギガモンスター+を訴求しつつ、「格安スマホが気になる」という人にはワイモバイルやLINEモバイルを売っていくというスタイルになっている。

宮内謙社長は「NTTドコモの値下げにはワイモバイルで対抗していく」として、ウルトラギガモンスター+は値下げすることなく、ワイモバイルがNTTドコモの対抗軸として据えていくようだ。

ソフトバンクの宮内謙・代表取締役社長執行役員兼CEO

宮内社長は「できれば、(ワイモバイルの料金プランを)微調整で乗り切りたい」とも語っており、NTTドコモの値下げには対抗するが、極力、いまの料金体系を変更することなく、戦っていきたいようだ。

値下げ議論が「春商戦」に影響か

毎年2〜3月は、スマホ業界的には「春商戦」と言われ、1年間で最もスマホが売れる時期とされている。

春は進学や進級、就職など学生や新社会人にとって、スマホデビューするには最適な時期だ。各キャリアともそうした顧客を狙って「学割キャンペーン」を展開している。学生だけでなく、家族もまとめて契約すれば、さらにお得な施策を展開するキャリアもある。そのため、毎年、この時期のキャリアショップは家族づれで賑わっているのだ。

しかし、今年は店頭で異変が起きている。

あるキャリアショップ関係者は「今年は例年に比べて売り上げが落ちている。買い控えが起きているようだ」と愚痴をこぼす。なぜ、買い控えが起きているのか。

「お客さんはみんなNTTドコモが値下げをすると知っている。値下げ内容を見てから、機種変更しようか、他社に乗り換えようか判断するつもりのようだ」(キャリアショップ関係者)

NTTドコモでは2019年第1四半期に値下げの発表、実施をするとしている。同社、吉澤和弘社長は決算会見で「値下げの発表と実施は一緒のタイミングではない。第1四半期の前半で発表を行い、後半でスタートする」とコメントしている。

NTTドコモの吉澤和弘社長

つまり、今年の4月上旬に発表が行われ、6月あたりに開始という線が濃厚だ。

実際、あるドコモショップ関係者は「4月、5月は暇になりそうだから、その2ヶ月のうちに休みを増やしておけという通達があった。一方で6月は休めそうもないから覚悟しておけということだった」とささやく。

おそらく、NTTドコモの値下げがスタートするタイミングで、料金プラン変更や機種変更、料金相談などでドコモショップが大混雑するという見立てなのだろう。それだけ、インパクトのある中身になる可能性が高いというわけだ。

ドコモショップだけでなく、KDDIやソフトバンクの社長も恐れるNTTドコモの値下げ。果たして、本当に2〜4割も料金が下がると期待していいのだろうか。

(石川温)