39人の所属棋士が2席の昇級枠を争う第77期順位戦C級1組10回戦が2月5日、東西の将棋会館で行われ、8戦全勝の杉本昌隆七段、藤井聡太七段はそれぞれ1敗の船江恒平六段、近藤誠也五段に敗れ、最終戦を残して8勝1敗で4人が並ぶ大混戦となりました。

9勝1敗「頭ハネ」の恐怖

同成績で昇級枠を超える人数の棋士が並んだ場合は今期順位で上位の棋士が優遇されるため、仮に1敗の4者が最終戦で全員勝てば、順位6位の近藤五段、順位7位の杉本七段が昇級し、順位13位の船江六段、順位31位の藤井七段はC級1組にとどまります。このように、同星ながら順位下位のため昇級を逃すことを、将棋業界では俗に「頭ハネを食らう」と言います。

  • 好成績ながら昇級ラインの外に置かれている船江六段(左)と藤井七段

およそ10カ月にわたってそれぞれの棋士が10戦を戦う順位戦C級1組。永い戦いを終え9勝1敗で昇級が叶わない、頭ハネを食って何も得られない。厳しい限りです。不遇と言っても言い過ぎではないと思います。

今日はそんな不遇な棋士がこれまでどれぐらいいたのか、C級1組で9勝1敗の成績を挙げた棋士と昇級の関係について調べてみました。画像をご覧ください。平成に入ってから前期まで29期分の、C級1組からB級2組へ昇級した棋士、および9勝1敗で昇級を逃した棋士のリストです。

平成元年度以降、順位戦C級1組からの昇級者&9勝1敗で昇級を逃した棋士

9勝1敗の成績を挙げたケースは35件あり、そのうち26件が昇級、9件(アミかけ)が昇級を逃していました。昇級確率は[0.743]。10勝0敗での昇級は11件、8勝2敗が20件、7勝3敗が1件、昇級者29期×2人の58人が挙げた勝数の平均は約8.8勝でした。

順位1位の永瀬拓矢七段と順位2位の千田翔太六段が飛ばした前期第76期は初めて9勝1敗頭ハネが2人出た期となりました。今期の9勝1敗4人という展開も、マラソンで言えばかなりのハイペースと言えるでしょう。好成績ながら昇級ラインの外に置かれている船江六段、藤井七段は、最終戦でとにかく人事を尽くすよりありません。