1月29日、第4期叡王戦本戦準決勝の渡辺明棋王―菅井竜也七段戦が行われ、菅井七段が勝って永瀬拓矢七段が待つ挑戦者決定三番勝負に進出しました。叡王戦の挑戦者決定戦展望は後日書かせていただくとして、本日は敗者・渡辺棋王についてのお話です。渡辺棋王はこの対局前まで15連勝中。この記録は今年度、全棋士中トップとなっています。
佐藤名人の14連勝を1勝上回るも、若手3人が猛追!
しかも、ネット上で話題になるほどトップ棋士ばかり、そうそうたるメンバーを相手にしての15連勝でしたが、菅井七段に敗れ、ついに途切れてしまいました。それまで14連勝で1位だった佐藤名人をわずか1勝分上回り、記録更新となりました。佐藤名人の側から見れば、年度末の土壇場でかわされてしまった、という印象です。
では渡辺棋王が「連勝賞」獲得か? といいますと、もう少し上乗せできていれば「確定」を出せる可能性もありましたが、「15」ではそう簡単ではないようです。
なぜなら、藤井聡太七段、佐々木大地四段、大橋貴洸四段、3人の若手棋士が10連勝中で渡辺棋王の背中を追いかけているからです。
藤井七段は説明するまでもなく高勝率、そして何と言っても29連勝の歴代1位記録保持者ですし、藤井七段が飛び抜けてしまってはいますが、佐々木四段、大橋四段も高勝率を誇る期待の若手棋士です。
佐々木四段は6連勝で迎えた1月18日、第60期王位戦予選決勝で広瀬章人竜王を破り2期連続の挑戦者決定リーグ入りを決め、トップ棋士と十分に渡り合えることを証明していますし、大橋四段は藤井七段とプロ同期で、あまりにも勝ち過ぎる藤井七段の陰に隠れてしまいがちですが、通算勝率[0.7363]は全棋士中、藤井七段に次ぐ2位の好成績なのです(※1/31現在、対局数の極端に少ない新人を除く)。ちなみに、藤井七段と大橋四段の公式戦直接対決は2-2の五分となっています。
今年度はあと2カ月で終了します。ここへ至っては自身で何ができるわけでもありませんが、渡辺棋王は連勝部門で逃げ切ることができるでしょうか。それとも藤井七段、佐々木四段、大橋四段のうち誰かが抜き去るでしょうか。今回は「連勝賞」に触れましたが、各棋戦の進行とともに「勝数」「対局数」「勝率」を合わせた記録4部門を誰が制するかに注目するのもこの時期の楽しみです。