久保利明王将に渡辺明棋王が挑戦する第68期王将戦七番勝負第3局が2月6、7日の両日、栃木県大田原市「ホテル花月」で行われ、渡辺棋王が勝ってシリーズ成績を3勝0敗とし、2014年度の第64期で失冠して以来、通算3期目となる復位へ大きく近づきました。
逆に、久保王将は大変に苦しい星。「4連勝しなければ防衛できないのだから苦しいのは当たり前じゃないか」と思われるかも知れませんが、その「当たり前」以上に苦しい理由があるのです。
少しオカルトめいた話になりますが、将棋のタイトル戦七番勝負で開幕から3連敗した棋士が4連勝した例は、これまでに2例しかないことをご存じでしょうか。
見た目以上に激レア! 3連敗4連勝
名人が世襲制から将棋を指して決める実力制になり、第2期名人戦で七番勝負が採用されたのが1940年、以来幾度となく行われているにも関わらず、初めて「3連敗4連勝」が実現したのは2008年。68年もの間現れなかったのは棋界の不思議のひとつでした。
そして、重ねて不思議な事が起きました。これほど初出までに年月が掛かったにも関わらず、翌2009年に再び3連敗4連勝が起きたのです。しかし以降は1度もなく、出現はこれまでこの2回のみとなっています。
負けているほうが諦める、ということはないと思われますが、勝っているほうは気分良く指すことができ、負けているほうはその逆になってしまうということはあるかも知れません。計算式は省きますが出現確率も理論値を大きく下回っている状態です。
初めて3連敗4連勝を達成したのは、何を隠そう今期王将戦挑戦者の渡辺竜王(当時)。
2008年度、羽生善治名人(当時)を挑戦者に迎えた第20期竜王戦七番勝負は、どちらがシリーズを制しても棋界初「永世竜王」の称号を得る大勝負、特に羽生名人は「永世七冠」が懸かっていたということで、大変な注目を集めていました。称号獲得の条件は、連続5期または通算7期。渡辺竜王が連続4期、羽生名人が通算6期で、互いに「リーチ」を掛けている状態だったのです。
結果は渡辺竜王の●●●○○○○。初の3連敗4連勝達成、初の永世竜王誕生、初物づくしの防衛劇となりました。
2人しかいない「達成者」のひとり、渡辺棋王。今シリーズ、3勝0敗から逆の立場の経験は御免でしょう。第3局まで内容的にも終始押している印象で、データも復位を後押しするものになっていますが、果たしてどうなるでしょうか。
久保王将が踏みとどまるか、渡辺棋王のストレート復位か。注目の第4局は2月24、25日、那覇市「琉球新報本社ビル」で行われます。