上司に「お客さまからのアンケートを集計して、イシューを特定しよう」と言われたけど、「イシュー」っていったい何のこと? そこで今回は、ビジネス用語「イシュー」の意味と使い方について解説します。

  • イシューの意味を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    イシューの意味を理解していますか?

イシューの意味

「イシュー」とは、「課題」「問題点」「論点」などを意味する英語【issue】から来たカタカナ用語です。

ビジネスシーンでは、主に「課題」「問題」「議論すべきテーマ」という意味で使われることが多く、すでに浮上している問題点というよりは、これから何に取り組むべきか、何について論じるべきなのか……、今後の課題や論点を指す言葉になります。

「イシュー」と「プロブレム」の違い

イシューの意味の一つに「問題」とありましたが、「問題」といえば「プロブレム【problem】」を想像する人も多いでしょう。確かに、和訳では同じ意味を持つため混同されがちですが、ビジネスシーンにおけるイシューとプロブレムには、明確な違いがあるのです。

前述のとおり、イシューは、これから何に取り組むべきか、何について論じるべきなのか、未来に向けた課題を指しているのに対し、プロブレムは、現状すでに浮上している問題点・課題を対象としています。

例えば、配送業において「お客さまから預かった荷物を紛失してしまった」のは早急に解決しなければならないプロブレムです。しかし、「無駄な配送時間削減のために、効率のよい集配ルートや集配方法を確立しよう」というのはこれからの課題ですから、イシューです。

もう一つ例を挙げると、「掃除機のバッテリーから発火した」のはプロブレムですが、「現状30分しか持続しない吸引力を、1時間持つようにする」というのはイシューになりますね。

このように、トラブルともいえる困った問題がプロブレムであるのに対し、まだまだ改善の余地がある、向上できる前向きな問題がイシューになります。

イシューの使い方と例文

ビジネスには、常に、改善できること・向上できること(イシュー)があって、それをクリアしながら、会社は成長していくものです。

お客さまや従業員の声に耳を傾け、今、会社にとって重要なイシューとは何か、何について議論すべきなのか、その論点やテーマとなるイシューを見定めることを、ビジネスシーンでは「イシューの特定」といいます。

イシューを特定するには、当然のことながら、各部門の代表が集まって会議を開くことになるわけですが、一般的に、日本のビジネスパーソンは、会議に時間を割くことを嫌う傾向にあります。

事実、時間の無駄だと思う仕事として最も多く挙げられる業務が「会議」です。しかしながら、イシューの特定は、会社の成長に欠かせない重要な作業です。決して、形だけの会議で済ませていいものではありません。

もし、おざなりな議論で的外れなイシューを掲げてしまえば、その後の議論も作業も全てが的外れな方向へと向かってしまいます。それほど無駄な仕事はありませんね。

かの経営学者ピーター・ドラッカーも、「重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、役に立たないものはない」という名言を残しています。

じっくりと意見を出し合った末に、会社にとってプラスとなる的確なイシューを特定するようにしましょう。

  • 生産性アップのためのイシューについて、意見を出し合いましょう。
  • 売り上げを伸ばすには、イシューの特定が急務だ。
  • 明日までに、新プロジェクトのイシューを特定しよう。

もう一つ覚えておきたいのが、「クリティカルイシュー」という言葉です。クリティカルとは、「重要な」「危機的な」という意味です。つまり、クリティカルイシューとは「重要課題」を意味し、イシューの中でも特に重要度の高い問題を指す時に用いられる言葉になります。

  • この案件は、クリティカルイシューとして早急に議論するべきだ。
  • クリティカルイシューの解決に向けて、チームを結成する。

経営学における枠組みとイシューの役割

経営学では、イシューと同様に「枠組み」というものが重視されます。いくら的確なイシューを特定できたとしても、その後の議論がしっかりと進められなければ意味がありませんね。そこで、「枠組み」が重要になってきます。

たとえば、時代の変化とともに主力事業が行き詰まってきていることを受けて、経営会議において「新規事業への参入を検討してみてはどうか」という意見が挙がったとします。 そこで、「新規事業に参入すべきか否か。また、参入するのであればどのような事業にするべきか」というイシューが掲げられたとします。

イシューを特定した後は、具体的な議論を行うわけですが、「主力事業の現状(損益)」「新規事業に参入した場合のメリット・デメリット」「参入可能な事業」といったように、具体的な論点をある程度決めておくことが重要です。これが「枠組み」です。

イシューという最終課題・問題をクリアするために、一つひとつ議論を重ねて解いていく小さな課題といったところでしょうか。

予め、今回議論すべき枠組みを提示しておき、その枠組みについてのみ意見を出してもらうよう進行すれば、論点がぶれるのを防ぐことができるでしょう。

もしも枠組みなしで進めれば、「新規事業に参入するよりも、うちの部門にもっと費用を回してくれれば」「早期退職希望者を募った方がいいんじゃないの?」などと話が本筋からそれてしまったり、いつの間にか雑談になったりしてる……なんてことになりかねません。

イシューを確定した後は、必ず、明確な枠組みを設定するようにしましょう。

イシューを使った英語例文

It ’s important to identify an accurate issue.
的確なイシューを特定することが重要です。

We must identify the issue immediately.
我々は、早急にイシューを特定しなければならない。

Let's talk about an issue for the labor circumstances improvement.
労働環境改善に向けたイシューについて話し合いましょう。


今回は「イシュー」についてお話ししました。イシューは、自分や企業にとってプラスとなる非常に前向きな議論と言えます。

「商品やサービスの質はこれが限界」「労働環境や仕事の進め方に改善の余地はない」と思っていては前に進めません。常に向上することを意識しながら働いてみると、いいイシューが見つかるかもしれませんね。