2月10日、千葉県・幕張メッセにおいて国際的なガレージキットの祭典「ワンダーフェスティバル2019[冬]」が開催された。プロアマ問わず、自らが腕によりをかけて制作した造形物「ガレージキット」を展示・販売するイベントで、毎回多くの来場者で賑わう。

イベントには、液晶ペンタブレットや3Dプリンター、3DCGソフトなど、ガレージキット制作に関連するツールを開発する企業も多数ブースを出展しており、なかには最先端のデジタル原型シーンを紹介する講演が行われているところも。ここでは、そのうち「デジタル原型ステージ」で行われた、ピクシブの「キャラクターに魂を入れる魔法『VRoid』活用方法」の模様をレポートしよう。

  • ワコムブース内の「デジタル原型ステージ」で行われた、ピクシブの「キャラクターに魂を入れる魔法『VRoid』活用方法」の様子

スライダーを動かすだけでオリジナルの3Dキャラに!

ステージに登壇したのは、VRoid総合プロデューサーを務めるピクシブの清水智雄氏と、VRoidの技術サポートなどを行うテクニカルアーティストのしげぽん氏。

清水氏は、2018年夏にキャラクターの3Dモデルを作成できるアプリケーション「VRoid Studio」をリリースしてから、約半年で累計39万ダウンロードを達成したと報告。続いて、しげぽん氏によるデモを交えながら、同アプリの機能や活用方法を紹介した。

VRoid Studioの特徴は、とにかくハードルが低いところ。専門的な知識がなくてもイラストを描く感覚で3Dキャラクターを作成することができる。しかも無料で使用でき、作成したキャラクターは商用利用も可能だ。

アプリを起動すると、まずベースとなる素体を選択する画面が表示される。そこでモデルタイプ(女性か男性)を選んだら、スライダーでパラメータをいじるだけで目や口などのパーツの大きさや形を変えたり、顔の輪郭を変えたりすることができる。体型や頭身も調節でき、すらっとしたモデル風にも二頭身や三頭身のデフォルメキャラ風にすることもできる。パラメーター値は直接入力することもでき、その場合はスライダーで動かせる上限や下限を超えた数値に設定することも可能だ。

  • ピクシブの清水智雄氏とテクニカルアーティストのしげぽん氏

  • VRoid Studioの画面。素体やモデルタイプを選んでスライダーでパラメーターを調整するだけで3Dキャラを作成できる

画期的な髪型作成機能を搭載

3Dモデリングでいちばん面倒な「髪」もペンで絵を描くような直感的な操作で作成することができる。壇上では、しげぽん氏によるデモンストレーションが行われていたが、ペンタブレットでストロークを描くたびに髪の束が生成されていき、あっという間に女の子らしい髪型に仕上がったのが印象的だった。

  • 髪の毛を描いているところ。ペンタブレットやマウスでストロークを描くと、ヘアガイドに沿って髪の毛の束が生成される

ちなみに、髪の毛はヘアガイドと呼ばれるワイヤーフレームに合わせて描かれていくが、ヘアガイドを変形させることで髪型を一気に変更することが可能。髪の束ひとつひとつを修正していく必要がないため、気軽に髪型の調整ができて便利そうだった。

このほか、髪の色や太さ、厚みなどもパラメーターで簡単に調節することが可能。さらに、描いた髪の束の形を後から簡単に整えられる機能や、左右対称の髪型を効率的に描く機能、一気に髪の毛を生成するプロシージャルヘア機能なども用意されているとのことだ。

  • ヘアガイドを変形することで、簡単に髪型を調整することができる

  • 左右対称の髪型を描く機能や、一気に髪の毛を生成するプロシージャルヘア機能なども搭載されており、効率的に髪の毛を描くことができる

テクスチャ編集も直感的に行える

通常、3Dモデリングでテクスチャを付ける際は、UV展開(キャラクターの表面を2次元の展開図で表すこと)を行い、それを編集していくことになる。VRoid Studioの場合は、UV展開図の編集はもちろんだが、3Dキャラの方に直接テクスチャをつけていくことも可能。そのため、3Dモデリング初心者でも直感的にテクスチャ編集を行うことができる。

  • VRoid Studioでは、3Dキャラに直接テクスチャをつけていくこともできる

同様に、衣装のテクスチャも編集が可能。清水氏によれば「VRoid Studioはデフォルトで用意されている衣装のバリエーションは少ないが、ユーザーが自由にデザインできるようにしている」とのこと。ちなみに、衣装は消しゴムで部分的に消すことも可能。例えば、長袖のワンピースの袖の部分を消してノースリーブにするといったようなことができる。

  • 衣装の一部を消したり、テクスチャをつけたりして、オリジナルの衣装をデザインすることができる

作成した3Dキャラは、アプリ上ですぐに動かしたり、ポーズを取らせたりして楽しむことも容易。またデータをVRM形式でエクスポートし、他のソフトで編集することも可能とのこと。講演では、VRM形式で書き出したファイルをいったんBlenderにインポートし、そこから書き出したファイルをZBrushで取り込んで活用するような使い方も紹介された。

なお、ピクシブでは自作のVRMデータを投稿・共有できるサービス「VRoid Hub」も提供中。同サービスはVRM形式のアバターで遊べるゲーム「Vワールド」などと連携することも可能とのことで、講演では実際にVRoid Studioで作成したキャラをゲーム内のバーチャルな空間で動かすデモも行われた。3Dキャラを作って終わりではなく、さまざまな活用方法が用意されているのは心強い。連携するアプリやサービスが広がれば、楽しみ方も増えていきそうなので、今後の動向にもぜひ注目したいところだ。

  • VRM形式で書き出したファイルをBlender経由でZBrushで取り込んで活用することもできる

  • VRMデータを投稿・共有できるサービス「VRoid Hub」

  • ゲーム「Vワールド」では、作成した3Dキャラを使って遊ぶことが可能だ