NTTドコモは1日、2019年3月期 第3四半期 決算発表会を開催しました。これによれば第3四半期の営業利益は9,020億円で、年間業績予想に対し「順調な進捗」とアピールします。登壇した代表取締役社長の吉澤和弘氏は、分離プラン、スマホの購入補助、NTTぷららの子会社化について説明しました。

  • NTTドコモは1日、2019年3月期 第3四半期 決算発表会を開催。同日、NTTぷららを子会社化するとの報道発表がありました

  • 第3四半期決算の概要

分離プランでiPhoneが売れなくなる?

決算発表会では、質疑応答で寄せられた記者団の質問に、吉澤社長が回答していきました。

昨夏(2018年夏)、菅義偉官房長官が「携帯電話の利用料金は、あと4割は下げられる余地がある」と発言するなど、大手キャリアの料金プランをめぐり、さまざまな議論が続いています。総務省の有識者会議では、モバイル端末の代金と毎月の利用料金を分離する「分離プラン」の義務付けが緊急提言されたばかり。

分離プランをどうするかについて聞かれると、吉澤社長は「承知しています。分離プランは、私どもも考えているところ。『シンプル、分かりやすい、お得』な新料金プランを2019年度の第1四半期に発表する考えです」と説明しました。

  • 登壇するNTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏

しかし分離プランでは、スマートフォンの端末価格を割り引くことができません。その結果として、スマホの買い控えが起こる懸念もあります。

そこで端末の購入補助について改めてコメントを求められると「これは私個人の考えですが、端末の購入補助が全くない、ということはあり得ないのではないか。フィーチャーフォンからスマートフォンへのマイグレーション(移行)を進めていかなくてはいけない。そのとき、何らかの補助は必要です」と吉澤社長。例えば発売から1年、2年が経過したスマホなら何らかの補助を付けられないか、そのあたりは議論の余地がありそうだ、といった見解を示しました。

そして、「難しいところですが”過度な補助”に陥らないようにすることが大事。私どもも、そういうサービスを行うつもりはない」と続けました。ひと昔前に問題視された、大手キャリアによるキャッシュバック合戦といった事態は望んでいない、という立場をあらためて説明しました。

とはいえ、例えばiPhoneでは高価格化の傾向もあり、今後端末の売上は厳しくなっていくのではないでしょうか。

この指摘には「iPhoneを愛しておられるお客様がいる。デザイン、機能、革新的なものを求める人たちはある程度、高くなってもお使いいただけると考えています」(吉澤社長)。

その上で「魅力的な端末の売り方について、何か工夫ができないか、アイデアは出し続けていきます。iPhoneに限らずですが、フラッグシップ機はお値段もそれなりにする。これを買いやすくすべく、いろいろ考えていきたい」と説明しました。

NOTTVは失敗だった!

ドコモは1日、映像配信サービス「ひかりTV」やISP事業「NTTぷらら」などを展開する、NTTぷららを子会社化すると発表しました。

この狙いについて、またdTV、DAZN(ダゾーン)といった既存サービスとの棲み分けについて聞かれると「コンテンツの制作、あるいは調達の部分がまだできていないと感じていました。自ら映像コンテンツを制作する、調達するという面においては、ぷららが長けている。これをドコモに取り入れることで、配信サービスにつなげていける」と吉澤社長。

映像コンテンツを軸にした広告ビジネスも考えている、新たなビジネスに結びつけることで周辺事業の拡大も図れる、と説明します。

  • NTTぷららの子会社化について

ところでドコモの映像系サービスと言えば、スマホ向け放送サービス「NOTTV」(ノッティーヴィー)を思い出す方もいるでしょう。収益が伸びず2016年に終了したサービスです。

同じ失敗をするのでは、といった心配には「おっしゃる通りで、NOTTVでは随分な損失も出しました。(テレビのように)放送時間が固定された映像配信サービスでした。お客様の需要は、映像コンテンツを見たいときに見る、オンデマンドの方向に移っている。ビジネスモデルが違っており、反省すべきところ。今回は、NOTTVと同じようなことにはならないと考えています」と回答。

NTTぷららを子会社化することで映像分野のスタイル革新を実現、2025年度には3,000億円の事業規模を目指すと発表していることについては「ぷららとドコモ本体の映像ビジネスを含め、トータルで3,000億円の事業規模を達成したい。いま、この領域では1,000億円弱くらいの規模。3倍ありますが、しっかり対応していきたい」と説明していました。

ファーウェイのスマホはどうなる?

ファーウェイの通信機器について、調達に影響は出ているのか、今後の取り扱いはどうするのかといった質問には「政府の動きを注視しています。何か動きがあれば対応するということ。いまの時点では、ハッキリとした影響は出ていません。現段階では、これまでのルールに基づき、スマートフォン端末も販売を続けています」と答えるにとどまりました。

お客様還元は4,000億円規模に

政府からスマホ利用料金の値下げ要請があり、その規模は年間4,000億円にも上ると試算されています。

この受け止めについては「必ずしも毎年、4,000億円の減益があるというわけではありません。新料金プランに移行するお客様の数とスピードにもよる。したがって来年か、2020年度になるかは分かりません。最大4,000億円規模のお客様還元になるということですが、そのまま収益減になるということではなく、もちろんリカバリーしていきます。お客様基盤が拡大する、ポートアウト(他キャリアへの流出)が減る、といったメリットもある。利益の幅を増やす非通信のサービスを拡充するなど、収益の機会を増やしていくことを考えています」と説明。ぷららの子会社化も、その一環との認識。コスト削減、効率化にも引き続いて取り組んでいく、と話しました。

ドコモショップの役目は?

分離プラン導入で端末の購入補助がなくなるなら家電量販店でスマホを買った方が良い、するとドコモショップの役割がなくなってしまう、といった見方もあります。

これには「フィーチャーフォンからの移行が進んでいない現状があります。スマホの使い方、どうやったら便利に使えるか、そうしたユーザーのリテラシーを上げることに、ドコモショップが貢献しています。スマートフォン教室は年間100万人の利用者がいる。また端末を売るだけでなく、ドコモの提供する便利なサービスの提案も行っている。お客様との直接の接点であるショップとの関係を、今後さらに充実させていきたい」と説明しました。

au PAYに対抗策は?

KDDIと楽天が、通信インフラと決済インフラで協力することが報じられています。このことについては「au PAYですね。ドコモでもdカードなど、決済サービスを提供している。すでにある基盤、エコシステムをどんどん広げていくということ。これまで以上に拡大していきます。競争が激しくなることは理解していますが、アグレッシブに対応領域を広げていけたら」と回答しました。

  • ドコモの金融・決済サービス、現在の状況