江崎グリコは2月6日、夫婦が協力して子育ての課題に取り組む「Co育て(こそだて)PROJECT」をスタートすると発表しました。夫婦間のコミュニケーションや育児協同を促すことで、家族の良好な関係づくりの促進をはかっていきたい考えです。
グリコ創業以来の想いとは?
プレゼンの冒頭で「子どものココロとカラダの健やかな成長は、Glicoグループの創業当時からの使命です」と挨拶したのは、江崎グリコ代表取締役社長の江崎勝久氏。祖父にあたるグリコ創業者の江崎利一氏が1934年に財団法人「母子健協会」を設立したことを例にあげるなど、同社がこれまで行ってきた社会貢献の歩みを紹介します。
江崎氏は「当社では創業から今日まで受け継いできた精神を活かし、社会と消費者の皆様の生活を豊かにする取り組みとして、新たに『Co育てPROJECT』をスタートさせます」と宣言。その背景として、子どもたちを取り巻く社会環境の変化により、複雑で多様な問題が発生していることを指摘します。
プロジェクトでは、少子化、働く女性の増加によるワークスタイルの変容、ワンオペレーション育児、マタニティ・ハラスメント、産後うつ、夫婦のすれ違い、子どもの自己肯定感の低下といった課題の解決を目指していきたい考え。江崎氏は「次の時代に向け、子どものココロとカラダの健やかな成長を実現すべく、革新的なプロジェクトにしていきたい」と抱負を語ります。
プロジェクトを構成するのは、商品の充実・サービスの提供・産学連携の3つの柱。まず商品ですが、乳児用液体ミルクをはじめとしたベビー・育児商品の商品群の強化をはかっていきます。
次にサービスとして、子どもを見守りながら家族間の交流を促すスマホ向けアプリ「こぺ」の無償提供を2月6日より開始しました。
また産学連携としては、東北大と協定を締結し、プロジェクトの推進をはかっていく方針です。このほかグリコでは「妊娠・育児有給休暇」の枠を超えた社内人材制度を改定していくとしています。
江崎氏は「食という字は、人を良くすると書きます。栄養摂取によるカラダの健康だけでなく、良好な人間関係など、ココロの健康も良くしていきたい。グループでは創業以来の使命とともに、プロジェクトを通じて消費者のより豊かな生活の実現に貢献し続けていきます」と語ります。
妊娠期から約1000日間が大事
Co育てPROJECTリーダーとなった江崎グリコ 経営企画部の宮崎友恵氏は、ユニセフの研究結果をもとに「妊娠期から生後2歳までの約1000日間によって、人はカラダだけでなく、ココロの健康の基礎が出来上がるそうです」と紹介します。
宮崎氏によれば、子育て先進国 フィンランドの調査データと比較すると、日本の夫婦は「お互い協力して子育てできていると感じておらず、不安やストレスを抱えている」と分析できるそう。そこで今回のプロジェクトでは、コミュニケーション(和気あいあいと)、コオペレーション(上手に協力しながら)、コペアレンティング(一緒に子どもを育てる)子育てのスタイルを提唱していきます。
コペアレンティングのメリット
ゲストで招かれた東北大学大学院 医学系研究科の吉沢豊予子氏は、コペアレンティングが促進されることにより、夫婦間には「産後うつ病のリスクが少ない」「夫婦関係が良好になる」「愛情にあふれた育児ができる」というメリットが、また子どもには「友だちと仲良くする能力が備わる」「学校で一所懸命に勉強する」「自己肯定感が強くなる」「非行に走らない」「不満感情への対処能力が備わる」といった効果が期待できると解説しました。
囲み取材で子育てについて聞かれた江崎氏は、「人生の大事業だと思います。三つ子の魂百までと言いますし、生まれてから幼児期までの親子のふれあいは、一生に影響しますので」と回答。自身の子育てや、孫とふれあったエピソードについては「子育ての結果は、一生を終えないと分からないですからね。歳をとってから、しまった、このやり方は間違っていた、というわけにいかないんですね。うちの子どもも成人しまして、いまは孫も幼稚園、小学生に通っております」と話します。
「平均的な子育てができたのかな、孫もおじいちゃんと呼んでくれますしね」と控えめながらも笑顔で話すその表情は、代表取締役社長というよりは、ひとりの父親、祖父としての穏やかなものに感じられました。