ビジネスに限らず、相手に「どうしますか?」と尋ねるようなシーンはよくあることですが、目上の人に「どうしますか?」はベストな表現ではないとご存知でしょうか。そこで本稿では、目上の人に対する「どうしますか?」の正しい表現についてお話しします。
■「どうしますか?」の敬語表現
まずは、敬語について確認しておきましょう。敬語には通常、「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3つがあります。
○丁寧語
聞き手に対して丁寧に述べる時に使う表現。おもに「です・ます」「ございます」を語尾に付ける。相手や内容を問わず使うことができる。
○謙譲語
自分の言動をへりくだって言うことで、相手を立てる表現。目上の人やより丁寧に接したい相手に対して用いるもの。
○尊敬語
相手側の言動に対して敬意を払う表現。相手を敬っている、尊重しているという気持ちをあらわすもの。
この敬語の定義をもとに、「どうしますか?」を「どう」と「する」に分けて考えてみましょう。「する」の丁寧語は「します」、謙譲語は「いたす」、尊敬語は「なさる、される」です。つまり、「どうする」の丁寧表現が「どうしますか」、謙譲表現は「どういたしますか」、尊敬表現は「どうなさいますか」になります。
また、「どう」についてはこのままでも構わないのですが、とくに敬意を示したい相手やお客さまに対しては、より改まった印象を伴う「いかが」に変換し、「いかがいたしましょうか」「いかがなさいますか」を用いた方が良いでしょう。
■目上の人に「どうしますか」はNG?
敬語の定義からすれば、「どうしますか」は相手を選ばずに使える丁寧表現であるため、目上の人に使ってもいいのでは? と考える人もいると思いますが、確かに丁寧な表現ではあるものの、相手を立てるわけでもなく、相手に対する敬意も含まれていません。ゆえに、ビジネスでは目上の人やお客さまに対して使うべきではないとされています。
とはいえ、それも社風や相手との関係性にもよるでしょう。親しい上司と2人きりであれば「課長、お昼どうしますか?」で十分な場合もあります。そこは、社会人としてケースバイケースな対応が求められるところではないでしょうか。
■「いかがいたしましょうか」「いかがなさいますか」の違いと例文
「いかがいたしましょうか」の「いたす」は謙譲語なので、「する」のは自分です。これに対し、「いかがなさいますか」の「なさる」は尊敬語なので、「する」のは相手側になります。
いかがいたしましょうか
・部長、先方への手土産はいかがいたしましょうか。
・お客さま、お荷物はいかがいたしましょうか。
・支店長、お客さまから責任者を呼ぶようにと。いかがいたしましょうか。
いかがなさいますか
・お支払いは現金とカードがございますが、いかがなさいますか。
・部長、A社から創立記念パーティーへの招待状が届いておりますが、いかがなさいますか。
・その日ですと、シングルもダブルもお取りできます。いかがなさいますか。
相手の要望に添えない場合
ビジネスシーンには、相手の要望に添えないことが多々あります。例えば、部屋が満室だったり、洋服や靴のサイズがなかったり……。
そんな時、「あいにくシングルもダブルも満室でございます。申し訳ございません」で終わらせてしまうのではなく、「あいにくどちらも満室でございます。ツインでよろしければご用意できますが、いかがなさいますか」、あるいは「ひと駅先の○○店でよろしければシングルがお取りできますが、いかがなさいますか」などと代替案を提示すると良いでしょう。
たとえその提案がお客さまに受け入れられなかったとしても、お客さまに与える印象に大きな違いが生じるはずです。まずは代替案を模索する、なければ誠意をもってお詫びするなど、常に丁寧な対応を心がけたいものですね。
社会人なら敬語が使えて当然とされている世の中、正しい敬語が使えるからといって評価が上がるわけではないでしょう。しかしながら、誤った敬語は相手に不快な思いを与えるだけでなく、自身の評価を下げることになりかねません。自信をもって相手と接することができるよう、正しい敬語を身に付けたいものですね。