時折、明らかに目上の人に向かって「私もご一緒します」と言っている人を見かけることがあります。一見すると「します」という表現が丁寧語にあたり、自分がへりくだる謙譲語ではないと感じる人もいるかもしれません。

目上の人と「ご一緒」するときに用いるべきふさわしい表現とは何でしょうか。本稿で詳しく見ていきましょう。

  • 目上の人に「ご一緒します」はNG! - 正しい表現は?【ビジネス用語】(写真:マイナビニュース)

    「部長、ご一緒します!」はNGなの?

「ご一緒します」は謙譲語

「ご一緒する」のは自分ですから、目上の人に対しては、自分がへりくだることで相手を立てる謙譲語を使う必要があります。ではこの「ご一緒します」という表現は謙譲語なのでしょうか? 結論から先にお伝えすると「Yes」です。

文化審議会による「敬語の指針」における謙譲語の説明箇所には以下のような記述があります。

「『訪ねる→伺う』のように特定の語形(特定形)による場合と『お(ご)……する』(例:届ける→お届けする,案内する→御案内する)のように広くいろいろな語に適用できる一般的な語形(一般形)を使う場合とがある」

「ご一緒します」という表現は、この後者の「お(ご)……する」というパターンにおける謙譲語と考えられます。

目上のとランチを「ご一緒」するときに適した返答は?

普段からあまり敬語を用いていない人だと、この「ご一緒」の後に続く文言に頭を抱えてしまうかもしれません。ここでは、上司などの目上の人に対する回答パターンをいくつかご紹介します。

ご一緒させていただきます

「する」の謙譲語である「させていただく」を用いた「ご一緒させていただきます」という表現は、最もへりくだった返答と言えるでしょう。

ただこの「~させていただく」という表現は、敬語として「誤り」とする見解があります。確かに、二重敬語という誤った使い方をする人が多いのも事実ですが、すべてが「誤り」と否定されるものではありません。

文化庁は「~させていただく」という表現は

  • 「相手側または第三者の許可を受けて行う場合」
  • 「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合」

という2つの条件をどの程度満たすかによって、適切か否かが決まってくるとの見解を示しています。

仮に上司から「今日、一緒にランチでもどうだ」などと誘われたら、組織における社会通念上、おごってもらえることが想像できます。つまり、「ご一緒」することで「恩恵を受ける」事実が発生するわけですから

「ぜひご一緒させていただきます」
「お言葉に甘えて今日のお昼はご一緒させていただけますか」

などの返答をしても差し支えないでしょう。

ご一緒させてください

「ご一緒させてください」は「ご一緒させていただきます」の語尾の部分をより砕けた言い方にしたものです。「ご一緒させていただきます」まではいかなくとも、「ご一緒させてください」でも十分畏まった感じは伝わるため、目上の人に対して使用して問題ありません。

「ご一緒いたします」と「ご一緒させていただきます」の使い分け

たとえば、部長から「来週の研究発表会、あと1人参加できるんだが、きみも一緒に行かないか?」と誘われたら、「はい、ご一緒させていただきます」と返答するのが正解です。

「ご一緒させていただきます」を使う際のポイントとなるのは「許可と恩恵」です。この場合、「私も参加してよろしいのですか」という許可と、「参加することで勉強になる」という恩恵を受けられます。

「ご一緒いたします」でも間違いではありませんが、部長としては好意で誘っているのであって、「どうしても来てほしい」とお願いしているわけではありません。このような状況では、より謙遜の意味を込めて、「ご一緒させていただきます」とする方が適切と言えるでしょう。

ただし、「きみも一緒に来なさい」と言われたのであれば、上司からの命令ですから、「はい、ご一緒いたします」が適切ですね。

「喜んで」をプラスするとGOOD

「ご一緒いたします」「ご一緒させていただきます」という表現だけでは、「本当は嫌なんじゃないか」と疑念を抱いてしまう上司もいるかもしれません。そのような状況で行動を共にするのは、よくありませんね。そんなとき、「喜んで」というフレーズを文頭に付け加えることで、「誘ってもらって嬉しい」「ぜひ一緒に行きたい」という気持ちを表現でき、相手に良い印象を与えられます。

目上の人に対して「ご一緒します」は間違いではない! 敬語を正しく理解しよう

ビジネスシーンにおける会話は、多くの敬語で成り立っていると言っても過言ではありません。はじめから完璧に使いこなすことは難しいかもしれませんが、誤った敬語でビジネスチャンスを逃してしまうことのないよう、一つひとつ知識を積み重ねていきましょう。