外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年1月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 1月の推移】
1月のドル/円相場は104.438~109.997円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.7%下落(ドル安・円高)した。2019年は「アップル・ショック」に端を発した「フラッシュ・クラッシュ」で104円台に差し込む波乱のスタートとなった。
この局面では、年内の複数回の利下げを織り込む水準まで米金利が低下するなど、市場心理が極端に悲観に傾いた。その後の悲観心理修正局面では110円前後まで値を戻したが、ついにこの水準の上値の重さは払拭できなかった。米連邦公開市場委員会(FOMC)やパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、利上げの休止およびバランスシート縮小の停止を示唆した事でドルが弱含んだためドルが下落した。ただ、そうした米金融当局のハト派傾斜を好感して米国株が値上がり(月間約8.4%上昇)する中では円高も進みにくかったようで108円台後半で1月の取引を終えた。
【ドル/円 2月の見通し】
2月のドル/円は、過去5年間のうち4回が月足陰線となっており、ドル安・円高に振れやすい傾向がある。1月3日の「フラッシュ・クラッシュ」で付けた安値104.438円は、さすがに「異常値」と捉えて良さそうだが、今年も上値の重い展開が続きそうだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)が1月末の会合で打ち出したハト派スタンスが、ドルの上値を抑える公算が大きい。FOMCのハト派化を好感して世界的に株価が上昇しているため、足元のドル/円は(円安に支えられて)下げ渋っているが、もしこの先、株高基調がストップするようだと再び107円台を割り込む可能性もあろう。株価への影響という観点からは、米中通商協議が重要となりそうだ。
1月末の閣僚級協議は、貿易面では進展があったようだが、知的財産問題などについては難航しているとされる。2月中(3月1日まで)に合意できなければ、米国は2千億ドル分の中国製品に対する制裁関税の税率を10%から25%に引き上げる構えだ。なお、中国側は2月末の米中首脳会談を提案したとされる。首脳会談が正式に決まれば、通商協議の合意期待が高まる事も考えられるため注目しておきたい。大きい。
【2月の日米注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya