ソフトバンクは2月5日、2019年3月期 第3四半期 決算説明会を開催しました。ソフトバンクとして上場後、初の決算説明会に登壇した代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は、料金プランの値下げやPayPay関連、通信障害やファーウェイ問題について言及しています。
通信料、もう4割下がってる!?
昨年(2018年)から、携帯電話の通信料金値下げをめぐって議論が続いています。菅義偉官房長官の「あと4割は下げられる余地がある」発言は、まだ記憶に新しいところ。通信料の4割値下げについてソフトバンクの対応を聞かれると、宮内社長は「ワイモバイルで3年前から実現しています」と反論しました。
「ソフトバンクでは3つのブランドを展開しています。ソフトバンクブランドは、データの大容量プランに特化していく。もし他社が料金プランを値下げしてきたら、そのときはワイモバイルのほうで対抗する。大容量ならソフトバンク、低価格ならワイモバイル、とブランドを分けることでバランスをとっています」(宮内社長)。
これについては、記者から批判的な質問が相次ぎました。「ドコモが値下げ実施を発表し、KDDIもメインブランドのauで対抗する考えを示した。ソフトバンクは、(サブブランドの)ワイモバイルだけ値下げするということか」という質問には、「そもそも(メインブランドやサブブランドという)考え方がおかしい。ソフトバンクとワイモバイルは一体化しているのです」との立場を表明しました。
政府の値下げ要請に応えたことになっているのか、という問いには「繰り返しになりますが、ソフトバンクは3つのブランドでやっている。通信料金を安く抑えたいなら、ワイモバイルにすればいいのではないでしょうか。動画の見放題サービスやVRなど、最新技術に触れたい人はiPhoneなどの端末を購入する。なにからなにまで安くしなければいけない、というものでもないと思うんです」との考えを示しました。
分離プランにより、店舗のサービスは有料になるかも
先日、総務省が開いた有識者会議では、「モバイル端末の代金」と「毎月の通信料金」を分離する「分離プラン」の義務付けが緊急提言されました。分離プランでは、スマートフォンの価格を値引くことができません。これについてコメントを求められると、宮内社長は「僕らの努力としては、安くて最高にいい端末を開発する、調達することになってくる。でも乗用車を買うとき、安い車がいい人もいれば、高くても高級車がいい人もいます。消費者の心理はそういうもの。高くてもアップル製品を選ぶ人もいるんです」と説明。スマホのフラッグシップ機は、価格の高騰化もやむを得ないというようにも聞こえます。
そのうえで、宮内社長の心配は別にある様子。「ソフトバンクショップに来店する消費者の大半は、機種変更時のデータ移行、LINEの再設定、そういったものに困っている。(端末と通信サービスを分離する)完全分離プランに移行したら、そうしたサポートを有料化することになるかもしれない」と話し、表情を曇らせます。ちなみにワイモバイルでも、2019年度上半期に分離プランを導入予定です。
4年縛りのつもりない
ソフトバンクでは、高額なスマホを安い割賦料金で使える「半額サポート」プログラム(※)を提供しています。これについて「消費者の契約を4年間も縛るもので、好ましくない」と批判する声もあります。宮内社長は、「縛ったつもりはなく、4年間の割賦にしてスマホを買いやすくしたつもりでした。消費者を縛っている、と言われてみれば、そうなのかもしれませんが。分離プランを導入しても、高いスマホを買いやすくするため、(半額サポートは)継続していくべきだと思っています。でないと、価格の高いスマホが売れなくなる懸念もあります」と説明しました。
※端末を48カ月(4年間)の分割払いで購入し、25カ月目以降にソフトバンク指定の端末へ機種変更すると、残りの分割支払い金額が0円となるプログラム。
PayPayはもちろん赤字
PayPayは黒字なのか、株式上場も考えているのか、という質問もありました。宮内社長は、「PayPayは当然ながら赤字。(株式を)公開するかはいまのところ検討していません。ただ、ペイメントサービスはスマホの価値を上げる。グループのヤフー、ソフトバンクの両者に大きな貢献をするものと考えています。まだ赤字ですが、数年後には黒転する計画です。いまはQR決済だけですが、ここから色んなサービスが生まれるでしょう。ソフトバンクグループにとって、非常に大きな貢献をする事業だと考えています」と語りました。
「悪いのはエリクソン」
昨年(2018年)12月に発生した通信障害について、エリクソンとの話し合いは進んでいるのか、賠償はどうするのか、という問いに、宮内社長は「内容については完全にノーコメントですが、悪いのはエリクソン。それは事実です。ソフトバンクの上場会見でいきなりそんなことを言うと怒られそうで黙っていましたが、あり得ないようなことが起こりました」と苦笑い。エリクソンとは色々な話し合いをしている最中で、内容はコメントできないとのことでした。
ファーウェイ、どうなる?
ファーウェイの通信機器を排除する動きがあることについて、宮内社長は「4Gのインフラについて、リプレースは考えていません。これから設備投資が進んでいく5Gのインフラについては、ネットワークの安定性、技術の優位性といった観点から、多方面のベンダーを検討しています。安全、信頼、IT調達方針などを勘案して、総合的に判断していきたい」と説明しました。
この件についてソフトバンク代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏は、「総務省、内閣府、私たちでお互いに議論しています。現状の4Gインフラを巻き取っていくことはありません。一部の設備は5Gでも使う経路であり、もともとアップグレードするつもりだったので、入れ替えることで10数億円のコストはかかる見込みです」と補足しました。
連結業績は「計画通り」
ソフトバンクの2018年度 第3四半期累計連結業績は、売上高が前年同期比5%増となる2兆7,767億円、営業利益が同19%増の6,349億円でした。宮内社長は「計画通りの進捗。これからも、企業の成長と株主還元の両立を目指していきます」と満足げな表情を見せました。